中野区基本構想(素案)意見交換会の感想。および再開発との関係について(2020年11月)

概要

改定中の中野区基本構想(素案)意見交換会の最終回に参加した感想。
中野区の今後の再開発方針は、基本構想策定のあとの「基本計画」などで示される。2020/11/9

 

基本構想とは

基本構想は中野区の計画の最上位に位置し、再開発を含むもろもろ具体的な計画は、基本構想をもとに作られる。つまり田中前区長は基本構想をもとに再開発を進め、区内の貴重な緑を潰し、小中学校を統合し、多くの区立保育園、幼稚園、児童館を廃止したわけだ。中野区は現在、基本構想の改定を進めている。現行およびこれまでの中野区基本構想はリンク先参照。↓

 
とはいえ基本構想の字面はふわっとして如何ようにも応用できそうで、そういうものに何を言ったらいいか分からないため、基本構想改定の審議会の傍聴や、意見交換会などに私はこれまで行ってなかった。1度も行かないのもどうかと思い、意見交換会最終回に参加した。

 

意見交換会

区側の顔ぶれ

2020年11月1日(日)14時、中野区役所7階の会議室。中野区の幹部が右(舞台でいうと上手)から次のように並んでいた。

(1) 石井大輔・企画部企画課長 - 3月まで中野サンプラザ再開発担当だった。再開発をほぼ田中前区長の計画通りで決着させた功労者。意見交換会では一転「司会」をしていたのが味わい深かった
(2) 永見英光・企画部基本構想担当課長 - 基本構想改定の担当者。酒井区長の中野区職員時代からの盟友
(3) 酒井直人・中野区長 - 意見交換会は区長が参加する「タウンミーティング」として開かれた
(4) 高橋昭彦・企画部長 - ほとんど発言しなかった。担当部の責任者として同席していたと思われる

区民側の参加者

新型コロナウイルス感染防止のため、一連の意見交換会は要予約、定員制とされた。実際は各回予約は定員に満たず、当日飛び入り参加できた。

最終回の11月1日は、定員50人に対し参加者は15人くらいだった。10人強が発言し、ほぼ酒井区長が答えた。時間は1時間半の予定を多分20分くらい超過した。

 

意見交換会感想

中野四丁目、タワマン

中野四丁目の中野サンプラザ北側の住宅地にタワーマンションを建てようとするもくろみがある。この日の意見交換会では、中野四丁目の住民など2人がこの地域で再開発が進められていることに抗議した。酒井区長は「一方的に合意なく進めるまちづくりはしてはいけないと思っている」と建前を述べるにとどまった。

中野四丁目を含むJR中野駅周辺では、多数の再開発タワマンが計画されている。意見交換会ではそれによる人口増に対応できるか疑問を口にする人も複数いた。中野駅周辺の多数のタワマン計画については下記記事参照。

中野サンプラザ

中野サンプラザの跡地にアリーナを作っても区民にはメリットがない、との発言が参加者からあった。酒井区長は、メリットもあるとした上で、跡地施設は「今回は全部民間になるので区役所がリスクを負うことはほぼない。税金が投入されることはないということで安心していただけるかなと思っている」と話した。そういう問題でしょうか。

サンプラザの再開発については下記参照。

平和の森小と桃花小 

中野駅北側の平和の森小学校と南側の桃花小学校は中野区の学校統合の早い時期にそれぞれ2校と3校が統合されてできた。現在児童数が想定より増えプレパブ仮校舎でしのいでいる。中野駅周辺の再開発で今後さらに児童が増えると予想されるがどうするつもりかと質問があった。

酒井区長は「ファミリー世帯どれくらい入るか分からない。DINX向けが多分多いと思う。ファミリー向けがどのくらいで子どもがどれくらいか予測はこれからしていく。江古田の森の大きいマンション建ったが予想以上にファミリーが入らなかった。中野駅でどれだけ人口が増えるかシミュレーションして、学校については教育委員会と対応策はしっかり備えていきたい」と答えた。 

しかし。

ICT学習支援員

中野区教育委員会定例会をいつも傍聴している人が、新型コロナ対応で導入されたICT学習支援員が、12人しか採用されず小中6人ずつしか配置されなかったことについて、他の学校にも配置するべきと指摘した。酒井区長は「各学校必要なんでしたっけ。得意な先生もいますし、それで足らなければ徐々に増やしていく」と答えた。

だが2020/10/2教育委員会定例会で、中野区の担当職員は、ICT学習支援員(期間6カ月)を全区立小中学校に配置する予定だったが、8月までに12人しか採用できなかった、小中各6校に配置した、補助金の関係でそれ以降は採用しない、とはっきり言っている。

意見交換会の区側参加者に子ども教育部/教育委員会事務局の幹部はいなかった。酒井区長がよく知らないことをその場しのぎに答えたのだとしたら不誠実である。

平和の森小と桃花小の対応策を備えるとした発言も、そういうわけでどの程度根拠があるかは分からない。

(11/14追記)

2020/11/13中野区教育委員会定例会で区担当者が、来年度はICT学習支援員がなるべく多くの学校に巡回することを考えている、と発言した。2021年度予算でICT学習支援員予算のメドが立った趣旨の発言と思われる。

(11/14追記ここまで)

図書館HP

意見交換会ではまた、昨年(2019年)12月にリニューアルした中野区立図書館のホームページが使いにくいと苦情があった。酒井区長は「賛否両論あるけど、なんでこんなになっちゃったの、という人の方が多いかな。今回は残念……と言い切っちゃ悪いですね。今後、区のホームページ更新もあるのでデザイン志向を取り入れた進め方をしたい」と答えた。

中野区立図書館の新システムの構築は、指定管理者のヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体がNECネクサソリューションズ株式会社を選定した。それによると見積額6億7678万6000円。大金である。酒井区長、選定したのが指定管理者だからといって他人事のような感想を言ってる場合ではない。

指定管理者がシステム構築業者選定のお知らせをしたページのインターネットアーカイブは下記。↓

https://web.archive.org/web/20191112003220/https://www3.city.tokyo-nakano.lg.jp/tosho/text/oshirase_201901_replace.html 

新型コロナ

新型コロナウイルス感染症に関連して、PCR検査を増やしてほしいという要望と、広報が不十分との指摘が、意見交換会の複数の参加者からあった。酒井区長は現状に理解を求める趣旨の説明をした。新型コロナの広報は「広報アドバイザーの助言」に従ったから問題ないとかいう類いの無責任な発言がなくてよかった。広報アドバイザーの助言については下記参照。

 

基本構想「素案」

基本構想がふわっとしていて何といっていいか分からないのは私だけでなかったようで、意見交換会の参加者はほぼ中野区の具体的な現状の問題について発言した。

その、コメントしづらい基本構想の素案は下記。

検討の経過

この素案は、正確に言うと「基本構想改定検討素案」という名前だそうだ。いちど作った「検討素案」を新型コロナ以降の状況を反映して改定したという。検討の経過は下記の区ホームページ参照。

以前の「検討素案」は意見交換会が2月に1度開かれたあと、残りは新型コロナのため中止になった。この時の意見交換会と、同時期に実施された意見聴取や意見募集について10月の区議会総務委員会に報告された資料は下記。↓

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20101295158.pdf

資料によると2月の意見交換会の参加者は15人だったそうだ。この意見交換会について9月の区議会総務委員会で公明党の小林ぜんいち議員が謎発言をしている。

前回、申し訳ないけど、特定な団体の方々がこぞって見えていたことが確かにありました。私は目の前にしていたので。そういったことを考えて、この事前申込制として定員を設けて、定員を設けるのはいいんですけども、しっかりとした取組をしていただきたいと思います。

小林ぜんいち区議(2020/9/1中野区議会総務委員会)

意見交換会に15人しかいなかったのに、「特定な団体の方々がこぞって」参加していたという。いったい何を目にしたのか知らないが、大丈夫ですか。

 

コロナ後の状況を反映した「改定検討素案」の方は、10/18-11/1に8回の意見交換会が開かれ、11/2までメールなどでの意見を受け付けた。

このあとの予定

9カ月の中断を挟んだ「素案」意見交換会が終了したので、このあと中野区は基本構想の「案」(=最終案)* を12月に公表し、同月パブリックコメント手続き(=最終案に対する意見募集)、2021年3月に最終的な改定基本構想を策定する段取りだそうだ。

*12月に公表された「案」。

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20127105816.pdf

 

再開発に関連した計画の策定予定

中野区基本計画

2020年12月-骨子の報告
2021年1月-素案の報告
2、3月-素案に関する意見交換会等の実施
6月-案の報告
7月-案に関するパブリック・コメント手続の実施
8月-策定

(2020/10/5中野区議会総務委員会資料)

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20101295158.pdf

区有施設整備計画

2020年12月-区有施設配置の考え方公表
2021年1月-区有施設整備計画(素案)公表
2月-意見交換会等の実施
6月-区有施設整備計画(案)公表
7月-パブリック・コメント手続の実施
8月-区有施設整備計画の策定

(2020/10/5中野区議会総務委員会資料)

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20101295112.pdf

中野区立小中学校施設整備計画

2021年1月-中野区立小中学校施設整備計画(改定素案)
2月-意見交換会の実施
6月-中野区立小中学校施設整備計画(改定案)
7月-パブリック・コメント手続の実施
8月-中野区立小中学校施設整備計画(改定)

(2020/10/5中野区議会子ども文教委員会資料)

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/201012102223.pdf

公園再整備計画 

2020年度策定予定だった↓が、遅れていると思われる。

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20318101253.pdf

  

追記: 12月、区有施設配置の考え方など公表

12月10日に終わった中野区議会第4回定例会で区有施設配置の考え方などの報告がされた。


〈中野区基本構想検討案について〉

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20127105816.pdf

〈中野区基本計画(骨子)について〉

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20127105857.pdf

〈区有施設配置の考え方について〉

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20127105757.pdf

〈地域子ども施設整備の基本的な考え方について〉

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20124113627.pdf

追記: 2021年3月、区議会紛糾の末、基本構想可決

中野区議会2021年第1回定例会(2/15-3/23)は、与党(立憲共産)、野党(自民公明都ファ)、無所属の微妙なバランスと各勢力の駆け引きを背景に近年になく紛糾した。 予算可決は予定より1日遅れ、区政方針の最上位のガイドラインである中野区基本構想は、最終日の午後9時にようやく1票差で可決された。詳細下記まとめ参照。

この定例会で基本計画素案や区有施設整備計画素案なども示された。

 

つづきの記事

 

(中野非公式通信)

 

 

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中野区役所(左)と中野サンプラザ。2020/9/30撮影