中野区立幼稚園の民営化検討か。教育長がまた「意思決定の過程」理由に審議非公開(2020年12月)(追記: 2021年2月、区が民営化議論認める)

概要

・2020年12月、中野区教育委員会が区立幼稚園の「今後のあり方」を協議した。教委は区立幼稚園の「今後の運営形態」を検討することになっているので、つまり民営化(=区立幼稚園廃止)の可能性を検討し始めたのではないだろうか。

・入野教育長は区立幼稚園の今後のあり方についての協議を「意思決定の過程」にあることを理由に非公開にした。入野教育長はその馬鹿げた理由を初めて使って8月に旧中野刑務所正門に関する報告の審議を非公開にし、区議会一般質問で批判されている。2020/12/19記

・追記。2021年2月、中野区は教委が区立幼稚園民営化と認定こども園化の可能性を検討していることを認めた。

・取りまとめられた教委の意見はつづきの記事で。

区立幼稚園

現在残っているのは2園

東京都中野区は4園あった区立幼稚園のうち、田中大輔前区長の時代の2010年に「やよい幼稚園」と「みずのとう幼稚園」の2つを廃止し、その2つの幼稚園の施設を使って私立の「認定こども園」を開設した。(注*)

にんていこどもえん【認定こども園
保育所と幼稚園の機能を統合し、就学前の子どもに幼児教育・保育を提供する施設。地域における子育て支援を行うため、都道府県知事の認定を受けて運営される。2006年(平成18)10月より導入された。こども園。→幼保一体施設
大辞林 第三版

2020年現在残っている中野区立幼稚園は「ひがしなかの幼稚園」と「かみさぎ幼稚園」の2つ。

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左: ひがしなかの幼稚園。右: かみさぎ幼稚園(Google ストリートビューより)

 *2010年に区立幼稚園2つを廃止して私立の認定こども園を設置したことを、中野区は民営化とは呼んでいないようだが、大阪市など他自治体では同様の民設移管を「幼稚園の民営化」としている。

"運営形態を検討"

中野区は12月上旬、今後10年間の区施設配置計画の元になる「区有施設配置の考え方」を区議会に報告した。

区有施設配置の考え方 - https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20127105757.pdf

それによると、区立幼稚園の数は10年後も「2」のままとされている。ただし「今後の運営形態については、教育委員会で検討」との記載がある。

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2020/12/2中野区議会総務委員会資料「区有施設配置の考え方」より
幼稚園の"運営形態"とは

区立保育園については、中野区は田中区政以来民営化を進めている。「公設民営化」(区立保育園を指定管理などにする)→「民設民営化」(私立保育園にする)という手法で区立保育園を次々と廃止している最中だ。1999年に41園あった区立保育園を現在16園まで減らしており、「区有施設配置の考え方」によると5年後までに10園に減らす。

していかんりしゃせいど【指定管理者制度
地方公共団体が設置した公共施設を、民間企業や団体を指定して管理・運営を委託する制度。利用者の利便性の向上、地方公共団体の負担の削減などを目的として導入された。
大辞林 第三版

一方、幼稚園は学校教育法における学校であるため、指定管理にはできない。仮に運営形態を現在の「区立幼稚園」から変えるとしたら、10年前に「やよい」「みずのとう」2園について行ったと同様、運営をどこか民間の法人に移管して、私立幼稚園(または私立の認定こども園)に転換する以外は考えにくい。(注**)

**厚生労働省「幼稚園・保育所等の経営実態調査結果」(2013年)は、幼稚園の「運営形態」として、公立と私立それぞれの幼保連携型と幼稚園型のこども園、および幼稚園を挙げている(下記リンク先p7)。「運営形態を検討」する場合、公立か私立か、および幼稚園か認定こども園か、が検討されると思われる。
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/163-1a.pdf

民営化(=区立幼稚園廃止)検討開始?

中野区教育委員会は2020年12月18日の定例会で「今後の区立幼稚園のあり方について」を協議した。

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傍聴人に配布された議事日程

教委にも同日報告された「区有施設配置の考え方」によると、教委は区立幼稚園の「今後の運営形態」を検討することになっている。したがってこの日の協議は「ひがしなかの幼稚園」と「かみさぎ幼稚園」の今後の運営形態の検討、つまり民営化(=区立幼稚園廃止)の可能性の検討を始めたのではないだろうか。

 

審議非公開

検討を始めたのではないだろうか、というのは、この時の教育委員会定例会には10人ほどの区民が傍聴にきていたのだが、 入野貴美子教育長が「意思決定の過程にある」ことを理由に「今後の区立幼稚園のあり方について」の協議を非公開とすることを提案、4人の教育委員が「異議なし」で賛成した。日程の最後に回したこの協議の前に傍聴人を追い出したからだ。(注***)

***ちなみに入野教育長は審議非公開の「異議なし」議決を、この日の会議冒頭と傍聴人を追い出す直前の、なぜか2回も行った。

"意思決定の過程"非公開は2度め

2018年12月に就任した入野教育長が「意思決定の過程」という馬鹿げた理由で審議を非公開にしたのは、今回が2度めだ。入野教育長のこのやり口は傍聴人の間で知れており、会議室から追い出される際に少なからぬ傍聴人が批判を口にした。

1度めは旧中野刑務所正門

入野教育長が最初にこの理由で審議を非公開にしたのは8月、旧中野刑務所正門の取り扱いに関する報告だった。中野区は2019年に発表した門の「現地保存」を最近「移設」に方針転換しており、その過程の議論が教育委員会の審議非公開によって区民から隠された。この件は小宮山たかし議員(無所属)が9月の区議会本会議一般質問で批判している。詳細は下記ブログ参照。

今後も非公開を乱発するのか

上記記事で記したように、田中区政の田辺裕子前教育長は教育委員会の審議非公開を乱発した。

酒井直人区長が任命した入野教育長は、旧中野刑務所正門の件までは人事と教科書選定以外で教育委員会の審議を非公開にすることはなかった。今回、入野教育長も非公開を乱用し始めたようで、中野区の教育行政の公開が危うい。

意思決定をするための機関が「意思決定の過程」という理由で審議を非公開にするのはナンセンスだ。それができるならどんな案件だって審議を非公開にできることになる。それでいいのだろうか。

 

案の定、非公開を乱発し始めた

入野教育長は2021/1/8の定例会でも「今後の区立幼稚園のあり方について」の協議を「意思決定の過程」を理由に非公開にした。この日はまた審査請求についての協議も議決の過程を理由に非公開にした。

定例会3回連続の非公開

続く1/22の定例会も「今後の区立幼稚園のあり方について」の協議を3回連続で「意思決定の過程」を理由に非公開に。またこの日は「審査請求に対する採決について」の議決を「採決の過程にある案件」として非公開にした。「採決の過程」を理由に議決を非公開にしたのは、入野教育長就任以来初めて。

 

ネット中継は検討してるらしい

 

追記: 中野区、民営化議論を認める

2021年2月10日の中野区議会子ども文教委員会で、共産小杉議員が、上記3回の協議で何が検討されたのか質問した。
戸辺教育委員会事務局次長(子ども教育部長)は、非公開協議のため中身は言えないが、とした上で、前回の10カ年計画にある民設民営化や、幼稚園としての形態のメリットデメリットをいろんな角度から検証している、と答えた。

そのあと立憲斉藤区議(子文教副委員長)が、区立か民設民営か、幼稚園か認定こども園かが検討されているのか、と尋ねたのに対し、職員の誰かが「その通りでございます」と返答した。新型コロナ対応で傍聴席から発言者が遠いうえ、職員は発言前に職名を言うことになっているのだがそれがなかったため、誰の発言か確認できなかった。

3月、4度目の非公開協議

2021年1月公表の中野区区有施設整備計画(素案たたき台)によると、区立幼稚園は10年後も2園、ただし「今後の運営形態については教育委員会で検討」とされていた。
3月23日までの区議会定例会で示す計画「素案」に、区は教委の「検討」結果を入れたいはずなんだよね。

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ひょっとして区の方針を教委が簡単にOKしないから5回も協議するのかしら。

取りまとめられた教委の意見(つづきの記事)

 

 (中野非公式通信)

  

中野区教育委員会に関する記事は下記参照