平和の森公園の大規模改修が2019/4/21の中野区議選を前に再び争点化(選挙結果を追記)

街中にわずかに残された草地と木に対する都会人の愛着を甘くみてはいけない。それは2018年の中野区長選で現職を落とすほどの力になった。ただその後の様相は複雑で、区長を替えても止められなかった平和の森公園の破壊が、間近に迫った中野区議選にどのように影響するのかは読めません。

(追記: 結果は自公過半数割れ、平和の森公園の緑と広場を守る公約を掲げた候補がトップ当選でした)

概要

2019/3/15、平和の森公園第2工区工事の変更議案が中野区議会で否決、4/21の区議選を前に再び争点化の様相が強まっているため、これまでの経過、否決された議案の概要、議案と無関係に木が切られ草地広場が破壊されていく現状、及び区議会各会派の対応と主張をまとめました。2019/3/17記。

( 3/21各会派の主張に加筆しました )

 

経過

[2018年6月] 中野区長選挙で「1万7000本の木が切られる!」と、平和の森公園再整備 (大規模改修) が争点に。区民は現職の田中大輔氏を落とし、平和の森公園の「緑と広場を守る」を公約に掲げた新人の酒井直人氏を新しい区長に選びました。

f:id:nakanocitizens:20181221082313j:plain[8月] 平和の森公園第2工区 (南側、草地広場を含む) 工事について、中野区が元の計画と変更案4案の計5案を議会に報告

[10月] 区は第2工区工事に関し2回の「語る会」で区民に5案を説明。第1工区 (北側) 工事終了。

[11月] 決定した方針を議会報告のあと2回の意見交換会。第2工区を全面閉鎖し着工

[12月] 区は工事変更議案を議会に提出せず。

[2019年3月] 変更議案が緊急上程、自公の反対多数で否決

 

変更議案とは

中野区が区議会第1回定例会最終日の2019/3/15緊急上程し否決された第2工区工事の変更議案→ http://kugikai-nakano.jp/gian/19314203610.pdf 。

第39号議案「平和の森公園再整備工事 請負契約に係る契約金額の変更について」

変更前 金 1,592,187,840 円
変更後 金 1,553,446,080 円

変更内容は議案に書かれていません。

提出前に区は、2/6と2/13区議会建設委員会、3/7子ども文教委員会、3/8厚生委員会で議案 の「案」を報告しています。 内容は同じか、との議員の質問に、区は3/15総務委員会でそうだと答弁しました。

 

委員会で報告した議案 (案) → http://kugikai-nakano.jp/shiryou/1931418913.pdf

元の平和の森公園第2工区改修計画のうち、区民の反対が強かった300m陸上トラック/100m走路設置、築山にコンクリート製滑り台設置、BBQ場設置、樹木伐採/間伐が見直されています。竣工は従来の2019年7月から10月に延期。

・草地広場の300mトラックと100mコースは「本工事においては設置を取りやめ」、代わりに草地広場周回園路の内側をゴムチップ舗装する。

・草地広場の築山の上にコンクリート滑り台は「本工事においては設置せず」既存の築山存置。

・バーベキューサイト予定地に災害時炊き出しスペースを設置。2020年4月BBQ場としての運用開始目指す。

・中高木の間伐100本は検証のため「本工事においては実施しない」。低木は可能な限り存置、補植する。伐採と剪定は実施。

 

書かれてないこと

・草地広場に300mトラック設置は「取りやめ」とされていますが、基礎工事である草地広場全面掘り返し/発泡スチロール (EPS) 埋設は、元々の計画と変わりなく実施する内容でした。平和の森公園は北の妙正寺川に向かって傾斜しているため、300mトラックを作るには北側をかさ上げして水平にする必要があります。ところが地下に下水道施設があるため、草地広場には厳しい荷重制限と下水道施設トップライトによる高さの制限があります。区と日本設計は、軽い発泡スチロールを大量に埋める案により条件をクリアしました。

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・草地広場の築山は、近所の保育園児や凧揚げの子どもたちが駆けたり転げたりするのにちょうどいい低いなだらかな丘でした。変更案は、築山をコンクリート滑り台で覆う計画の中止で約500万円の工事減額となっています。これはコンクリート工事分だけの金額で、したがって築山を壊して中に発泡スチロール (EPS) を入れ高く盛り直す工事は、元々の計画通り実施することになっていました。 ( 中野区公開文書「実施設計報告書3-c」p406によると築山滑り台は約2000万円)

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( 都公開文書「変更前工事概要資料」p79 )

・バーベキュー場として計画されていた設備は、もともとブロック舗装5区画と洗い場です。「災害時炊き出しスペース」というのは、同じものを同じ数だけ「災害時炊出しスペース」の名目で作ることに過ぎず、「災害時炊出しかまど」ができるわけではありません。10月の開園から半年間は「災害時炊出しスペース」として運用、煙など検証ののち2020年4月からBBQ場に。

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( 中野区公開文書「工事請負契約書(4)」p44 )

・区は2/13の建設委員会で、第2工区で1万2000本の低木と57本の中高木を伐採すると明言しています。低木は「可能な限り存置」としているにも関わらず、この2つの数字は元々の計画と同じです。したがって伐採を見送る低木があったとしてもその数は大きくなかったと思われます。

 

注: 工事は議案と関係なく進んでいる

変更議案でも、1万2000本の低木と中高木57本 (1本は第2工区閉鎖前に切られてるから56本) を伐採する元々の計画は変更なし。300メートル陸上トラックを「今回は作らない」だったにもかかわらず、草地広場掘り返し/大量の発泡スチロール (EPS) 埋設計画もそのままでした。

というか、もともと第2工区の樹木伐採のほとんどは、草地広場掘り返し/発泡スチロール埋設工事の支障として切られる木です。 

したがって中野区は議案提出の3日前の3/12から既に大量伐採を開始、議案を提出した3/15には中高木も伐採、3/16には草地広場全面掘り返しの工事を始めています。3/21草地広場にEPS搬入

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「区議選の争点になりそう」といっても、選挙の4/21までには大量伐採は既に完了、草地広場の破壊 (全面掘り返し/発泡スチロール埋設の作業) も進んでいるわけです。

(参考写真のモーメント = 破壊される平和の森公園第2工区)

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議案に対する各会派の対応

2017年10月、田中区政の議会で元々の平和の森公園再整備が可決された際の賛否が、今回、酒井区政で工事を一部変更する議案ではどうなったか見てみます (敬称略)。

なお田中区政は自公が与党でした。酒井区政の与党は立憲と共産。

(1)「賛成 → 反対」自民党公明党

(2)「反対 → 賛成」共産党、むとう有子 (無所属)、細野かよこ (無所属)

(3)「賛成 → 賛成」立憲民主党 (2017年は民進党、その時の賛成は2018年の補選で当選した杉山司を除く) 、都民ファースト、小宮山たかし (無所属)、近藤さえ子 (無所属)

(4)「賛成 → 棄権」石坂わたる (無所属)

 

3/15本会議で起立投票が行われた工事変更議案は、区議41人 (欠員1) 、議長を除く40人のうち反対20 (自民11、公明9)、賛成19 (立憲6、共産6、都ファ3、むとう有子、細野かよこ、小宮山たかし、近藤さえ子 = 以上無所属)、棄権 (退席) 1 (石坂わたる = 無所属) 、20対19の反対多数で否決。

なお、石坂氏が仮に賛成に回り20対20の賛否同数となっていた場合、議長 (自民) が1票を投じるので21対20の反対多数で否決されたと思われます。

 

2019/3/15区議会などでの議案に対する各会派の主張

自民

反対 (元の再整備に賛成)

3/15区議会での発言なし。議案否決後にフェイスブックに投稿。

平和の森公園における工事の現行案(バーベキューサイト等建設)を守り抜きました!!

区長から提出された「現在工事中の平和の森公園に設置予定であったバーベキューサイトと300メートルトラックをなくす」案を自民党公明党過半数で否決し、バーベキューサイトの建設の方針が維持されました。

-- 自由民主党中野総支部フェイスブック

BBQを守り抜きました。

BBQ場をそんなに作りたかったんでしょうか。最初の半年でも「災害時炊出しスペース」になるのが嫌だったのか。

 

公明

反対 (元の再整備に賛成)

3/15総務委員会で公明が議案を持ち帰り対応を検討したのち、平山英明氏が反対討論。その後の本会議で木村広一氏が反対討論。いずれも工事変更議案がパブリックコメント手続を経ていないことを反対の理由とし、概略次のように述べました。

本件は本来、中野区自治基本条例のパブリックコメント手続を必要としていた。そのことは区も認識している。区はパブコメを実施しない根拠をパブリックコメント規則第3条但し書き「迅速若しくは緊急を要するもの、軽微なもの又は区長に裁量の余地のないものについては、パブリック・コメント手続を行わないことができる」の「迅速若しくは緊急を要するもの」としている。本件は迅速または緊急とは認められない。またこの但し書きが過去に発動されたことはなく、区民の区政参加を制限する条文の適用には慎重であるべき。

中野区自治基本条例

中野区パブリック・コメント手続に関する規則

 

共産

賛成 (元の再整備に反対)

本会議で来住和行氏が賛成討論。

総務委員会では羽鳥だいすけ氏が賛成討論。

区HPで複数案提示、意見募集、2回の語る会、変更案の発表と2回の意見交換会の実施と、かつてない丁寧な検討が進められた。そもそも当初の再整備のパブコメで「再整備しないでほしい」との圧倒的意見が寄せられていた。今回の議案は区民の願いを実現するもの。


むとう有子氏 (無所属)

賛成 (元の再整備に反対)

 トラックは不要と考え、むとうは賛成しました。

( むとう有子区議会レポートより )

 

細野かよこ氏 (無所属)

賛成 (元の再整備に反対)

区長の公約実現に向けた議案。

 

立憲

賛成 (元の再整備に賛成)

本会議で山本たかし氏が賛成討論。

民意を尊重すべき。 

 

都民ファースト

賛成 (元の再整備に賛成) 

300mトラックについては必要なし。

 

近藤さえ子氏 (無所属)

賛成 (元の再整備に賛成)

3/15総務委員会で発言。

前回賛成した。区長選を通じて必要ないとの声を聞いた。自分は賛成してるのでどちらでもいい。区民の民意ならそちらに行けばいい。

 

小宮山たかし氏 (無所属)

賛成 (元の再整備に賛成) 

樹木は可能な限り保存すべきであった。

 

石坂わたる氏 (無所属)

棄権 (元の再整備に賛成)

改めて時間をとって地下の工事の再検討も行うべき。

その後ブログに棄権の理由を掲載。

 

石坂氏の本会議での棄権 (退席) には批判があると思います。しかし中野区が平和の森公園の草地広場に大量の発泡スチロール (EPS) を埋める計画が昨年11月に発覚して以来、EPSの防災、環境、健康上の問題を区議会で質問してくれたのは、建設委員会の石坂わたる氏と、厚生委員会のむとう有子氏、この2人の無所属議員だけでした。

お2人の行動を私は高く評価しています。

 

 

2019/3/17

 

 

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3/18酒井区長「当初計画を進める」と発表

区議会における審議の結果が否決となりました。今後の平和の森公園再整備については、この議決を受け、当初の再整備計画案に沿って整備を進めることとなります。なお、中高木の間伐については、防災樹林帯保全のために適正な数量や施工方法を更に検証していることから、今回の工事では実施しないこととします。
 区としては、平和の森公園が多くの区民に親しまれ、区民のスポーツ健康づくりに広く活用されるように最大限努めて参ります。
-- 酒井区長のコメント

(元のページは削除。上記お知らせページが保存されたインターネットアーカイブのリンク)

 

「当初の再整備計画」と否決された議案との主な違い

・変更議案で「本工事においては設置を取りやめる」としていた300m陸上トラックと100m走路を、今回の工事で草地広場に作る。議案は300mトラックの代わりに草地広場周回園路の内側をゴムチップ舗装するとしていたが、当初計画に戻るのでそれはしない。

・議案が「本工事においては設置せず」としていた草地広場の築山コンクリート滑り台を、今回の工事で設置する。

・議案では半年間は災害時炊き出しスペースとして運用するとしていたBBQ場を、最初からBBQ場として運用する。

 

発表を受けた区民の反応

 

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共産党はやはり区長選に続き区議選でも平和の森公園を争点にするみたいです

 

たとえ議案が通ってたとしても「草地広場今のまま」だったわけでも、木が切られずに済んだわけでもないんですけどね。選挙ですので勝算があってされていることなのでしょう。

他の多くの区民と同様、平和の森公園の木と草地広場が守られることを私も望んでいました。残念です。

 

追記: 区議選結果

 

【参考】平和の森公園関連の非公式記事/まとめ/情報開示文書。

 

非公式ポータル

 

 

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