中野区立図書館「業務要求水準書」から「情報公開」「法令遵守」「個人情報保護」「利用者の要望反映」「図書館協議会」消滅

要旨

東京都中野区が区立図書館全館の指定管理契約を2016年に更改した際の「業務要求水準書」から、「情報公開」「法令遵守」「個人情報保護」「利用者の要望等の反映」の文言が消滅、指定管理者が利用料を取れるサービスの縛りも無くなったことが分かった。「図書館(運営)協議会」については2013年の指定管理開始当初から無く、その代替の「利用者懇談会」も文言が無くなった。

経緯

東京都中野区はそれまで直営だった区立図書館8館全部を、2013年4月から「ヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体」の指定管理にした。3年間の契約終了後、2016年4月から2021年3月までの5年間、同じ業者の指定管理が継続中である。

していかんりしゃせいど【指定管理者制度
地方公共団体が設置した公共施設を、民間企業や団体を指定して管理・運営を委託する制度。利用者の利便性の向上、地方公共団体の負担の削減などを目的として導入された。
大辞林 第三版

中野区は、指定管理者に守らせる「業務要求水準書」を指定管理者募集の際に作り公開している。区立図書館の場合は2012年と2015年。

区立図書館ホームページは、2019年11月下旬現在システム更改のため閉鎖中で、新ホームページは12月1日始動するが、システム更改前のホームページでは現在有効でない2012年版の業務要求水準書だけが公開されていた。(インターネットアーカイブhttps://web.archive.org/web/20191030080511/https://www3.city.tokyo-nakano.lg.jp/tosho/kankoubutsu/u10-6-4-2siryou.pdf )

情報公開

そこで、現在有効な2015年版の業務要求水準書を区民が中野区に情報公開請求し、このほど公開された。

【中野区の図書館業務要求水準書】
平成24年版=2012年(図書館ウェブサイトにあったものをダウンロード) 
平成27年版=2015年(今回情報開示されたもの) 

【新旧業務要求水準書対照表】

(新旧業務要求水準書対照表を別タブで開く)

 

新旧要求水準書の主な違い

上記「対照表」を参照すると分かる通り、主な違いとして、新しい業務要求水準書からは「情報公開」「法令遵守」「個人情報保護」の文言が消滅、指定管理者が利用料を取れるサービスの縛りも無くなった。

指定管理者が区民の個人情報で商売するのもオッケーってことですかね?

「利用者の要望等の反映」の文言と「中野区立図書館の基本方針」の章もごっそり無くなった。えー。

また行政情報の透明性の低下は、指定管理者制度の主な弊害のひとつと思われるが、中野区は2015年版の要求水準書から、2012年版にはあった「情報公開」の業務要求をわざわざ外している。

 

なお「図書館(運営)協議会」については指定管理開始当初の2012年版の業務要求水準書から既に入っていない。
図書館協議会」とは、図書館法に定めがある、図書館の運営に関し意見を述べる機関である。

図書館法第十四条 公立図書館に図書館協議会を置くことができる。
2 図書館協議会は、図書館の運営に関し館長の諮問に応ずるとともに、図書館の行う図書館奉仕につき、館長に対して意見を述べる機関とする。

中野区は、図書館法の図書館協議会とは違うものとしながらも、利用者、識者、館員からなる「図書館運営協議会」を設置していたが、区立図書館の指定管理開始とともに図書館運営協議会は無くなった。(インターネットアーカイブhttps://web.archive.org/web/20150115085228/https://www3.city.tokyo-nakano.lg.jp/tosho/kankoubutsu/unnkyou_all.html )
その際、図書館運営協議会の今後のあり方は「検討中」とされたものの、その後検討された形跡はない。
2019年11月に開かれた第4回「今後の図書館サービスのあり方検討会」で中野区担当者が、協議会設置は予定されていないと発言している。

中野区は指定管理導入とともに無くした図書館運営協議会の代わりとして「図書館利用者懇談会」を年1回開いているが、この「利用者懇談会」も2012年版の要求水準書にあった記載が2015年版では消滅。

 

11月の検討会で、コーディネーターの大串夏身昭和女子大名誉教授が、中野区の図書館に欠けているものは「評価」だと指摘した。

今後の図書館サービスのあり方検討会リンク→ https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/651500/d027586.html
今後の図書館サービスのあり方検討会まとめ→ https://togetter.com/li/1396949
このことは、業務要求水準書の表現からも裏付けられる。2012年版の要求水準書に「経営評価」(区の評価を受ける)とあったのが2015年版の要求水準書で「自己評価」(自己評価結果を区に報告)にグレードダウンした。

 

結論

2013年の区立図書館全館指定管理と2015年の業務要求水準書のグレードダウンは、いずれも田中前区長、田辺前教育長のもとで行われた。しかし中野区は2018年に区長も教育長も変わっており、2021年に現在の区立図書館指定管理契約が切れた後、もし指定管理制度を続けるのであれば、業務要求水準書はせめて最初のレベルまで戻すべき。

 

( r )(く)2019/11/24記

 

【追記】2019/12/1オープンした新ホームページには2012年と2015年の両方の業務要求水準書が掲載された

 

 

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中野区立中央図書館(2019/11/24撮影)

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同じ建物内のカフェぐり〜んから見た中野区立中央図書館の閲覧室(2019/11/17撮影)

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中野区立本町図書館(2019/8/17撮影)