撤回された幻の「地域開放型学校図書館見直し」含む中野区予算可決(2020年3月)。見直し撤回に関する情報公開

概要

・中野区は先ごろ「地域開放型学校図書館」の見直し方針をいったん公表しながら、なぜか1週間で撤回し「朝令暮改」と批判された。

東京都中野区議会は2020年3月9日の本会議で、2020年度予算を賛成多数で可決した。
可決した予算には、なんと撤回されたはずの「幻の見直し案」が含まれている。当初の計画に戻すには補正予算を組まなければならない。どういうことだってばよ?
・区の「見直し」と「見直し撤回」に関する情報開示文書を公開する。
2020/3/10記

 

経過

2019年8-11月

中野区は、開設予定の新図書館と地域開放型学校図書館の方針などを話し合う、有識者や区内関係団体、公募区民などからなる「今後の図書館サービスのあり方検討会」を、2019年8-11月にかけ4回開いた。

検討会まとめ⬇️

 

2020年1月下旬-2月上旬

中野区は、区立小学校20カ所に「区立図書館分館」として「地域開放型学校図書館」の設置を計画していた(プランA)。「今後の図書館サービスのあり方検討会」では、防犯面などから慎重意見が多く出された。

これを受けて2020年1月23日、区議会子ども文教委員会で「地域開放型学校図書館」の機能を縮小する「見直し」(プランB)を報告した。同24日、教育委員会定例会で同様の報告。子ども文教委員会では自民党議員らの強い反発を受けた。
わずか1週間後の1月31日、区は教育委員会定例会で見直し案を実質的に撤回、ほぼ当初案に戻した計画(プランA')を改めて報告した。2月4日、区議会子ども文教委員会でも同様の報告を行ったが、朝令暮改」の合理的な理由を区職員は説明できず、この間に何があったのか謎が残った。

見直し案(プランB)撤回いきさつまとめ⬇️

 

予算可決

中野区の2020年度一般会計予算(1468億2300万円)は2020年3月9日、中野区議会本会議で可決、成立した。与党(立憲と共産)、野党(自民と公明)のほか、少数会派と無所属の多くが賛成した。
反対は無所属のむとう有子、石坂わたる両議員で、ともに反対討論を行った。

 

幻の「見直し」予算

むとう、石坂両議員は、反対討論でいずれも、一般会計予算に含まれる「地域開放型学校図書館」の予算3353万円が、撤回されたはずの「見直し」(プランB)に基づいたものである矛盾に言及した。
撤回後の予算(プランA')になっていないことについて、区は「時間的に当初案に基づく予算に変更できなかった」と説明している。
中野区は最初の地域開放型学校図書館を、2020年9月にみなみの小学校と美鳩小学校に開設予定。
元の計画(プランA or A')に戻すためには、補正予算を組む必要がある。
区は今後、そのための補正予算を区議会に提出するとしている。

 

決定過程

2020年2月4日の区議会子ども文教委員会での区の説明によると、「見直し」(プランB)の決定は、2020年12月上旬に庁内調整があって、2020年1月21日に庁議のあと、1月23日の子ども文教委員会と1月24日の教育委員会定例会で報告。
一方、「撤回」(プランA')の決定は、2020年1月30日に政策調整会議のあと1月31日に教育委員会定例会で報告。そのあと2月3日に庁議があって2月4日に子ども文教委員会で報告。
1月21日と2月3日の庁議には酒井直人区長が出席したが、この件で特に発言はなかったという。

 

情報公開

中野区議会が委員会での区の報告を「受け取らない」(拒否)のはできないことになっている。今回の件は、中野区が一度決定し区議会と教育委員会に報告した方針(プランB)を、わずか1週間で実質的に撤回した異例の事態だ。
私たちは、地域開放型学校図書館「見直し」(プランB)が決まった経緯と、その後撤回(プランA')された経緯がわかる文書を中野区に情報公開請求し、このほど開示された。

 

開示請求(2020/1/31)

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開示(2020/2/17)

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見直し(プランB)決定に関する文書(一部開示)

2019/11/19図書館検討政策決定調整会議連絡票


2019/11/19政策決定調整会議資料


資料 地域開放型学校図書館の概要


2020/1/21庁議報告

撤回(プランA')の決定に関する文書

2020/1/30政策調整会議資料

 

開示文書からわかることは、地域開放型学校図書館「見直し」(プランB)は、中野区の正式の手続きを経て検討、決定された。2020年度一般会計予算も「見直し」を前提に組まれた。それがいったい何があってあっさり1週間で撤回されたのか。

撤回(プランA')決定に関する文書(ペラ紙2枚)には、撤回のための何らかの検討がされた形跡はない。謎は深まるばかりだ。

 

今後

中野区は今後、2020年9月開始予定の地域開放型学校図書館を、撤回した「見直し」案から元の計画に戻すために、補正予算を区議会に提出するとしている。提出された議案は、区議会総務委員会と子ども文教委員会での審議を経て本会議で採決される。
区議会での議論を注視したい。

 

つづきの記事

 

( r =中野非公式)

 

 

 

CDで開示された文書。

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