「100日後に開館する中野東図書館」が炎上した超高層書架はなんと用途未定。酒井区長のツタヤ図書館への憧れの徒花? 中野区と業者が取り決めたツイッター運用方法を情報公開 (2021年11月)(追記: やはりダミー本)


2021年10月20日、東京都の中野区立図書館は初の公式ツイッターアカウント「100日後に開館する中野東図書館」を開設した。https://twitter.com/NakanoLib

悪ノリしたアカウント名や、軽佻浮薄で無神経なツイートから、そのうち炎上することが懸念されたため、アカウントの運用や中野区のチェック体制などについてただちに情報公開請求した。

まさか開示決定も出ないうち、本家のワニと違って100日後を待たず、アカウント開設わずか18日後で炎上するとは思わなかった。

開示文書によると、ツイートは指定管理者が1カ月分まとめて作り、区側のチェックを経た上で予約投稿されている。それだけ用意周到なのだから、軽佻浮薄と無神経は意図したものと考えざるを得ない。

また、炎上の原因となった超高層書架が中野東図書館に設置された経緯などについて、現時点でわかっていることも記しておく。この書架の用途は、なんとまだ決まってない。内部で検討中で12月に公表するそうだ。

あと、あのオシャレ図書館ふうのお飾り書架は、酒井区長のツタヤ図書館に対する「憧れ」の徒花だったふしがある。 2021/11/10記

11/11追記: 区HPで書架の安全性を釈明。やっぱりダミー本を置くみたい。HPの説明がとてもわかりにくいから解説した。11/13追記: 消防法上の問題を記載した。11/17追記: 階段部分もスゴイタカイホンダナ。

図書館ツイッター炎上

問題のツイート

中野区立図書館公式ツイッターは、開設18日後の11月7日、「7階の天井から9階にかけて吹き抜けになった場所に、高い高い本棚があります(高所恐怖症のスタッフは見上げるだけでもドキドキです……)。あと86日で開館日。」と、中野東図書館(東京都中野区中央1-41-2、2022年2月開館予定)の吹き抜けにそびえ立つ超高層書架の写真とともに投稿し、炎上した。

twitter.com

本を大事に思う人たちが、本を飾りとしか思っていないような高層書架を装備したオシャレ図書館の蔓延をどれほど憂えているか、担当者は図書館関係者なのに知らないらしい。こんなショッキングな写真を投稿したらやばいことがわからない人が、公共図書館SNSを担当している。しかも誰も意見しないという、炎上ツイッターにありがちな状況が推測された。

炎上までのまとめ

開設以来の無神経なツイートや、今回の炎上を下のmin.t にまとめた。関係者はよく読んで、今後の対応* の参考にしてほしい。まあ、そう言っても住民や利用者の声なんか聞きゃしないだろうなとは思う。聞いてたらこんなことにならない。 min.togetter.com * そびえ立つ超高層書架は、炎上した中野東図書館の吹き抜けだけでなく階段にも設置されていて、来年2月に開館すればどうせ皆に見られるけどどうするのとか、紫外線除菌ボックスなんて置いたら本が傷むよとか、いろいろそういう今後の対応もあると思うがとりあえずここでは置いておく。

中野区から開示された情報

開示決定

中野区立図書館ツイッター開設翌日の10月21日に電子申請で開示請求しようとしたら、システムが落ちていた。復旧を待っててもらちがあかないので、10月22日に中野区教育委員会事務局宛に開示請求書を郵送した。区政情報公開請求書

ツイッター炎上翌日の11月8日に電話で開示決定のお知らせがあり、翌9日に中野区役所5階の教育委員会事務局に取りにいった。区政情報公開決定通知書

関係ないけど昼休みの終わりぎわで、区職員たちは節電のため庁内の電気を消し薄暗がりのなか自席に座っていたので私はぎょっとした。目が悪くなるよ?

5/14-区が図書館SNS開設指示

担当職員が「区と指定管理者の協議した日付け」という表を作成してくれた。「文書」の欄にマルがついている件は文書が公開された。マルがないものは口頭だという。

f:id:nakanocitizens:20211110002518j:plain 表をみると、まず2021年5月14日に区が図書館の指定管理者に口頭で「SNSによる広報活動の指示」をした。続いてシステムベンダーと口頭で打ち合わせ。

指定管理者はヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体。2013年度から現状では2026年度まで中野区立図書館全館の指定管理者だ。株式会社ヴィアックスは、中野区に本社があるダイレクトマーケティングや図書館関連事業をしている企業で、中野区立広町みらい公園の指定管理者でもある。 nakanocitizens.hatenablog.jp

していかんりしゃせいど【指定管理者制度

地方公共団体が設置した公共施設を、民間企業や団体を指定して管理・運営を委託する制度。利用者の利便性の向上、地方公共団体の負担の削減などを目的として導入された。

大辞林 第三版

9/10-指定管理者がカウントダウン提案

8月27日に指定管理者が最初の企画書を決裁、9月10日に内容を区と共有した。8/27指定管理者企画書

この最初の企画書で、指定管理者がツイッターでの中野東図書館開館カウントダウンを提案した。この時点では、日曜と中央図書館休館日を除く毎日更新が提案されていた。

9/14-区が「100日後に開館する中野東図書館」提案

9月14日に区側と指定管理者が中野東図書館運営会議でツイッターの運用を話し合った。 教育委員会事務局が準備した資料1 資料2

資料1で「100日後に開館する中野東図書館」というアカウント名が提案された。うわー、、、区側の提案だったのか。

私は、アカウント名を「中野区立図書館」でなく、なぜこんな公式なりすましみたいなやつにしたのかわかる文書も請求したのだが、この資料によると、中野東図書館の開館後にアカウント名は中野区立図書館にして、ツイートもふつうの図書館広報に変えるという。恥ずかしいから今すぐそうしてほしい。

このときに、更新は毎日ではなく火、木、日の週3回正午になった。しかし、毎日更新しなけりゃカウントダウンじゃないよね?

また、中野東図書館の開館前は「話題性でフォロワーを獲得」と書いてある。フォロワーが100人程度だったのが炎上のあと3日間くらいは日々倍々で増えたから、目的を果たしたと言えなくもない。公共図書館がそれでいいのだろうか。というか、フォロワーを増やすのは開館後の来館者増のためなのに、今回増えたフォロワーほぼ利用者ではないね?

資料2では「今日は何の日」という教養系のネタを活用することが提案されている。下に出てくる1カ月分のツイートにそれがないところをみると、企画は没になったのだろうか。

10月1日、指定管理者が2番目の企画書を決裁。最初の企画書に9月14日の区側提案を合わせた内容になっている。 10/1指定管理者企画書

10/18-指定管理者が1カ月分のツイートを区に提案

10月18日、指定管理者は区に、11月18日までの1カ月分のツイートを送った。1カ月分のツイート

19日にはツイッター運用ポリシーを区に送付。運用ポリシー

区はそれらを19日に収受、10月21日に供覧完了。決定権者は教委事務局子ども・教育政策課長。供覧完了の回状

8月27日の企画書では、更新は基本毎日で、指定管理者と区職員の担当者が交互にツイートを担当することが提案されていた。10月1日の企画書では、更新は週3回で、区職員の更新日は「調整中」となった。

「調整」の結果は、指定管理者が1カ月分のツイートを教育委員会事務局に送り、教委事務局がそれをチェックしているところからみて、結局ツイートは全部、指定管理者が作ることになったのかもしれない。

また、9月14日の区側提案で、ツイートはまとめて2週間分作るとされていたが、実際は1カ月分になった。ツイートが予約投稿なのと、アカウントが発信専用でフォローやリプライしないことは変更なし。

差別表現は「厳密にチェック」

9月14日の区側資料とそれを受けた10月1日企画書に、差別表現などを「組織的に厳密にチェック」との記載がある。もしやこの件の関係者たちには、差別表現以外でSNSが炎上することがあるという発想はなかったのかもしれない。

細かいことだが、ツイートの写真がちょいちょい正方形だから、同時にインスタグラムも投稿しようと思ってやめたのかと思ったが、そういう感じではなかった。

超高層書架の用途と経緯など

書架の用途は未定で12月に公表

あの衝撃的な超高層書架が中野東図書館に作られた理由は、私たちは承知していない。

2021年11月9日に上記開示請求を受け取りに行ったさい中野区の担当者に聞いたところ、この書架はなんとまだ用途が決まってない。安全面などを考慮しつつ内部で検討中という。12月に「運営計画」として中野区立図書館ホームページで公表する。住民や利用者との意見交換会などの予定はない。

それとは別に9月ごろ関係者に聞いたところでは、ダミー本を置くしかないのではないかと話していた。この書架の配架などのために簡易な足場を組むと1回10数万円、本格的な足場を組むと1回60万円とかの金がかかるらしいという話も耳にした。

2017年9月の基本設計には吹き抜けなし

中野区ホームページで一般区民が見ることができる中野東図書館の平面図は、2017年9月に作成された基本設計が最新で、それ以降はない。

基本設計には吹き抜け自体が存在しない。したがって2017年9月の段階では、吹き抜け部分の超高層書架は計画になかった。一方、階段の周囲は基本設計に(高さはともかく)書架が記載されている。第三中学校・第十中学校統合新校等複合施設整備基本設計
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2017年9月の基本設計の中野東図書館平面図。赤丸(のちに吹き抜けと超高層書架が設置された場所)と黄丸(階段と階段周囲の書架)は加筆

吹き抜けは2018年8月までに追加

吹き抜けと超高層書架は、したがって基本設計のあと、実施設計の段階で追加されたとみられる。

中野東図書館や中野東中学校や児相などが入る複合施設の基本設計と実施設計は、2017年2月に一括で、株式会社安井建築設計事務所に2億946万1680円で発注された。平成28年度の契約実績(高額案件)について f:id:nakanocitizens:20211109224137j:plain

実施設計は、納期の2018年8月3日までに作成されたと思われる。2018年9月4日には中野区が建設工事の入札を公告しているから、それより前なのは間違いない。基本設計の2017年9月と実施設計の2018年8月の間に何かあったのか?

酒井区長のツタヤ図書館への「憧れ」?

この間というのは、2018年6月に中野区長が田中大輔から酒井直人に交代している。酒井区長は2018年11月に佐賀県武雄市立図書館に「憧れていた」とか言って視察に行った。中野東図書館のツタヤ図書館ふうの高所お飾り書架は、もしかしたら酒井区長のツタヤ図書館への「憧れ」と関係あるのだろうか? togetter.com

下のようにうがった見方をする人もいる。 吹き抜けの追加は、構造計算をやり直す必要があるだろうし、2カ月程度で設計変更するのはむずかしいかもしれない。しかしもし追加されたのが超高層書架だけなら、構造に影響ないからありうるのかもしれない。

それとも酒井区長は本当に、新図書館をツタヤにしたかったんだろうか?

ちなみに複合施設の建設は、2018年10月にナカノフドー建設、協永建設、進藤建設のJVが66億4401万3000円で受注した。中野東中学校等複合施設新築工事請負契約

検討会資料には文字のみ記載

2019年8-11月に中野区の「今後の図書館サービスのあり方検討会」(非公式の審議会のようなもの)が開かれ、有識者や関係団体、公募区民が、中野東図書館の活用を含む中野区の今後の図書館サービスを話し合った。

今後の図書館サービスのあり方検討会 | 中野区公式ホームページ

検討会で配布された資料に記載の中野東図書館平面図は、基本設計のもので吹き抜けはない。しかし今見たら文字で「7〜9階 吹抜け書架」と書き込んである。中野区職員から検討会でこの書架について説明はなかった。やられた。こんなん気づかんかったわ。

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「今後の図書館サービスのあり方検討会」資料の中野東図書館平面図(赤丸は加筆)

業者向けには吹き抜け記載。吹き抜け下は「子どもラウンジ」

2020年7月に中野区が中野区立図書館全館の指定管理者を契約期間満了で募集したさいに公開した中野東図書館平面図には、吹き抜けがある。区民向けのウェブページでは2017年の基本設計しか公開してないのに、業者向けには新しい図面? 2020年7月に業者向けに公開された中野東図書館平面図
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2020年7月に業者向けに公開された中野東図書館平面図。赤丸(吹き抜けと超高層書架)は加筆

この吹き抜けは3階分で、現地のフロアマップを見ると、1番下は7階「こどもフロア」の「子どもラウンジ」だ。

区議は誰も問題にしなかった

2022年2月の開館を前に、2021年8月に内覧会があった。中野区議会議員らは一般区民に先んじて見学させてもらって撮った写真を、自慢気にSNSなどで披露した。

吹き抜けの超高層書架の写真は、公明党区議のひとりがツイッターに投稿した。 twitter.com

また立憲区議団が下のブログに載せた写真には、中野東図書館の階段部分の高層書架の一部が写り込んでいる。 rikken-nakano.net
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中野東図書館で本の形の椅子に座る区議3人。そびえ立つ階段部分の高層書架の一部が写り込んでいる。立憲区議団のブログよりキャプチャ
8月にすでに区議たちは、一般区民が入れない開館前の施設を見せてもらい、この用途未定の異様な書架を目にしていた。なのにそんなものに区民の税金が使われていることはスルーで、うきうきと記念写真を撮っただけだった。

会議録を検索した限りでは、中野区議会でこの書架を問題にした区議はいない。

11/11追記: 中野区HPで安全性を釈明。ダミー本を置く

中野区は11月11日、ホームページでこの書架の安全性を釈明した。やっぱりダミー本を置くらしい。 www.city.tokyo-nakano.lg.jp f:id:nakanocitizens:20211111152717j:plain (図書館HPにも同様のお知らせが掲載された)

国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータルにも記載。

11/12追記:「裏面から操作」と展示スペース、ダミー本エリアの解説

ちなみ展示スペースは「裏面から操作可能」って書いてるけど、裏面から開けられるのは各フロアレベルから手が届く範囲の一部だからね?
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2021/8/20木村区議投稿の写真に加筆
中野区HPの記載がわかりにくいので解説すると、上の写真の1番下の、赤で囲ってない部分はYA関連図書。

上部の赤で囲ってない部分2カ所の「展示スペース」(本の紹介、募集作品等。紙及び発泡スチロール等で作成)が「裏面から操作可能」。裏面には関連図書を置く。

赤で囲った部分3カ所は裏面から開けられないから、「書架として認識可能なように」ダミー本(紙及び発泡スチロール等で作成)を置いて固定。(このダミー本部分の配架は足場を組む必要がある。ネットニュースによると区担当者はこの部分に配架されたものを換えるのは「数年に1度」と話しているらしい)

で、落下防止ネット設置。

上記画像の「展示」と書いた箇所の「裏面」がわかりにくいという話があったため、下のツイートで説明した。

なお階段部分も下の写真の赤で囲った棚は裏面から開けられない。配架のため階段に足場を組むのは大変じゃないのかしら。
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立憲区議団のブログの写真のキャプチャに加筆

11/13追記: ダミー本の発泡スチロールは消防法的にどうなのか?

今回の中野区の発表のように、発泡スチロールのような指定可燃物を大量に壁に貼るのは、消防法的にどうなのか。既述の通り、3層分の吹き抜けの下は7階「こどもフロア」の「子どもラウンジ」である。

階段は災害時の避難路なんだけど

ましてや、災害時の避難路である「階段」の吹き抜け書架はどうするのか。2017年の基本設計の段階から、階段の書架には懸念が持たれていた。

11/17追記: 階段吹き抜け書架もスゴイタカイホンダナだったね

その後11月17日に一部無所属区議が現地に行って書架を確認した。

上の石坂区議のツイートの添付写真の2枚目をみると、中野区立図書館ツイッターが炎上した吹き抜け書架ではない、「階段」の吹き抜け書架の方も各階をぶち抜いたスゴイタカイホンダナであることがわかる。

階段の吹き抜け超高層書架については、ほとんどの部分が「裏面から操作」できない。多くの部分は手も届かない。写真で本の表紙らしいものを置いて書架の手が届く範囲を示している。てことはやっぱり階段にも足場を組んで発泡スチロールのダミー本を大量に置くつもりなんだろうか。災害時避難路なのに。

3枚目の写真は、炎上した方の吹き抜け書架の「裏面から手が届く展示スペース」部分の「裏面」を開けてみせてもらってるところだね。石坂区議が手を伸ばしてるあたりは裏面から開けられないから中野区が発泡スチロールでダミー本を作って置くと言ってる部分。

吹き抜け書架の1番下はなぜ普通の書棚にしなかったのかな

つづきの記事

nakanocitizens.hatenablog.jp

(中野非公式通信)

関連記事など

〈中野区立図書館のとてもくわしい記事など〉 nakanocitizens.hatenablog.jp nakanocitizens.hatenablog.jp

〈中野区関係の情報公開〉 togetter.com

〈平和の森公園発泡スチロール訴訟〉 nakanocitizens.hatenablog.jp nakanocitizens.hatenablog.jp

〈その他〉 nakanocitizens.hatenablog.com

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追記: 超高層書架の回文に曲をつけてみた