東京都中野区は2022年度から1件300円の情報公開事務手数料を廃止する方針。2022/2/1記
(3/25追記)事務手数料廃止可決。
- 中野区の情報公開事務手数料
- 事務手数料に関する審査請求
- 事務手数料に関する情報公開請求
- 事務手数料廃止方針を公表
- 推測だが: 許認可権限移管も事務手数料廃止に関係?
- 追記: 2022/3/25事務手数料廃止可決
中野区の情報公開事務手数料
中野区がこれまで徴収してきた、許認可関係の区政情報公開の事務手数料は1件300円だった。許認可関係以外の情報公開については手数料はかからない。コピー代(白黒1枚10円)や記憶媒体代(CD1枚50円)などは実費徴収。
事務手数料300円じたいは他自治体と同様だ。しかし中野区の「1件」は情報公開請求1件ではなく、たとえば請求に含まれる店、ホテル・旅館、簡易宿所の1軒1軒をそれぞれ1件とカウントして300円の手数料を請求し、結果的に請求者に高額な手数料を払わせていた。
中野区区政情報の公開に関する条例
第12条 区政情報のうち、実施機関が行う許可、認可、確認その他これに類する行為又は実施機関に対して行う事業所開設等の届出で規則で定めるもの(以下「許可等」という。)に関して調製し、又は保管する公簿等について、その全部又は一部を公開する場合は、事務手数料を徴収するものとする。
2 前項の規定により徴収する事務手数料の額は、1件につき300円とし、請求者から公開の際に徴収する。この場合の件数の計算については、許可等の申請又は届出ごとに1件とし、これによることが適当でない場合は、実施機関の定めるところによる。
ホテル・旅館や簡易宿所の情報公開請求の例
住宅宿泊事業法が2018年6月に施行され、届出をした民泊については、各地方自治体のウェブサイトで届出番号などが情報公開された。しかし、届出民泊には営業期間が1年の半分までなどの不利な制約があり、それを嫌った以前からの違法民泊は、ほとんどが無届のまま営業を続けた。その状況を見かねた政府観光庁はAirBnB等の仲介事業者に圧力を掛け、やっと、届出番号がないと仲介事業者のサイトに掲載されないというところまでこぎつけた。
ところが、届出番号は正当なものかどうかのチェックが難しく、偽装する例が多発し、その中には違法民泊なのに旅館業法施設(ホテル・旅館、簡易宿所)だと偽るものさえも現れた。
中野区では、旅館業法施設について許認可情報がネットで公開されていなかった。そこで、それを中野区が更新するたびに住民有志が請求し公開した。請求1回ごとに、たとえば20件の旅館業法施設に関する情報が含まれていれば6000円を自費で支払った。1軒ずつ実地調査もした。住民有志の関係先に差出人不明の脅迫めいた手紙が来たこともあるそうだ。
2019年6月に観光庁が旅館業法施設と届出民泊の統一リストを作って仲介事業者にそれを参照することを要請するという対策を取ったたため活動を休止した。お疲れさまでした。中野区もその後、民泊と宿泊施設に関する規則を厳格化した。この件の詳細は下記まとめ参照。
下は当時公開された資料の一部を表にしたもの。この1行1行の情報に300円が請求された。
余談ながら、中野区の情報公開請求に対する文書の開示は2週間後だが、この宿泊施設の開示請求については中野区保健所の窓口の有能な若い人が、請求人が待っている間に15分くらいで文書を作って渡してくれていた。いちどだけ年配の職員が後ろから出張ってきて「そんなのは2週間待たせろ」と若い人に指示したことがあるそうだ。若い人は年配職員の指示にもかかわらず「お昼休みのあとで取りにきてください」と言ってその日のうちに渡してくれたという。
食品営業事業者の情報公開請求の例
この例では、情報公開請求は1件だが、1件の請求に食品営業事業者の許可約6000件が含まれるため、2019年12月、約174万円の事務手数料支払いを求められた。
2つめは東京都中野区。
— 渡邊 亮輔 (@watambo) December 17, 2019
例えば中野区が営業を許可している食品営業事業者は区内に約6000件あるのですが、1件請求するたびに300円かかるらしい。つまり、全部オープンにするのに約180万円かかる・・・!
という請求書が届いたのですが、ちょっと個人で払える額ではないので担当者と議論したいなと。 pic.twitter.com/9AIClH444F
事務手数料に関する審査請求
上記の食品営業事業者の情報公開で約174万円請求された人は、2020年1月、中野区に行政不服審査請求をした。
こちらの対応について、詳しい人に相談して、中野区に審査請求をすることにしました。
— 渡邊 亮輔 (@watambo) January 8, 2020
「審査請求」とは情報公開請求を受けて自治体の対応に不服を申し立てることができる手続きのことです。https://t.co/2pZtmW7c5B
まだどうなるかは分かりませんが、良い方向に進むといいなー。 https://t.co/i1b8pKo35Y pic.twitter.com/KdZi4JWyu1
ちなみに審査請求の趣旨は、ざっくり
— 渡邊 亮輔 (@watambo) January 8, 2020
・事業者の一覧を欲しいという請求を受けての開示なので、事業者ごとに300円ではなく一覧でまとめて300円が適切
・情報公開制度はみんなが知りたいことを知るためのものなのに高すぎたら使えないよね
・国も隣の自治体も中野区みたいなことしてないよ
というもの。
審査請求却下(手数料は174万円→300円に減額)
2021年8月、中野区は審査請求を却下した。却下の理由は、審査請求が申し立てられた後で中野区が約174万円の手数料請求を取り消して新たに300円を請求したから。はい?
2021年10月に区議会に報告した際の資料 - 審査請求の却下について
議事録↓
事務手数料に関する情報公開請求
2021年10月、上記の手数料減額と審査請求却下の経緯がわかる文書を区民が情報公開請求した。
これは許認可関係ではないので手数料は不要だが2週間かかる。この場合はさらに延長ののち、12月に開示決定が出た。
延長→決定通知書(保健所).pdf - Google ドライブ
相変わらず回議書しか公開されんな
〈公開された文書その1〉手数料を約174万円とした回議書 - 保健所1.pdf - Google ドライブ
〈その2〉手数料を300円に減額した回議書 - 保健所2.pdf - Google ドライブ
〈その3〉審査請求却下の回議書 - 総務課開示文書.pdf - Google ドライブ
事務手数料廃止方針を公表
中野区は2022年1月、情報公開請求の事務手数料を2022年度から廃止する方針を区議会に報告した。条例改正案を2-3月の区議会定例会に提出する予定。
2022/1/24中野区議会総務委員会資料 - 区政情報の公開に伴う事務手数料見直しの考え方について
議事録の一部↓
推測だが: 許認可権限移管も事務手数料廃止に関係?
中野区は情報公開の事務手数料廃止の理由にオープンデータの方針などを挙げている。ところが一方で、議事録をみると今回問題になった食品の届け以外の対象データのオープンデータ化を特に急いでいるようには見えない。
これは推測だが、2022年度から子ども施設関係の許認可権限が一部東京都から中野区に移管されることも、関係しているのではなかろうか。
現状、件の手数料を徴収しているのは「健康福祉部生活衛生課で取り扱っている許可等のみ」だ。
2022年度から中野区は児童相談所設置市となり、認定こども園の認可認定、認可保育所の認可の権限などが都から中野区に移管される。すると健康福祉部に加え子ども教育部も許認可関係の情報公開を扱うことになり、関係する部署が増えるのではないか。もしかしたらそのことも情報公開事務手数料が見直された理由の一つだったのではないかと思う。
2021/12/1中野区議会子ども文教委員会
— 中野非公式通信 🌻🕊 (@nakanocitizens) February 1, 2022
認定こども園の認可認定、認可保育所の認可の権限が2022年度に東京都から中野区に移るという話。
資料 - https://t.co/miKM9KbRWN pic.twitter.com/Xdll8PGFdq
(参考)
— 中野非公式通信 🌻🕊 (@nakanocitizens) February 4, 2022
2021/10/6中野区議会子ども文教委員会資料
〈児童相談所の設置に伴い児童相談所設置市が行うこととなる事務(以下「設置市事務」という。)について、庁内で検討、準備を進めている。都から移管される設置市事務は次 のとおり〉p2-4https://t.co/eL6XUUVhld
追記: 2022/3/25事務手数料廃止可決
2022年3月25日、中野区議会は情報公開事務手数料の廃止を可決した。
第14号議案 中野区区政情報の公開に関する条例の一部を改正する条例
(中野非公式通信)& (く)
中野区関連の情報公開請求まとめ。