建物の建て替え後に再開するといって2016年に休館した銀行図書館がいつの間にか閉館して、全銀協会員しか利用できない「資料室」になっていた。びっくり。2022/9/6記
銀行図書館に関するレファ協のデータ (2022年7月まで)
「銀行図書館」という名の図書館がかつて東京都千代田区に存在したことは、レファレンス協同データベース(レファ協)にその痕跡がある。
ここでレファ協というのは、「国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している、調べ物のためのデータベース」のことだ(レファ協公式ホームページより)。
「銀行図書館」について、2022年7月までレファ協に書いてあった説明は次の通り(インターネットアーカイブより)。
銀行名 一般社団法人全国銀行協会銀行図書館 / 銀行図書館
開館情報 ビル建て替えに伴い、平成28年4月1日から休館しております。休館期間は、建て替え完了までの4~5年間を予定しております。
休館中は、レファレンスや複写サービス等、すべての対外サービスを休止いたします。
再開につきましては、詳細が決まり次第、WEBサイト等でお知らせいたします。
沿革 銀行図書館は、明治30年(1897) 1月20日、東京銀行集会所内に「経済文庫」として開設されました。第2次大戦後、東京銀行集会所が東京銀行協会へと改組されたことにともない、経済文庫もこれに引き継がれましたが、終戦直後からしばらくの間、銀行集会所の建物が連合軍(GHQ)に接収されていたため、この間、経済文庫は事実上閉鎖されていました。
昭和35年7月にようやく再開され、さらに昭和40年12月には銀行会館の新築落成にともなってこれに移転し、什器・設備等を拡充のうえ、41年9月には名前も「銀行図書館」と改め再発足しました。
平成23年4月に、団体名が「東京銀行協会」から「全国銀行協会」へと変更されました。
特色 明治以降の経済・金融関係基本図書および統計書をはじめ、社員銀行その他金融機関の各種刊行物、銀行行史、海外の銀行協会・中央銀行・金融機関の刊行物などを主に収集しています。
これらの蔵書のうちおよそ2万冊は経済文庫時代に収集されたもので、今日では入手が困難と思われる貴重な資料も数多く含まれています。当図書館では>戦前に刊行された図書資料を一括して「経済文庫」と名づけています。
上は、2022年7月6日閲覧の2016年4月1日(休館したとき)最終更新のデータだ。
全銀協への照会と回答
レファ協のデータに記された「ビル建て替え」は済んでおり、全国銀行協会は2021年2月に新ビルに移転完了している。
銀行図書館はいつ再開するのか、私たちの仲間がメールで問い合わせたところ、2022年8月1日に次のような返事がきた。
ビル建て替えを機に、その在り方を見直すこととなり、現在は規模を縮小し、全銀協会員向けの資料室として運営しております。(中略)以前のように広く一般公開する形でご利用いただくことができなくなりました。
レファ協の更新されたデータ (2022年8月1日)
メールが送られてきたのと同じ8月1日に、レファ協のデータも次のように更新された。
銀行図書館はどんな図書館だったか
1897年という古いルーツをもつ銀行図書館は専門図書館(公益法人)で、2004年3月にレファ協に登録された。2006年6月からOPAC(オンライン蔵書目録)がインターネットで一般公開されており、遠隔複写にも対応していて、レファレンスサービスも行っていた。
レファ協で公開されている事例を検索すると、かつて銀行図書館が行っていたレファレンスサービスの記録が残っている。
from:crd_tweet 銀行図書館 - Twitter Search / Twitter
2016年に休館するまでは、そういう由緒あるちゃんとした専門図書館だったのに、どうして廃止してしまったのだろうか。現在は銀行図書館(全銀協資料室)のホームページはなくなり、OPACにもアクセスできなくなって、どんな資料があるかすら外部からはわからなくなった。
全銀協の会員は銀行なので、銀行員ならOPACや「入手が困難と思われる貴重な資料も数多く含まれ」る資料は、利用できるのだろうか。
日銀発行の資料とかでも国会図書館にないものが結構あって、各地の大学図書館などに参照に行くのが大変だから、銀行図書館を再開してほしかったのだが……。
どんな資料があったか
銀行図書館の蔵書目録上下巻は国会図書館に紙の本の所蔵があり、そこに記されている資料はまだ全銀協資料室にある可能性がある。戦前図書の目録 (上巻) についてはNDLオンラインの個人送信でも参照できる(要ログイン)。
銀行図書館蔵書目録. 上巻 (戦前図書の部(昭和42年末現在)) - 国立国会図書館デジタルコレクション
下巻については国会図書館のデジタルデータは館内限定だが、Google Books で探すと全文検索できるものもある。それで見ると例えば『金融史談速記録』という日銀OBの回顧録のシリーズは国会図書館でさえ全てを所蔵していない(日銀が一部の巻しか納本しなかったようで中には著者自ら寄贈した本もある)が、銀行図書館には蔵書目録刊行時に出版されていた巻が全て揃っていた。
探訪記
探訪記 銀行図書館
2003年12月の探訪記。銀行図書館内部の写真がある。国立国会図書館『参考書誌研究 』(2004年3月発行)掲載。図書館だより: 社団法人東京銀行協会銀行図書館 見学会
東弁・二弁合同図書館が2007年10月に開催した見学会の記録。LIBRA Vol.7 No.12 2007/12, p.34.
(中野非公式通信) & (く)