東京都中野区が文化財保護審議会の傍聴を拒否したことに異議を唱えた訴訟は、最高裁に上告しました。2022年8月の区議会で議員から区に結構質問がありました。中野区がどーしても傍聴は許可しない、議事録も公開しない、検討する気もないと繰り返すので、さすがに議員たちも奇異に思った様子でした。2022/10/31記(敬称略)
2022年11月、上告棄却。中野区は12月に区議会に報告、文化財保護審議会の公開を検討すると表明し「速やかには決定していきたい」と述べました。しかし半年以上経っても未だに検討が開始された形跡なし。どーいうことでしょう。2023/7/28追記
付記: 他区の文化財保護審議会の公開状況(情報公開請求)。
2023年10月、中野区は審議会の一部公開を決定しました。2023/10/18追記
これまでの経緯
旧中野刑務所正門(中野区文化財: 旧豊多摩監獄表門) の取り扱いを協議した中野区文化財保護審議会の傍聴を、中野区がかたくなに拒否した経緯については下記「文化財保護審議会」カテゴリーの各記事を参照。
Entries in 文化財保護審議会 category - 中野非公式リポート
(2020年〜)行政不服審査請求、門前払い
(2021年〜)東京地裁に提訴、棄却
(2022年)東京高裁に控訴、棄却
最高裁に上告
2022年6月、最高裁に上告。
上告状兼上告受理申立書
上告理由書
上告受理申立て理由書
2022年10月現在審理中。
区議会で質問相次ぐ
上告すれば議員も興味持つみたい
上に貼ったブログを見るとわかる通り、提訴と控訴のときは区議会でほとんど質問なし。自民高橋ちあきに至っては「もういいよ、これ」とか暴言を吐く始末。
今回は結構質問が出た。なのでまあちょっと議員を見直した。でも上告までしないと区民が区を訴えた訴訟に議員が留意してくれないのは、ハードル高いよね。行政の情報公開に関することなんで、議員だって関心あってもいいんじゃないかな。
区民委員会の資料と会議録
2022年8月24日、中野区議会区民委員会でこの件の上告が報告された。
傍聴はコロナの関係で最近していない。中野区だけじゃなく中野区議会も今どき信じられないほど情報公開が遅れていて閉鎖的で、本会議と予算、決算特別委員会はものすごく日が経って録画を公開するのを「議会中継」と自称してて片腹痛いし、その他の委員会は一切動画が公開されない。
おまけに傍聴人の録音や撮影は禁止されている。数年前まではたとえ申請しても許可されることはなかった。
2カ月後の10月25日、会議録👇が区議会ホームページで公開された。主なやり取りを下に示す。
区民委員会主なやり取り
傍聴不可、議事録も非公開
大内しんご(自民): 中野区文化財保護審議会というのは、そもそも傍聴ができない。議事録は読むことができるのか。できないのはなぜ。
矢澤文化国際交流担当課長: 公正かつ適正な意思決定がそがれる、そういったことを理由としてこれまで非公開としている。議事録も非公開。
今後も非公開
小宮山たかし(無所属): 密室で非公開で会議をやったほうが、中で何をやっているか、本当に正しいことが議論されているのか分からない。非公開にすべきではない。
矢澤: 例えば文化財の登録とか指定とかを文化財保護審議会で審議するに当たって、所有者の話も絡んでくる。所有者の私権に係る部分もあるので、公正かつ適切な意思決定がそがれる。今後も非公開とする予定。
所管の問題
小宮山: 中野区文化財保護審議会は教育委員会が設置しているものだと思うが、今、区民委員会で報告がされている。教育委員会が設置したものが区民委員会で報告されているという所管の扱いはどうなっているのか。
矢澤: 我々、中野区教育委員会の補助執行ということで受けているのが今の位置付け。
検討する気もない
むとう有子(無所属): この訴えを提起に公開にしていくかというところを内部できちんと検討しては。
矢澤: 傍聴については非公開ということにしている。
むとう: 全国レベルの調査もしつつ、中野区でももう一回検討してはいかがか。
矢澤: 他自治体の情報については調査しているところ。現時点の状況でしか今答えられない。
むとう: 最高裁まで上告している区民の思いを受け止めて、今後は在り方としてどうすべきかというところを検討したっていいのでは。
矢澤: 本日議会でもこういった意見が出たことをしっかり受け止めつつ、他自治体の動向等も今後も調査研究してまいりたい。
全て非公開
南かつひこ(公明): 中野区文化財保護審議会は何をするところか。それすら非公開か。
矢澤: 例えば中野区の文化財の登録指定とか、直近でいうと旧中野刑務所正門の区文化財指定、あるいはその前段階となる旧中野刑務所正門の文化的価値を答申したりとかを現時点の役割として行っている。
南: こういったことを審議するとか、審議したとかということは公開できるのか。
矢澤: 議題や議事録の中身は全て非公開。
哲学堂の検討会も非公開に
来住和行(共産): 今後、哲学堂の検討会も発足する。公開するか、非公開にするか、何を基に定まっているのか。
矢澤: 例えば哲学堂公園の保存活用計画に関する検討委員会については、あくまで内部の意思決定で公開するのか、非公開にするのか決めている。
来住: 哲学堂の検討会は内部的なものなので非公開と区として決めているんですね。基本的には公開という前提に、審議会、検討会については、行うべきではないか。
矢澤: 今いただいた御意見を基に、今後、他自治体の事例も研究しながらやっていきたいなと。
(立憲の議員は質問なし。あとまあ、議会で聞いてもそうなんだけどさ、こうやって文字になってるのを読むと、議員を舐めくさってるよね。きっと出世するんじゃないでしょうか)
2022年11月追記: 総務委は質問なし
2022年8月31日、中野区議会総務委員会でも同様の報告があり、11月7日に会議録が公開された。
総務委では議員の質問はなかった。
2023年7月追記: 上告棄却
この最高裁への訴えは理由不備として上告審として受理されず、最高裁は2022年11月22日付で上告棄却を決定した。下記決定書参照。
区議会で報告
2022年12月1日、中野区は区議会区民委員会で上告棄却を報告した。
公開検討と速やかな決定を表明
報告に続く議員との質疑で、矢澤課長は文化財保護審議会の公開を検討し、速やかに決定したいと表明した。
今回の裁判の決定を受けて、区としましては、この文化財保護審議会の公開の在り方というんですかね、全部公開とするのか、あるいは一部公開とするのか、そもそもその審議対象を絞った形で例えば公開すると、そういったことも含めて、他の自治体の動向も見ながら教育委員会に働きかけつつ、我々としましては検討していきたいというふうに思っております。(矢澤文化国際交流担当課長)
なるべく速やかには決定していきたいと思います。(同)
区民委員会の議員の皆さま、公開と速やかな検討を区に呼びかけてくださってありがとうございました🙏
表明から半年以上経った2023年7月現在、未だ検討開始の形跡なし
これから教育委員会に働きかけながら、公開の在り方については検討していきたいというふうに思っております。(矢澤課長)
中野区文化財保護審議会は中野区教育委員会の附属機関だ。矢澤課長は、公開の検討は中野区教育委員会で行われることになると認めたが、半年以上経った2023年7月現在、文化財保護審議会の公開について教委が議題にした形跡はない。いつするんだろうか。
付記: 他区の公開状況(情報公開請求)
2022年12月1日中野区議会区民委員会での矢澤課長の答弁によると、中野区が調査できたうち、東京23区で文化財保護審議会を公開している区は5区、非公開は11区、一部公開は5区。
他区の公開状況に関していえば、私たちは2022年8月の同委員会で矢澤課長が「他自治体の状況等も今後も調査研究してまいりたい」と発言したことを受け、調査研究の内容または実施していることがわかる文書を10月31日に中野区に情報公開請求していた。12月1日に公開された。
この調査が矢澤課長の同日の答弁の根拠と思われる。公開された文書4本を下に貼る。
02_各区からの回答調査票(20区分).pdf - Google ドライブ
03_特別区23区 文化財保護審議会 公開状況一覧.pdf - Google ドライブ
2023年10月追記: 審議会の一部公開を決定
2023年10月11日、中野区は文化財保護審議会を一部公開することを区議会に報告した。報告資料の抜粋は次の通り。
〈中野区文化財保護審議会(以下「審議会」という。)については、これまで非公開により運営してきたところであるが、以下のとおり、公開として運営していく〉
〈審議会における案件は、審議案件と報告案件に分別されるが、審議案件については原則非公開とし、報告案件については原則公開する〉
議事録は〈非公開部分を除き、区ホームページで公開する〉
2023年度第2回審議会(2024年3月頃開催予定)から運用を開始する。
(中野非公式通信) & (く)