桜山公園の事故について黒塗りが剥がれた文書が開示されました(不服審査請求、2023年3月)

桜山公園事故続報〉

2021年2月に中野区立桜山公園改修工事で起きた死亡事故について中野区に情報公開請求をしたところ、ほとんど黒塗りのいわゆる「のり弁」が公開されていた。黒塗りを剥がすべく行政不服審査請求をした結果、主張が認められ、黒塗りの剥がれた文書が開示されたので報告する。

今回、黒塗りが剥がされてみると、事故の直接の原因は前日の降雨などによって公園のトイレ設置のため曳家注1)中に地盤が崩れたこととみられているが、背景に元請の住友林業緑化株式会社と下請孫請との間の確認・連携不十分があった旨の分析がされていた。

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前回隠されていたのは、個人名などを除けば犯罪捜査に関する情報だったはずなのだが、今回黒塗りが剥がれた部分には、原因や分析だけでなく捜査とあまり関係なさそうな内容が多々あった。その中には、単なる大まかな状況や資料、単に警察が捜査しているという事実、それにすでに現場の掲示として公開されている1次下請と2次下請(孫請)の社名までもが含まれていた。2023/3/17記

黒塗りが剥がされた

不服審査請求の裁決までの経緯

不服審査請求の答申・裁決までのことは別記事👇に書いた。

今回、犯罪捜査に関する情報が開示

裁決に基づき、2023年2月24日付で区政情報一部公開決定が出た。3月に開示された。前回開示(2022年2月7日)の際「犯罪捜査に関する情報」としてのり弁になっていた部分が、新たに公開されたことになる。

区政情報一部公開決定通知書

開示された資料を下の表に示した。左列は今回公開されたものであり、のり弁から変化がある場合に、右列にのり弁へのリンクがある。

開示文書と隠されていた情報

上で表にした開示文書の概要と、前回開示時に黒塗りで隠されていた情報が何だったのかを以下に記す。

一報、事故報告書など

2021/2/16付: リスク管理・危機管理情報連絡票(第1報)

死亡事故当日に中野区公園緑地課(当時)が作成した「発生日 令和3年2月16日(火)16時27分頃」等とある部内向けの第一報。

この文書は前回の開示で「発生事態」「対応」の部分 が黒塗りだった。今回、黒塗りが剥がされて「曳家中トイレが傾き(作業員56歳)が挟まれた」「病院に搬送」「17:30区の監督員、監理技術者、現場代理人、作業員2人が現場で事情聴取」などと記載されていた。しかしこれは単なる大まかな状況説明ではないのだろうか。犯罪捜査に関する情報というほどとも思えないがなぜ隠したのか。

また連絡票に添付された書類のうち前回は、ユニットトイレ(桜山公園)の「施工フロー図 留意事項」の全部が黒塗りだったが、今回、施工手順と安全上などの注意事項が書いてあった。「曳家工事施工イメージ図」の全部も黒塗りだったところは、施工方法の図解だった。しかしこれらは単なる資料ではないのだろうか。

添付書類中の「事態報告書」の主要部分が黒塗りだった箇所には、事故状況として事故当時の経過が時系列で記されていたほかに、1次下請のトーヨーマテラン株式会社(屋外ユニットトイレなどの会社、愛知県春日井市)の名と、2次下請の有限会社五代目源右エ門(死亡した作業員が所属していた曳家会社、同県春日井市/犬山市)の社名が隠されていた。

下請孫請の社名がどうやったら捜査に関する情報として秘匿されるのか? 現場の工事フェンス外側の誰でも見ることができる場所に掲示してあった、公開情報だというのに。

桜山公園工事フェンスの施工体系図に書かれたトーヨーマテランと源右エ門の社名(画像を一部加工)。2021/6/21撮影

2/17付: 事故報告書

事故翌日に元請の住友林業緑化が中野区に提出した事故報告書。前回隠されていた「事故発生の原因及び経過」の部分には「二次下請けの作業員一人が巻き込まれ挟まれた」などと大まかな状況が記載されていた。

なお、この文書の前回開示で元請の住友林業緑化の社名の右に黒塗り部分があり、そこにも1次下請トーヨーマテランと2次下請五代目源右エ門の社名が隠されていた。

2/17付: 協議書「工事一時中止について」

「事故発生時の現場の状況」が黒塗りだったところには、捜査に関係あるというには無理があるだろうというくらいの簡単な説明があった。

2/17付: 承諾書「江原公園・桜山公園についての一切の工事一時中止」

前回、個人名を除き公開されており今回変化なし。前回開示については下記記事👇参照。

2/17付: 工事現況報告書について(2回目)

「事故発生時の現場の状況」が黒塗りだったところに簡単な説明。

2/17付: 公園ユニバーサルデザイン改修工事に関する工事中止書について

黒塗りと今回公開部分は2/17付事故報告書と同様。

2/26付: 公園ユニバーサルデザイン改修工事の工期延伸に係る契約変更の締結依頼について

経緯の一部が黒塗りだったところには「令和3年2月25日 警察による現場調査中」と書いてあった。これを捜査関連情報として黒塗りにするのは考えすぎではないのか。

3/19付: 桜山公園事故発生原因と再発防止対策についての報告書

区発注の工事で死亡事故が起きるのは重大な事態だと思うのだが、中野区はこの、せっかくまとめた詳細な分析と再発防止策を区議会に報告していない。

表紙~1章「評価結果に基づく問題点の抽出と分析」

前回開示で、事故の原因と分析は黒塗りだった。今回、黒塗りが剥がされた箇所には、前日の降雨などによって曳家中に地盤が崩れたことが事故の直接原因とみられると分析がされていた。また支障木は「剪定すればどうにでもなるという安易な考えがあった」と、いかにも中野区の公園工事らしい記述注2)もあった。トーヨーマテランが1月21日に曳家業者の変更を住友林業緑化に伝えてきていたこともわかった。

2) 住友林業緑化は中野区の政治問題化した平和の森公園「再整備」工事の元請のひとつだった

剥がされた黒塗り部分では、「(元請担当者に)曳家工事に関しての知識・経験がなかった」「工事担当者が作業詳細を理解していないまま作業をさせた」「本件作業について知識・経験がなく施工管理、安全管理を下請業者に任せていた」「再三指導してきたが、1次業者のいままでの対応が不十分」「作業員が工事担当者に相談せずより安全側へと考え勝手に変更」「降雨後の作業環境の確認不足」など、確認の不徹底や元請下請孫請間の連携不十分が、事故の背景としてあったことが指摘されていた。

2章「事故詳細」

曳家工事と事故の詳細な図解と写真。前回開示は、図解全部と一部の写真と撮影時刻などの写真説明が黒塗りだった。今回、図解は画面の一部分を除き公開された。写真は、人が写っていると思われる画面の一部分を除いて、事故直後を含む画像と写真説明の黒塗りが剥がされた。

中野区が開示した桜山公園死亡事故直後の写真。曳家に用いた井桁が折れている

3章「事故までの経緯と評価」

前回は全て黒塗りだった。今回公開されたのをみると、事故に至る詳細な経緯の1項目ごとに、対応が適切だったかどうか評価がつけてある。

4章「事故報告書」

2/17付事故報告書と同様の情報など。前回ほぼ黒塗りだったが個人情報を除き公開。なお「労働者死傷病報告」に個人名が残っていたのでこちらで隠した(グレーでマスクした部分)。

5-8章「残工事の図面」「工程表」「仮設計画」「工事再開後の体制」

 前回、個人名を除き公開されており今回変化なし。前回開示の記事(再掲)👇。

最終報など

3/24付: 公園ユニバーサルデザイン改修工事に関する工事中止解除書について

黒塗りと今回公開部分は2/17付協議書「工事一時中止について」と同様。

4/15付: リスク管理・危機管理情報連絡票(最終報)

事故の総括的な最終報告。3/19付「桜山公園事故発生原因と再発防止対策についての報告書」のダイジェストを含む。従って黒塗りが剥がれた箇所の記載も報告書など過去の文書と同様。特記事項として「警察による原因究明は現在も行われている」と、これまた捜査に関する情報とするのは考えすぎじゃないかという記述があった。何でも隠しとけばいいと思ってないか。

(中野非公式通信) & (く)