中野刑務所「十字舎房」(十字房舎)の遺構が発掘されたそうです (東京都中野区文化財保護審議会、2024年8月)

東京都中野区文化財保護審議会は2024年8月22日、公開が始まってから2回目の会議を中野区役所新庁舎で開いた。今回も傍聴メモをもとに概略を記す。

旧中野刑務所正門の曳家(移築)を前にした調査で、治安維持法下に悪名高い予防拘禁所が設置され、建築界から惜しまれつつ1983年に解体された同刑務所「十字舎房」(十字房舎)の基礎部分と思われる遺構が発掘されたことが報告された。2024/8/30記

審議会概要

日時: 2024年8月22日(木)14時-15時15分ごろ
会場: 中野区役所1階 ミーティングルームA

内容は、中野区による報告が3件。

報告1: 旧中野刑務所正門周囲の遺構について
報告2: 区内文化財の取扱いについて進捗報告
報告3: 山崎家書院・茶室について

各報告の資料は審議会のウェブページに掲載されしだい貼る。

報告1: 旧中野刑務所正門周囲の遺構について

中野区担当者によると、旧中野刑務所正門(中野区指定文化財: 旧豊多摩監獄表門、東京都中野区新井3丁目)の移築を前に、2024年2月末まで曳家経路を掘削する本格調査を行い、十字舎房の南東角の基礎部分と思われる遺構を確認した。上敷免製のレンガ(参考)が確認された。

今回の発見について区は「別立て」で報告書をつくる方針ということだ。

思想犯など多くの囚人を収監し、治安維持法下に予防拘禁所が設置された十字舎房がどのような性質の建築だったか、1983年に中野刑務所が正門だけを残して解体された現場に通い見守った、詩人の佐々木幹郎が記している。

十字舎房は二階建ての煉瓦造で、廊下を挟んで、独房が向き合って並んでいる。建物を十字型にするということは、囚人たちを少人数で監視するのにもっとも適している。中央部分に監視所を設けておけば、東西南北の棟のすべてが見通せるのだ。
- 佐々木幹郎(2003)『やわらかく、壊れる:都市の滅び方について』みすず書房, p142

日本建築学会は1983年3月「旧中野刑務所正門の保存に関する要望書」を文化庁長官に提出しているが、さらに同年7月、十字舎房の保存に関して別途要望書を出した。そのように重要な建築だった。

解体前の十字舎房の写真は、中野区(1984)『中野のまちと刑務所:中野刑務所発祥から水と森の公園まで』という資料に掲載されている。

『中野のまちと刑務所』巻頭の中野刑務所航空写真より関係部分を拡大。画面中央に十字舎房、右下に正門

追記: 2024年10月中野区が十字舎房遺構発見をウェブサイトでお知らせ。

(追記ここまで)

報告2: 区内文化財の取扱いについて進捗報告

前回審議会で言及された、未登録文化財の取扱いのその後の検討に関し報告があった。広義の文化財「人々のくらしの中で育まれ伝えられてきた歴史的文化的価値のあるもの」について、今後情報の精査と収集をし、既存の紙データを電子データへ変換、情報をアップデート、区民から情報を募る仕組みを構築・活用・周知する、という方針が区の担当者により明らかにされた。

内田委員🐘が「どの程度、何年後までに、とか目安があった方がいい。(方針を)紙に書いて終わりになる場合が多い。予算なども予め押さえておかないと。たとえば建物は急に壊される。お金も時間もなくて調査できないということがしょっちゅう起きる」と述べるなど、「抽象的にすぎる方針(松原委員)」をどのように具体化するかまで踏み込むことを促す発言が相次いだ。大石会長は「この報告を区の決意表明とみなすので、頑張って成果を残してほしい」と激励した。

報告3: 山崎家書院・茶室について

中野区立歴史民俗資料館(中野区江古田4丁目)の敷地内に残る山崎家書院・茶室を、今後、中野区の登録文化財に指定する方針が報告された。

山崎家は農業のかたわら質屋の営業、のちに醤油醸造にも進出し、江戸近郊でも有力な富家となりました。また、江古田村丸山組の名主や、明治維新後には官選の名主、戸長を経て東京府会議員、野方村長などをつとめました。(中略)茶室・書院の建物は天保12年(1841)に建てられ、中野筋の鷹場であった当地に幕府役人が来た際、ここに立ち寄ったといわれています。
- 中野区HPより

委員からは、40年前に調査したきりその後の改築については図面すらないことから、もういちどきちんと調査することと、庭や土蔵、洋風建築も含めて文化財指定することを検討するよう要望があった。

前回は非公開の議事があったが、今回は「議決事項がないため(大石会長)」全て公開だった。次回審議会は11月中旬から12月初旬。

(この項10/8追記)資料と議事要旨公開

8/22審議会の資料と議事要旨が中野区文化財保護審議会のウェブサイトで公開されました(注: 下のリンクは2025/4/17「表示できません」となった。新たなリンクは下の方に貼ってある)。

資料: https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kaigi/fuzokukikan/0686168720231201152427690.files/R6-1_shiryou.pdf

議事要旨: https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/kusei/kaigi/fuzokukikan/0686168720231201152427690.files/R6-1_gijiyoushi.pdf

(2025/4/22追記)

上に貼った「資料」と「議事要旨」のリンクは、2025/4/17更新の審議会ウェブサイトで「お探しのページは表示できません」となった。代わりに「議事要旨・当日資料」が公開された。

議事要旨・当日資料

(追記ここまで)

今回の会場、経緯など

今回会場の中野区役所新庁舎はJR中野駅北側にあり、前回会場のれきみんよりアクセスは便利だ。新庁舎の会議室は廊下との間がガラス張りで、いかにも透明性の高い議論ができそうなつくりだった。

区議会、教育委員会、各種審議会など、公開されている中野区の会議は、いずれも最初に区職員が説明し、メンバーが意見や要望などを述べて質疑する形式となっている。これまで非公開で前回からようやく傍聴が可能になった中野区文化財保護審議会は、錚々たる専門家の集まりであるから議論の的確さは群を抜いている。

(中野区HPより。2024/8/30閲覧)

参考1: 公開までの経緯

参考2: 前回審議会の概要

(中野非公式通信) & (く)