旧中野刑務所正門を公園で常時公開する計画に中野区文化財保護審議会委員が懸念(2025/11/20傍聴)(2026/3/26審議会を追記)

旧中野刑務所正門(中野区指定文化財: 旧豊多摩監獄表門、東京都中野区新井)を区立公園で常時公開する中野区の計画について、中野区文化財保護審議会の委員らが文化財の汚損を懸念し対策を求めた。正門は元の位置から112メートル西に曳家で移築されており、修復工事などを経て2028年5月の公開が予定されている。2025/11/21記

その次の審議会は2026/3/26に開かれた。このブログの下に追記する。2026/5/8追記

委員再任

中野区文化財保護審議会は2025年11月20日14時から中野区立歴史民俗資料館で開かれた。6人の委員全員が再任され、委嘱式が行われた。任期2年。大石会長、仲町副会長も続投。大石会長から、いまは博物館でも人がたくさん入って稼げることが文化よりも重視* される傾向があり、どうしたらいいかを審議会としても考えていかないといけない、と就任の挨拶があった。

(2025/10/10中野区議会区民委員会に委嘱が報告された際の資料より)

* 具体的にどういうことを指すのか明らかにされなかったが、東京国立博物館の池を撤去する改修案を念頭に置いた発言かもしれないと聞いていて思った。

旧中野刑務所正門

曳家と見学会

2025年7月28日から8月5日まで行われた正門の曳家と、計286人が参加した曳家の一般見学会について中野区が報告した。

大石会長は、正門保存の動きが「"壊してしまえ" から始まった」ことに言及、見学会に反対派は来なかったのかと尋ねた。区側は「基本的に好意的な反応が多かった」、アンケートの答えも大変良いと良いが多かった、と述べた。

旧中野刑務所正門の曳家。東京都中野区新井、2025/7/30見学会で撮影

曳家と見学会の報告は先月の区議会への報告と同様と思われるので、とりあえずその資料を貼る👇。

旧中野刑務所正門の曳家工事実施結果等について

見学会には私たちも参加して下記記事を公開した。この記事にも書いたが、曳家の見学会が実現したのは、中野区文化財保護審議会の委員が中野区に要望したおかげである。

常時公開に懸念

続いて区は「旧中野刑務所正門基本計画」(2022年4月)に基づく展示公開の方針を報告した。

旧中野刑務所正門基本計画・保存活用計画

正門の外観は常時公開、内部は申込制の限定公開との説明があった。内部というのは門の中央通路と東西の部屋のことで、西の部屋では常設展示、東の部屋では企画展や貸出スペースを考えているという。

これに対し松原委員から、文化財としての現状をキープするためには常時公開を続けていいのかとの懸念が表明され、大石会長もスプレーなどで汚損される心配を口にした。区側は防犯カメラを設置し内部は機械警備がされる旨の説明をしたが、大石会長は対策の検討を要請した。渡辺委員も、文化財をそのような形で展示している例や、それでどのような問題が生じているかなどを精査すべきとした。

正門の移築先は、中野区立平和の森公園に編入し、24時間出入り自由とする計画になっている。

(確かに現状の平和の森公園は常時出入自由だが、近隣住民の要望により区立公園であっても夜間施錠となった例があり、後述の哲学堂公園も昼間だけ開園している。平和の森公園の旧中野刑務所正門があるエリアだけこのような運用にするなど、対策を講じる余地はありそうだと傍聴していて私も思った。)

「移設(曳家)後の配置イメージ」(「旧中野刑務所正門保存活用計画」より)。茶色の部分が平和の森公園の一部になる

今後の予定抜粋。

時期 予定
2025年11月末 移築工事の完了
2025年度-2027年度 正門の活用に関する検討
2026年度-2027年度 正門内部展示設計、製作施工
2027年2月 修復工事の完了
7月末 記録・保存業務の完了
2028年5月 正門の公開開始

なお正門は、1915年に竣工した豊多摩監獄の時の姿ではなく、関東大震災復旧以降の豊多摩刑務所時代の姿が再現、公開されることになっている。したがって震災復旧以降のものである半円形アーチ窓の受付は撤去されないし、同じく両脇の鉄柵は復元される。鉄柵に嵌まっていた鉄扉は現物を創価学会が保管しているが、それは元に戻すのかそれとも新しく作るのだろうか。

2025年5月に私たちが発行した冊子『戸田城聖は豊多摩刑務所(中野刑務所)を出獄したか』👇で、旧中野刑務所正門の半円形アーチ窓と鉄柵の設置時期を考察している。内容を確認したい方は中野区立中央図書館で閲覧できます。

哲学堂公園

名勝(国指定有形文化財)である中野区立哲学堂公園(中野区松が丘)は修復工事が進められている。

創設者の井上円了が哲学の思想を表現した「七十七場」のうち現存しない「讃仰軒」は、現位置での建て替えが予定されている公園管理棟付近にあった。もし管理棟解体や地下室新築に伴って讃仰軒の遺構が見つかれば、建て替え工事そのものが中止となり別の場所に計画からやり直すしかないという。委員からは「それは見つかってほしいですね」という発言があった。ただし見つかったものが讃仰軒より古い、たとえば弥生時代のものとかの場合には、名勝指定とは関係がないということで記録保存だけで充分となるらしい。

また区によると田中前区長の時代に行われた哲学堂公園の所謂「平成ルネッサンス修理」については図面など詳細な資料が残っていなくて困っているそうだ。

その他

山崎家書院・茶室 - 2025年6月学術調査開始。来年度から文化財指定審議、その翌年度から修復実施設計などの見通し。

三岸家住宅アトリエ(国登録有形文化財) - 同10月住宅遺産トラストを通じて所有者が変わり、改修計画を文化庁に報告。

区内文化財調査(山崎委員が質問) - 確認を進めている。

次回審議会 - 2026年3月を予定。

審議会終了後、中野区職員が委員に歴史民俗資料館で開催中の「旧豊多摩監獄表門関連展示2025」を案内した。

2026/1/9追記: 議事要旨・当日資料

2025/11/20中野区文化財保護審議会の議事要旨・当日資料が公表された。

令和7年度第1回議事要旨・当日資料

(2026/1/9追記ここまで)

2026/5/8追記: 2026/3/26審議会

その次の中野区文化財保護審議会は、2026/3/26(木)10:00中野区役所で開かれた。区ウェブサイトで審議会の予定が公表されたのは前日。もう少し早くお知らせしてもらいたい。

6人の委員のうち大石会長を含む4人がリモート参加だった上、担当職員の1人が中座して、なんか随分忙しいなか年度末押し迫って開かれた会議という感じだった。次回は「夏ごろ」という。

この日も正門剥き出しの保存に懸念

前回に引き続き、委員らから旧中野刑務所正門が「剥き出しの状態」で「皆さん自由に近づくことになる」ことについての懸念が表明された。しかし区側は相変わらず、門を守るための柵を設けることには否定的だった。

内田委員が「建物の利用展示計画は、できれば区民の要望も聞きながら考えてほしい」と発言した。また、正門敷地から建物の痕跡や塀の基礎などが見つかっているので「破棄するのではなく何らかのかたちで展示活用できると思う」と提案し、大石会長も同意見と述べた。

区は、展示の検討に関しては区民の意見を聞く機会を設けたいとした。建物の痕跡や塀の基礎を破棄しないかどうかは明言しなかった。

なお、2月に正門の移転先公園について住民向けの説明会とオープンハウスがあった。そこでも区は門のまわりに柵を設けることに否定的だった。なぜそんなに頑ななのだろうか。下記資料参照。

中野区立平和の森公園の拡張について

「修復の裏側」を展示

区が修復を進めていた、山崎家(旧江古田村名主)に伝わる雛人形について、区側から「修復の裏側を語り、メッセージ性のある展示をしたい。『文化財修復とは何か』というテーマで行いたい」との表明があった。これは区としては新しい試みと思われる。委員から評価する発言があった。

議事要旨・当日資料

2026/3/26審議会の議事要旨・当日資料は5月7日中野区ウェブサイトで公開された。

令和7年度第2回議事要旨・当日資料

(2026/5/8追記ここまで)

(中野非公式通信) & (く)