中野駅南の堀江邸西半分の跡地が公園に。再開発で撤去された桃園公園のかわり(2026/3/5住民説明会)

2026年度に作られる、JR中野駅南口近く(東京都中野区中野2丁目)の区立公園について、近隣住民説明会があったので聞きにいった。中野駅南口再開発で撤去された区立桃園公園の代わりで、名称も桃園公園となる見通し。

公園予定地は、封建時代の中野村で名主だった堀江家の末裔が大正時代以降住んでいた屋敷の西半分を区に寄贈した土地だ。公園予定地の隅にある、屋敷跡を示す石碑は、公園奥に移設され保存される予定。再開発で中野駅南口ロータリーから撤去された桃の木も公園内に移植される予定というが、仮移植されてる20本の木は現状ほぼ枯れているように見えるけど大丈夫だろうか。2026/3/7記。

説明会と今後の予定

近隣住民説明会は2026年3月5日19時から現地近くの中野区産業振興センターで開かれた。

現地近くの掲示板に貼られた説明会の案内。2026/2/21撮影

中野区と、中野駅南口再開発の主体のひとつである中野二丁目土地区画整理組合から、計6人が説明者として会場前方に並んだ。説明会にきた住民はちゃんと数えなかったが十数人だったと思う。確認できた限りでは区議会議員は1人。

参加者には15ページの説明資料が配られた。PDFを下に貼っておく。

説明資料PDF

今後は計画確定ののち近隣住民向け工事説明会を経て、2026年度中に公園建設、オープンの予定。公園は中野二丁目土地区画整理組合が建設し、完成後は区立公園として中野区の公園課が管理する。

再開発による移転

従前の中野区立桃園公園は、じゃぶじゃぶ池(幼児向けの水遊び施設)があり、複数の、園庭のない保育園の子たちのお散歩先の遊び場などとして、近隣の子どもたちに親しまれていたが、中野駅南口再開発に伴う道路拡幅のため2016年に閉鎖、その後撤去され「休園」の扱いになっている。

休園中の桃園公園が移転再オープンする形になるため、名前もまた中野区立桃園公園となる見通しだそうだ。

従前の桃園公園の写真と、新旧公園の位置関係は次の通り(説明会説明資料より)。


中野駅南口再開発(中野二丁目土地区画整理事業、中野二丁目地区第一種市街地再開発事業)は既に事業の終盤に近く、中野駅南口前に住友不動産のでかい高層ビル2棟(=賃貸タワマンとオフィスビル)が完成している(区議会に報告された事業概要)。この再開発については建築画報が1冊分を使って詳述しており、中野区立中央図書館などが所蔵しているから興味ある人は読むといいと思う(建築画報 MONOGRAPH ナカノサウステラ (2024年9月))。

公園の設備

公園の整備計画(案)は日本測地設計が設計。新しい公園には (1)近隣の子どもたちが楽しめる遊具 (2)再開発ビル側とのつながりを意識した座り場と犬の散歩 (3)再開発ビル側と中野区産業振興センターをつなぐ東西通路 (4)歴史を継承する堀江家屋敷跡の石碑と桃の木を移設 — という方針が掲げられている。


遊具

中野区によると従前の桃園公園は251.11 ㎡。遊具としては「砂場、すべり台、じゃぶじゃぶ池、動物の形をした置物」があった。建設予定の公園は約725 ㎡と従前の約3倍だが、北半分はほぼ通路だ。設置予定遊具は「ミスト、築山、鉄棒、クッションマット」。

じゃぶじゃぶ池は中野区が誇っていい子育て施設だが、今後はもう作らないようだ。せめてミストではなく何らかの水遊びができる施設にすればいいのに、そうしない理由について中野区職員が説明会で、コストと着替えスペースが取れないことを挙げていた。

公園の遊具その他については2025年に近隣の子どもなどの意見を聞いており、概要が区議会で報告されている(区議会説明資料)。

犬の散歩

公園整備計画(案)方針(3)で、再開発ビル側とのつながりにわざわざ言及して「犬の散歩」を掲げているのは、タワマン住人が犬を散歩させる公園、という意味だろうか。

再開発区域に作られる公園は、公共施設ではあるけれど、一般に、再開発マンションの不動産価値を高めるのに資する。中野駅南口すみふのタワマン住人は、新しい公園の主たる用途を、犬の散歩スペースと認識するのではないか。大して広くもない公園で、子どもの貴重な遊び場所としての利用とぶつかることはないのだろうか。例えば通路や子どもの遊び場所の草地広場が犬の糞尿で汚れる、最悪の場合は子どもが犬に噛まれる、などは杞憂だろうか。私は猫派で犬を信用していない。

東西通路

東西通路は、公園建設前の2025年夏から通行が可能になっている。隣接地の住民らによると、以来たばこやゴミのポイ捨て、敷地内への投げ入れ、そして騒音、バイクの違法駐車などに悩まされているという。公園建設にあたりそれらの問題の対策を求める声が相次いだ。中野区担当者から「今日出た意見を、具体的に設計に反映できるものについてはする」と発言があった。

また、公園の敷地が周辺より高く盛土されている問題も複数の周辺住民らから指摘があった。公園の木や境界のフェンスについても関心が高かった。

東西通路。画面奥はすみふの賃貸タワマン。東京都中野区中野2、2025/7/6撮影

たばこについては再開発された中野駅南口周辺に喫煙所がないため、喫煙者があまり人目につかないこの場所まで吸いにきて吸い殻やゴミを放置して帰ると思われる。私たちの仲間のひとりは、この通路の途中にある堀江家屋敷跡石碑の前を1日2-3回通るが、大抵吸い殻や空缶などが捨ててあるため掃除している。

ゲニウス・ロキ

「歴史を継承」というのも実は再開発の不動産デベロッパーくさい発想で、不動産業者は土地の歴史をゲニウス・ロキと称し、不動産の価値を高めるのに利用する。

ゲニウス・ロキとは|不動産用語集|三井住友トラスト不動産:三井住友トラストグループ

すみふの賃貸タワマンのすぐ横に土地の歴史を紹介した説明板が置かれているのも、ゲニウス・ロキを利用して不動産価値を煽る意図ではないかと思っている。

すみふの賃貸タワマンのすぐ横に設置された土地の歴史を紹介する説明板。中野区中野2、2025/4/3撮影

堀江家屋敷跡

公園予定地の入口付近に1971年建立の堀江家屋敷跡石碑がある。この碑は入口近くから公園奥に移設される予定。碑の他に杉山公園にあるような説明板を立てる予定はないのかと尋ねたところ、検討するとの答えが中野区担当者からあった。

「堀江家屋敷跡」石碑。中野区中野2、2022/2/19撮影

堀江家屋敷跡石碑と公園建設予定地。中野区中野2、2025/7/6撮影

石碑の傍らの桃の木。2026/2/27撮影

碑文は次の通り。堀江の親戚総代として石碑を建てた石坂泰三 (1886-1975) は、元東京芝浦電気社長、元経団連会長。

 堀江家屋敷跡   旧
堀江家は太田道灌時代より中
野に住せる近鄕随一の舊家な
り此地もと圍と穪し德川五代
將軍綱𠮷公の犬小屋の在りし
處と云ふ堀江祖先の墓碑あり
し縁により大正七年十六代堀
江悦之助此地に居宅を構ふ十
七代恭一嗣子なく妻信夫は離
世に際し屋敷地を老人福祉セ
ンター設立の爲中野区に寄附

 昭和四十六年十一月
   親戚總代 石坂泰三書

この屋敷は1918(大正7)年に建てられた。堀江恭一 (1889-1962) は1956年に屋敷の東半分を日本バプテスト連盟に売り、妻の信夫しのぶ (1899-1970) とともに屋敷の西半分に移った。中野バプテスト教会初代牧師の大久保進 (1907-2003) は、屋敷の東半分を会堂として礼拝を行った。

中野バプテスト教会の歴史 - nakanobaptistchurch ページ!

恭一の死後、屋敷の西半分を中野区に寄付した信夫の遺志に基づき、老人福祉センターが建設され(屋敷の西半分はそのさい解体撤去)、1975年にオープンした。その後、堀江の名を冠した高齢者施設は中野駅南口再開発に伴って2018年に他へ移転したのち、施設名称から堀江の名は削除された。詳しくは下記参照。現在は更地(資材置場)になっている。

なお堀江邸の東半分は中野バプテスト教会の施設として現存し、現在は集会やイベントに活用されている。

中野バプテスト教会教育館(堀江邸の東半分)。背後は建設中のすみふタワマン。中野区中野2、2023/1/1撮影

桃の木

石碑とともに「歴史の継承」として、公園には桃(ハナモモ)の木が植えられる予定だ。中野区関係者が桃の木を地域の歴史と関連付けるのは、江戸時代に犬囲いが撤去されたあと桃が植えられ桃見の名所となったという故事に因んでいる。

公園整備計画(案)の平面図には、12本ほどの植栽予定を示す円が記されている。中野駅南口ロータリーの桃の木が再開発で撤去されたのを移植するという。

桃の木が中野駅南口から撤去されたのは2024年夏だ。

余談ながら、この中野区/警察の看板は、かつての中野刑務所移転運動の看板を転用した歴史ある代物だった。

桃の木の在りし日の様子を丸井の飲食店から撮影してあった。

中野駅南口ロータリーに20本以上も植えられていた桃の木。画面中央の丸い植え込み。2022/3/21撮影

説明会で公園に植えられる桃の木の高さについて質問があり、担当者は「2-3メートル」と答えた。上の写真で、傍らを通る人と比較すると4メートル以上はありそうなため奇異な感じがした。

この桃の木は公園予定地の近くに仮植されているというので、私たちの仲間が説明会の翌日確認に行き、衝撃的な光景を目にした。

仮植された桃の木。中野区中野2、2026/3/6撮影

20本の桃の木が見る影もなく「2-3メートル」の高さに強剪定されていた。しかも春なのに、花や葉を少しつけている1本を除き花や葉の芽すら出ておらず、枯れているように見えた。かろうじて花が咲いている1本を含め、仮植された全ての木がスエヒロタケなどの木材腐朽菌に蝕まれていた。

木材腐朽菌に蝕まれた仮植の桃の木。中野区中野2、2026/3/6撮影

再開発で排除されたもの

新しくできる中野2丁目の公園は、中野駅南口再開発で排除されたものたちがこの小さな敷地に寄せ集められて公園という形をとる。

(1)中野駅南口再開発のため撤去された中野区立桃園公園(じゃぶじゃぶ池があった)が移転したものとして (2)中野駅南口再開発のため撤去された堀江敬老館の跡地に (3)中野駅南口再開発のため撤去された中野駅南口ロータリーの桃の木(枯れてしまったように思うが)を移植して建設される。

そうしてできた(じゃぶじゃぶ池の代わりにミストしかない)公園は、皮肉なことに、少なくとも結果として (4)中野駅南口再開発タワマンの不動産価値を向上させ、ジェントリフィケーションを加速させるように思われる。

ジェントリフィケーション〖gentrification〗
都市の居住地域を再開発して高級化すること。高級化。
- 大辞林 第三版

ジェントリフィケーション(gentrification)は、開発などである地域により裕福な層が移り住むことで、住民の居住環境が変わる現象を指します。
- 日本経済新聞 Minutes by NIKKEI

近隣住民を悩ませる喫煙者、ゴミのポイ捨てをする人、バイクの違法駐車をする人、スケートボーダーが公園予定地のこの場所に引き寄せられてくるのも、再開発された中野駅南口周辺に喫煙所、ゴミ箱、バイク駐車場、スケボーができる場所がないからだ。これらは再開発エリアから排除されている。スケボーはかつて中野駅北口に場所があった。

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私たちのサークルは2023年10月に公園予定地と中野バプテスト教会と中野区産業振興センターの土地の歴史を調べた150件超の資料と解説と、それを材料に書いた小説をまとめ冊子にしました。中野区立中央図書館などに所蔵されていますが、下記通販サイトからお買い求めにもなれます。

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