中野区の新たな方針は、旧中野刑務所正門「移設」。平和の森小跡地は売却(2020年11月)

概要

いったん発表した旧中野刑務所正門の「現地保存」方針を見直していた中野区は、新たな方針として「曳家(移設)」案を区議会に報告した。12月に決定する。

中野区は区議会で平和の森小学校の跡地を売却する方針を明らかにした。2020/11/10

 

報告された曳家案

中野区は2020年11月9日の区議会区民委員会と子ども文教委員会で、大正時代のレンガ建築「旧中野刑務所正門」を曳家により西に約100メートル移設する案を、新たな方針として報告した。門の保存・公開と、門が立地する法務省矯正研修所跡地* に移転予定の平和の森小学校* の良好な教育環境を両立させるため、という。2019年2月に酒井区長がいったん現地保存を発表したが、その後決定を実質撤回し、再検討を進めていた。
 (*いずれも東京都中野区新井三丁目)

ひきや【曳家・引家】
建築物を解体せずにそのまま水平移動させて、他の場所に移すこと。曳舞。
大辞林 第三版

12月に決定

9日に示された方針は、一応「案」ということになっている。区民、子ども文教両委員会で出された意見を検討したのち、11月17日に総務委員会でも報告。11月中に平和の森小保護者と住民への説明会を開いてから、方針を決定し12月に区議会第4回定例会に報告する、という。

2024-25年度に曳家、新校舎2027年度

2021-2023年度に曳家の計画を策定し、2024年度から30カ月(2年半)かけ曳家。
新校舎は2021年度基本計画、2022-2023年度基本設計と実施設計、門の曳家のあとで新校舎建設、2027年度新校舎供用開始、との見通しが示された。

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2020/11/9中野区議会区民委員会資料より
5年と4億9600万円

2019年10月に中野区の委託により作成された『旧中野刑務所学術調査報告書』は、曳家には約5年と約5億円がかかるとしていた。9日の報告では費用は4億9600万円とされた。下記リンクは「中野区立図書館デジタルアーカイブ」で10月下旬に公開された同報告書。

西へ100m

門を曳家するとされる場所は『学術調査報告書』で検討された案と同様、門の現在地の西約100メートル。中野区は平和の森小移転用地として、法務省矯正研修所と公務員住宅の跡地計1万5000㎡強(下図の網掛けされた部分)の購入を予定している。正門の現在の場所も移築先とされる場所も、ともにその購入予定の敷地内である。

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2020/11/9中野区議会区民委員会資料より

平和の森小跡地は売却

中野区の青山敬一郎区民部長は9日の区民委員会で「平和の森小学校の跡地を売却し、移転用地の購入費用に充てる方針と聞いている」と明らかにした。ただし、平和の森小学校の面積は移転用地の半分以下で、購入費用に足りるわけがなく理屈がおかしい。しかも一般会計の収入の使途が限定されるかのような議論は馬鹿げている。

11月6日の中野区教育委員会定例会での区の説明によると、移転用地の購入価格は113億6112万3000円。

第2校庭案は検討したのか?

ほんの1カ月前の子ども文教委員会で教育委員会事務局幹部が検討すると言った、平和の森小学校の現在の土地を移転後も第2校庭として使い続ける案(下記記事参照)は、どうなったのか。結局一顧だにされなかったと思われる。

(11/25追記↓)

平和の森小跡地は売却し「教育債の償還財源」にする計画

2020/11/17中野区議会総務委員会報告の資料が11/24区議会HPにUPされた。

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それによると、法務省矯正研修所跡地は公共用地先行取得債により取得、平和の森小学校移転用地とする。財源確保の説明として、「用地の再取得における教育債の償還財源については、現平和の森小学校用地の売却益を充当」としている

この総務委員会での石井大輔・企画部企画課長の説明によると、現平和の森小学校用地売却価格は、平米70万円として計算すると58億円。

上記のように、中野区が旧中野刑務所正門の移設先としている西側まちづくり用地を含む矯正研修所跡地の購入価格は113億6112万円とされている。石井課長によると、西側まちづくり用地の価格は平米73万円として13億8000万円。

(11/25追記ここまで)

 

11/9区議会での議論

今回の方針は、門の文化財的価値を「極めて重要」とした7月の中野区文化財保護審議会答申と、門の移設を求めた9月の中野区教育委員会の意見を下敷きにしている。答申と意見の内容は下記記事参照。

移築で文化財的価値は?

両委員会で複数の議員が曳家によって門の文化財的価値が損なわれる可能性を問題にした。

子ども文教委員会では、平山英明議員(公明)が、2019年の「現地保存」方針を発表した際に区は曳家が文化財的価値を毀損するから現地保存と言っていたのに『旧中野刑務所学術調査報告書』で曳家ができるかもしれないと変えて来たのがそもそもおかしいと意見を述べた。

区民委員会では矢澤岳・文化国際交流担当課長が、曳家により現地性は減少するが(1)地域性(2)土地の歴史性(3)建物自体の構造--を含めた文化財的価値は保たれるとの説明を繰り返した。

文化財指定は?

2019年の「現地保存」方針は、門の都文化財指定を目指すとしていたが、9日の報告には文化財指定に関する文言がない。区民委員会で矢澤課長は「都教委が判断する。区がどうこう言うものではない」と話した。区教委による区の文化財指定を目指すかどうかは明らかにしなかった。

移設の理由は明確か?

答申は「曳家を選択する場合はその理由を明確にし、真正性を重視し旧中野刑務所敷地内で保存する」ことを求めている。子ども文教委員会で、むとう有子議員(無所属)は「理由の明確さ」を問題にした。塚本剛史・教育委員会事務局子ども教育施設課長は「スピード感をもって」「総合的に判断した」と述べるにとどまった。「総合的判断」の語は、区民委員会で矢澤課長も多数回にわたり繰り返した。

旧位置の表示は?

答申は別記で、門の「旧位置に何らかの表示をすることが必要」としている。その表示は平和の森小学校の新校舎敷地内に設けることになるわけだが、9日の両委員会でこの話は出なかった。

どのように保存?

区民委員会では、門の移築先とされる西側部分(下図「道路予定地」の左側)は、矢澤課長によると、学校用地として使うことは想定していないと教育委員会から聞いている、という。西側部分には柵などは設けず門は随時見学可能とするとしている。

一方、教育委員会事務局が理事者として出席している子ども文教委員会では、道路が建設されるのなら文化財保護審議会答申の面積が確保できていないといういでい良輔議員(自民)の指摘に対し、高橋ちあき委員長(自民)がこの委員会では与えられた学校の敷地でどういう学校を作るかの議論しかできないとたしなめていた。いでい議員はそれなら子ども文教で報告する意味ないじゃない何のために報告してるのと怒っていた。実際、11月中の平和の森小保護者と近隣住民への説明会は教育委員会ではなく区民部がやるとのこと。教育委員会と区民部でたらいまわしにしている。

区民委員会での伊藤正信議員(自民)の発言によると、西側部分は公園にすることが想定されているようだ。しかし矯正研修所と公務員住宅跡地の売買契約は、学校用地として行われる。学校用地として購入した国有地を公園に転用するのは問題ないのだろうか。

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西側部分と、新校舎が建設される東側部分との間に計画されている区画道路2号(上図の「道路予定地」)については、建設されるという。区画道路2号については下記記事参照。

他の可能性は検討したか?

むとう議員が子ども文教委員会で、区はいったいどういう検討をしてこの案が出てきたのかを問うた際には、塚本課長は内部的に何度か会議を開いて検討した結果を1回全庁的なところで検討したと答えた。

一方、矢澤課長によると「全庁的会議」を4、5回開いて検討した。

矢澤課長は、現地保存の場合が門の「揚家」(建造物を土台から持ち上げる工事)を予条件としているかのように言い、現地保存と曳家は必要期間が3カ月ほどしか変わらないと主張した。平和の森公園内の南側入口近くに移築するのは「木を切ってしまう」ので不可、とした。

保存に必要な面積は確保?

近藤さえ子議員(無所属)は区民委員会で、門を西ではなく東に曳家すれば距離が短いと指摘したが、矢澤課長は、 東側には門の保存・公開に必要な面積が確保できない、また、小学校のための進入経路と門の接道条件の両方は満たせないとした。

ところが石坂わたる議員(無所属)が、西側の曳家先にその面積が確保できるか尋ねたら、矢澤課長は、東西の長さが不足するため、できないと認めた。

門の保存・公開に必要な面積とは、文化財保護審議会が答申で示した、東西40.27m×南北38.45m、面積1548.4㎡を指す。

この「40.27m x 38.45m」を、下記ツイートのリンク先から地図上に表示できるのでやってみよう。西側も確かに無理なのである。理屈を都合よく使い回す、ご都合主義の恥知らずとしか言いようがない。

区議会の賛否はどの場面で?

伊藤議員が、区議会の賛否はどの場面で示せるのか尋ねた。青山部長は、旧中野刑務所正門取り扱い方針は、区議会の議決事項ではないとした。計画や工事などの経費は各年度の予算に組み込まれるため、各年度の予算への賛否を判断していただく、と話した。

 

中野非公式通信 & (く)

 

旧中野刑務所正門の記事とまとめ

 

 

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