中野区広報アドバイザーに関する情報開示についての不服審査請求、結果は棄却。ただ広報アドバイザーの任用は昨年度で終わったみたい (2023年8月)

東京都中野区の広報アドバイザーについての情報開示が不足していたので行政不服審査請求したところ、区は情報公開・個人情報保護審査会に諮問ののち、2022年秋「請求棄却」の裁決をしました。

この件は中野区が2020年8月当時、感染症や公衆衛生に詳しいわけでもない広報アドバイザーの助言を根拠にコロナ感染情報をどのように区民に広報するかという重大な決定をしていたと思われることから始まったわけですが、中野区広報アドバイザーの任用は2022年度で終了したと思われます。

なので今後は中野区が、素人の意見をもとに感染症など重要な広報の判断をしてしまう心配がなくなったということになり、それはまあよかったかなと。2023/8/3記

経緯

2020年8月、当時の区議会議員が中野区に新型コロナウイルス感染に関する情報の公表の改善を求めたところ、「広報アドバイザーの助言」を受けているからという謎の理由で拒否された。私たちが広報アドバイザーがコロナ感染公表基準について助言したことが分かる文書を中野区に情報公開請求したところ、不存在だった。不存在の理由は、助言が「口頭」だったから、だそうだ。詳細は下記記事参照。

このとき私たちは、中野区が広報アドバイザーの助言を検討し、コロナ情報公表基準について決定を行ったことがわかる文書も開示請求していたのだが、そのような文書は開示されず、上の「区政情報不存在通知書」にもこの点について言及がなかった。そのため2020年9月、中野区に対し行政不服審査請求した。2022年2月、区長が情報公開・個人情報保護審査会に諮問したというお知らせが届いた。これまでに伝えていたのはここまで。詳細は下記記事参照。

審査の結果

行政不服審査請求の結果は、2022年秋に中野区から審査請求人に届いた。「請求棄却」だった。

答申書

まず2022年9月27日付「答申書の写しの送付について」と同「中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)」という2つの文書が送られてきた。

答申書の写しの送付について.pdf - Google ドライブ

答申言.pdf - Google ドライブ

「答申書」は、中野区長からの不服審査請求の審査の諮問に対する、中野区情報公開・個人情報保護審査会の「請求は棄却すべき」とする答申だ。佐藤信行審査会長(中央大学副学長、法学)ら5人の委員の名が記載されている。「答申書の写しの送付について」は、中野区長宛の答申の写しを請求人に送るというお知らせ。

答申書は中野区ホームページで公開されている。

中野区ホームページの答申へのリンク

裁決書

次に2022年10月5日付「裁決書の謄本について」同「裁決書」の2つに、先に送られてきたのと同じ「中野区区政情報の公開に関する条例第13条第3項の規定に基づく諮問について(答申)」を添えて郵送されてきた。

裁決書の謄本について.pdf - Google ドライブ

裁決書.pdf - Google ドライブ

「裁決書」は、答申を受け中野区長がした「請求棄却」の裁決で、「裁決書の謄本について」は、裁決書の謄本を請求人に送るというお知らせ。

請求棄却の理由

補助としてなされた助言にすぎない

審査会の答申は「区政情報の不存在を理由とする非公開決定は相当であるため、本件審査請求は棄却すべき」とした。

「非公開決定は相当」の根拠として答申書に次のように記している。

〈広報アドバイザーは、会計年度任用職員、つまり、1会計年度を最長の任期として任用され、常勤職員が行う各種業務の補助を行う非常勤の地方公務員である。〉

〈広報アドバイザーへの職務上の指示やこれを受けた助言が口頭でなされていたとする点については、広報アドバイザーも区の職員であり、職務執行上の位置づけは一般の職員と変わることはないから、特段不自然な点はない。〉

〈広報アドバイザーの助言に関する記録を作成していない点については、そもそも、広報アドバイザーは、区の職員として、広報課長ら上司の指揮監督に従って、広聴・広報課の職務権限の範囲内で様々な補助業務を行っているに過ぎない。そのため、広報アドバイザーの職務は、実施機関から独立した立場で業務を実施する委託業務と異なり、業務対価が相当であるか否かを判断するために、その実施した業務内容を具体的に記録化・明確化することまでは予定されていないといえる。そして、区民の知る権利の保障の観点からも、区政情報の記録・保存において、区の広報活動に関し、常勤職員が実施する職務の補助としてなされた助言まで記録すべき必要性は認められない。〉

〈これらのことからすると、実施機関が、審査請求人から公開を求められた文書を作成ないし取得していないとしても不自然ではなく、その他、これらの文書を実施機関が作成ないし保管をしていることを窺わせる事情は存在しない。〉

〈よって、実施機関が、「請求情報に該当する文書は、作成又は取得していない」との理由で行った非公開決定は相当である。〉

これらの認定は中野区側の主張をほぼそのまま採用しているので、不服審査請求も、住民にとってなかなかハードルは高いようだ。

なのに重大な決定を?

審査会が認定したように、広報アドバイザーの助言は「常勤職員が実施する職務の補助としてなされた助言」にすぎない。

だがそもそもの発端になった2020年8月の区職員の発言とされるものによると、中野区は当時、広報アドバイザーの助言を根拠にコロナ感染情報をどのように区民に広報するかという重大な決定をしていたと思われる。

感染症や公衆衛生にふつうの人より詳しいわけでもない、わかりやすい自治体広報や見やすいホームページの専門家にすぎない広報アドバイザーの、単に「常勤職員が実施する職務の補助としてなされた助言」を根拠に。

広報アドバイザー任用終了

なお、2020年度から始まった中野区広報アドバイザーの任用は、2022年度をもって終了したと思われる(下の区議会やり取り参照)。

だから幸いなことに今後は、中野区が素人の意見を頼りに感染症の広報といった重大な判断をしてしまう類いの弊害は避けられそうだ。

(中野非公式通信)

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