中野区は歴史写真をデジタル化したら捨てるみたい(2022年10月)

2022年8月19日、東京都中野区の歴史写真をデジタル化するために整理する、第1回のボランティアに参加した。区の担当者が「ペーパーレスをどこかで決断してデータ化する必要がある」と説明したので「元写真は全部捨てるのか」とメールで公聴・広報課に問い合わせたが、2カ月たってもなしのつぶてで回答はまだ届いていない。2022/10/27
10/31追記: 回答が届いた。

第1回募集

作業マニュアル

下が当日ボランティアに配られたマニュアルだ。「本日のスケジュール」の紙に私のメモ書きの字があったが、見苦しいので消してある。

区の説明と作業の問題点

歴史写真は3万枚

昨年、私たちの仲間や小宮山区議(無所属)が問い合わせたさい、中野区公聴・広報課が持つ未整理の古写真は3000箱とか3000冊とかいう答えだったが、この日は3万枚という説明だった。

行事やもう存在しない建物や人物や事件事故を含む貴重な写真がたくさんあった。年配のボランティアで詳しい人がいて、区職員も知らない古い施設の場所などについて多くの教示があった。このような集合知は、住民が作業に参加することの利点だ。

第1回のこの日作業された写真は2600枚だという。単純計算で計12回作業すれば終わる。

目的は「ペーパーレス」

区の担当者は「ペーパーレスをどこかで決断してデータ化する必要がある」と説明した。ペーパーレスというのは、紙の写真は残さないという意味だ。中野区役所は2024年に新庁舎に引越す。その前に現庁舎で保管している膨大な古写真を処分するためデジタル化しようとしている。

私は「デジタル技術は進歩するので、中野区の歴史にとって貴重な写真や原板のあるものは保存しておくべきだと思う。区政100年の展示などにも使える。全て捨てるのか?」とメールで尋ねたが、2カ月過ぎた現在も返事がない。公聴・広報課なのに。

アルバム即廃棄。写真も?

ボランティアの作業はアルバムから写真を剥がし、アルバムに書いてある撮影日や写真説明を紙に書き写して、写真を剥がし終えたアルバムは足元のゴミ袋に直行。元データが正確に書き写されてる保証もないのに元データを即捨てていた。書き写された情報にあとで疑義があっても、元の記載を参照できないじゃないか……。

もしかしたら写真も、スキャンしたそばからゴミ箱に直行なのかもしれない。

元データが失われる問題

将来のデジタル技術の進歩という問題のほかにも、たとえば区報や他の印刷物に使った昭和20年代とかの白黒写真は、画像を鮮明にするためホワイトなどで修正されている。デジタル化して元写真を捨てれば修正後のデータしか残らず、修正前の写真にあった情報が永久に失われる。

写真公開サイトなどの問題

デジタル化した歴史写真は、中野区立図書館全館の指定管理者ヴィアックスが運営するサイト「中野区ちいきの写真館」で公開される。

古写真を全て捨てるのか質問したメールでは(1)中央図書館長が30人くらいしかいない参加者に写真提供を呼びかけていたが、広く区民に呼びかけないのか(2)中野区立歴史民俗資料館の歴史写真や、公聴・広報が所有する戦争中の写真は「ちいきの写真館」で公開しないのか(3)「ちいきの写真館」を運営するヴィアックスが区立図書館の指定管理者でなくなったらサイトごとデータが消えることはないのか — とも尋ねたが、いずれも返事はない。

作業の様子

ボランティア参加者の撮影は禁止されたため写真はない。公聴・広報が撮った当日の写真は、中野区の大好きなフェイスブック👇にUPされた。

第2回募集

第2回は12月3日に予定され、またボランティアが募集されている。古写真を捨てるための手伝いだと思うと気が滅入るので私は参加しない。

貴重な写真の表面に糊

この広報のツイッターが投稿した作業写真を見た区民からは、貴重な古写真の表面に糊つきの付箋が貼られていることに驚愕するコメントがあった。確かに。私も現場にいてこの光景を目撃したのだが、それ以外のことが衝撃的で異常さに注意が向かなかった。

写真を、中野区はどうせ捨てるつもりだから粗末に扱っている。

写真の表に付箋はNGです! | プロフィールムービーのフィルムワークス

とはいえ、中野区が古写真をデジタル化もせず引越しで捨てることを危惧していたので、それよりは相当マシだから、納得できる人はボランティアに参加したらいいと思う。

追記: 回答が届きました

問合わせ再送

10月31日、中野区の公聴・広報から、第1回ボランティア参加者宛bccで「問い合わせには確実に答える」というメールがきたので、問い合わせ内容を再送した。

この中野区からのメールに「上述のお問合せをいただいた記録が確認できません。(メールの受信記録がありません)」とあった。区のホームページに「お問い合わせ内容を送信しました」と表示された(下の画像参照)のに、メールの受信記録がないとは、さては中野区のシステムはポンコツだな?

回答

10月31日のうちにメールで回答が届いた。

メールについてはシステム等の確認をいたします。
お問合せ(1)~(3)については、現時点で決定していることはありません。
それぞれ情報の保存と活用が効果的に行われるよう、連携して進めて行きたいと考えております。
お問合せ(4)については、写真・原版ともに全てを保存していくことは物理的にも難しいため、仕分けを行っているところです。
現時点で、データ化した写真について廃棄を決定しているわけではありません。

写真・原版ともに全てを保存していくことは物理的にも難しい」という答え。

写真の募集開始

11月1日、中野区立図書館がツイッターとホームページで区民からの写真を募集開始した。

(中野非公式通信)

(中野区のツイートのキャプチャ)