東京・杉並区の荻外荘はダークツーリズムを意識して見学したい(2025年1月)

国指定史跡 荻外荘てきがいそう(近衞文麿旧宅、東京都杉並区荻窪2)の復元が完了し、一般公開が始まったので見にいった。日本が侵略戦争から自滅に突き進んでいった時代の政治の舞台となった場所だから、見学はダークツーリズムを意識していきたい。2025/1/4記

ダーク‐ツーリズム(dark tourism)
戦争や災害の跡地など、人の死や悲惨な出来事にまつわる場所を訪ね、教訓を学びとることを目的とする旅行。
- デジタル大辞泉 (コトバンクより)

歴史の中の荻外荘

荻外荘は伊東忠太の設計で1927(昭和2)年に建築された邸宅だ。総理大臣を3度務めた近衞が〈昭和12年の第一次内閣期から20年12月の自決に至る期間を過ごし、昭和前期の政治の転換点となる重要な会議を数多く行った場所〉として杉並区が整備し、2024年12月9日に一般公開を始めた(杉並区ウェブサイト)。(昭和12-20年は1937-1945年)

重要会談が行われた客間

近衞は、自らの私邸でしかも郊外に位置する荻外荘で、いくつもの重要な会談を行った。洋風の客間は〈第二次近衞内閣組閣時の昭和15年(1940年)7月19日に行われた「荻窪会談」をはじめ、戦前期の重要な会談が行われた部屋〉〈荻窪会談:ドイツ・イタリアとの提携強化を含む第二次近衞内閣の基本方針が話し合われ、同年9月27日の日独伊三国同盟締結につながりました〉という(杉並区ウェブサイト)。

下は杉並区ウェブサイト〈「荻窪会談」(昭和15年7月19日 提供:朝日新聞社)〉の画像に直リンクした写真だ。

https://www.city.suginami.tokyo.jp/images/17418/003_kyakuma4_thumbnail1.jpg

公開された荻外荘ではこの場所が細部まで忠実に再現されており、広縁から見学できる。なお館内で公開されている動画を除き撮影可。

荻外荘客間。東京都杉並区荻窪、2024/12/19撮影

応接室にオリジナルの敷瓦(タイル)

近衞は、荻外荘で記者会見もした。客間の他に中国趣味の応接室があり、そこが記者会見場だった。豪華な螺鈿のテーブルまで詳細に再現された応接室は、部屋に入って見学することができる。

荻外荘応接室。東京都杉並区荻窪、2024/12/19撮影

記者たちが靴のまま入った記者会見場を再現した応接室には、オリジナルの敷瓦(タイルの一種)とそれを再現した敷瓦が敷かれている。館内上映の動画によると、オリジナルの敷瓦は、建物の半分が一時移設されていた豊島区(後述)で建物外に敷かれる形で保存されていた。

荻外荘応接室の敷瓦。オリジナルとレプリカ。東京都杉並区荻窪、2024/12/19撮影

敷瓦復元の様子👇

応接室前の玄関にモザイクタイルが敷かれている。係員によるとこれは再現。

荻外荘玄関のモザイクタイル。東京都杉並区荻窪、2024/12/19撮影

近衞が自殺した書斎

GHQより戦犯容疑で出頭命令を受けた近衞は、出頭期限である昭和20年(1945年)12月16日早朝、この部屋で自決しました〉(杉並区ウェブサイト)という和室の書斎は、隣接する居間および広縁の2箇所から見学できる。当時の報道によると服毒して就寝したらしく、枕元に青酸カリとみられる薬瓶があったそうだ。

現地の掲示に、この部屋は〈その後も改変されることなく、自決時の姿を今にとどめています〉とあるとおり、北枕に横たわる近衞の、当時の報道写真で背景に写る和箪笥や屏風が室内に現存している。書斎中央にはケヤキ製の座卓(杉並区指定有形文化財)がある。

荻外荘書斎。東京都杉並区荻窪、2024/12/19撮影

注† 自決のようすを描いた、大宅壮一(1950)『日本の遺書』第6章「九寸五分」によると屏風は金屏風だが、大宅の誤認か想像ということで決着する。

荻外荘の復元

荻外荘のこれまでの歩みや復元工事の様子は杉並区ウェブサイトで公開されている。

半分を豊島区から移築

荻外荘の書斎など西半分はずっと現地にあったが、客間や応接間など東側はなぜか半分だけ切り離され、1960年から豊島区に移築されていた(杉並区ウェブサイト)。天理教が譲り受け、東京教務支庁(豊島区駒込)で寮として用いていたそうだ(天理教ウェブサイト)。

2018年に豊島区にあった東半分を杉並区が取得、建物を解体して再び元の場所に運んで西半分と繋ぎ合わせて復元する、という大掛かりな工事が行われた。

だから特に東半分は往時を再現してつくられ真新しく見えるところが多い。しかしそれはそれで、建築だけでなく、螺鈿細工や西陣織、 LIXIL(旧伊奈製陶)のタイルなどの現代の工芸技術を駆使し、時間もお金もかけて細部まで再現されているのがとても興味深く見学できた。

荻外荘見学について

荻外荘見学は一般300円、指定管理者の虎玄が窓口や案内業務を担当している。売店やカフェコーナーもある(杉並区ウェブサイト「施設案内 荻外荘公園」)。建物全景は南側の公園(元は荻外荘庭園の一部、無料)から見ることができる。

南側の公園から見た荻外荘。東京都杉並区荻窪、2024/12/19撮影

アクセスなど

グリーンスローモビリティ

JR荻窪駅南口から荻外荘公園まで徒歩15分くらい。コミュニティバス的なものがあるのに気がついたので乗ってみた。11月に本格運行を開始した、電気で動くグリーンスローモビリティということで、運賃100円。2種類の車両のうち、バス型の方に乗った。7人乗りで乗客は私たち2人だけだった。車両は丸くて可愛いし、荻窪駅南口の乗車場所の職員も運転手も親切だったが、歩いてもいける距離なので、もしかしたら利用者が少ないのかもしれない。

杉並区グリーンスローモビリティ車両。東京都杉並区、2024/12/19撮影

東京風のとんかつ

荻窪駅北側によさそうなとんかつ屋が何軒かあるのをピックアップして、最初に駅前のとんかつ そら〜空〜 に行ってみたら入れたからランチをいただいた。衣の色が薄いのは、同行者によると低温で揚げる東京風のとんかつだそうで美味しかった。

とんかつ そら 〜空〜の香り豚ロースとんかつ定食。東京都杉並区、2024/12/19撮影

(中野非公式通信) & (く)

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