1936年(昭和11年)につくられた桃園橋(東京都中野区中央)の撤去工事が2021年4月始まった。橋の撤去工事は同年10月ごろからであることが、東京都下水道局が情報開示した文書で分かった。現在中野通りの舗装の下になっている鋼鉄の橋桁や下部構造も含め全て撤去される。2021/5/19記
東京都が橋の一部保存を「調整中」であることが分かった。親柱などを他の都有地に一時仮置きした上で、保存を検討する。6/9追記
橋の欄干や親柱は6月下旬に撤去、移設、都有地で保管することが告知された。6/18追記
- 桃園橋について
- 桃園橋撤去工事について
- 桃園橋の橋桁について
- 下水道局の開示文書
- 6/9追記: 都が橋の一部保存「調整中」
- 6/9追記: 桃園橋が区報やイベントに
- 親柱と欄干撤去
- つづきの記事
- 紙の冊子を作ったよ
桃園橋について
桃園橋については、工事開始前後の写真や地図や資料や架橋をめぐる考察などを、下記記事にわりと詳しくまとめたのでご参照ください。
今回の記事では上のブログに掲載した資料のうち、開示文書の説明に必要な工事関係などの写真の一部を再掲している。
桃園橋撤去工事について
桃園橋を撤去するのは、都道420号線(補助26号線)、通称中野通りの拡幅のためだ。
桃園川暗渠は桃園川幹線として東京都下水道局の管轄になっており、桃園橋撤去は下水道局発注工事として行われている。
工事開始後の状況は、親柱や欄干を含め、桃園橋本体には2021年5月現在まだ手をつけていない。まず橋の両側の桃園川緑道のスロープなどを撤去している。
桃園橋の橋桁について
東側の橋桁
前のブログにも記したように、桃園橋の親柱と欄干はコンクリートだが、緑道側から下を覗くと鋼鉄の橋桁の一部が見える。
下は東側の橋桁の写真で2021年3月30日撮影。橋桁の下のうす緑色のパイプはガス管。
橋桁に記された塗装の記録。2021年3月30日撮影。塗装年月1976年8月、塗装面積101平方メートルと読める。桃園川の暗渠化は中野区ホームページによると1967年頃だから、この時の塗装は暗渠化のあとで行われたことになる。
西側の橋桁
今回の桃園橋撤去工事ではまず、橋の西側の桃園川緑道の構造物(階段やスロープなど)が撤去された。そのため緑道側からみると、桃園橋がかつて橋として機能していた頃に近い様子になっている。
スロープなどが撤去されたので西側の橋桁を近距離から撮影してみた↓。ちなみに工事現場の外から撮影しており、侵入はしていない。
下水道局の開示文書
工事の内容を知るため、私たちの仲間が東京都下水道局に情報公開請求し、5月12日に一部開示決定された。
"桃園橋の撤去を行うことで、橋梁としての構造を廃止"
「工事の計画がわかる平面図」という請求に対し「補助26号線街路整備事業に伴う桃園川幹線整備工事について」(2020年3月)が開示された↓ 。
計画や期間がわかる平面図.pdf - Google ドライブ
この文書によると、この工事は「桃園橋の撤去を行うことで、橋梁としての構造を廃止し、通常の道路として再整備を行」う。中野通りの舗装を剥がして下の橋梁や橋台を撤去し、代わりに新しい下水道管(暗渠)を整備する。下の図にあるカルバートとは専用の下水道管を用いた暗渠のことだ。
撤去は2021年10月-2022年6月ごろ
スケジュール(予定)を見ると、桃園橋撤去工事は2021年10月途中くらいから2022年6月となっている。
文書の日付が古い(2020年3月)が、その後工事スケジュールが変更されたことを示す資料は、公開文書には含まれていない。
工事金額
契約書によると工事金額は12億6720万円。
図面など
工事の詳細については、図面や特記仕様書が開示された。(文書は光ディスクで受け取ったのだが、特記仕様書は最後の部分のスキャンが乱れている)
中野通りの舗装の下に鋼鉄橋桁17本
図面_契約用.pdf の10枚目に、撤去される鋼鉄の橋桁が記されている (下の画像。赤枠は上で近距離から写した西側の橋桁。青枠の位置に上で写した東側の塗装記録)。
橋桁は全部で17本。それぞれ、長さ約 7.4 メートルの 300×300 (高さ×辺。単位 mm) H 形鋼であることが図面から読み取れる。


現在の桃園橋が作られて85年。中野通りのこの場所を通る人や車は、1936年(昭和11年)に架けられた長さ約 7.4 メートルの鋼鉄橋桁17本の上を知らずに通行しているわけだが、今回の工事で撤去される。
6/9追記: 都が橋の一部保存「調整中」
中野区公園緑地課"都が調整している"
撤去工事中の桃園橋の保存は検討されているのだろうか。施工業者が中野区に移設保存について相談しているという情報がツイッター上にあったので、2021年5月19日まず中野区の各部署にメールで問い合わせた。
各担当部署の返事は、5月27日に中野区 区民の声(公聴係)からのメールによって届いた。送信元は中野区企画部 公聴・広報課 シティプロモーション係。中野区の広報も他自治体と同じように問い合わせの仲介や調整をするようになったのかもしれない。
【中野区都市基盤部 公園緑地課 公園維持・管理係】
桃園橋についてですが、こちらは東京都の所有となります。
桃園川幹線整備工事のため、公園の占用申請があった際に、工事発注者である都下水道局と橋の所有者である都建設局で調整を行っているとの話は伺っておりますが、詳細については承知しておりません。
中野区文化財係"金も場所もない"(大意)
中野区文化財係には「桃園橋の前身の橋は、将軍が桃園に鷹狩りに行くさい桃園川を渡るのに用いたという由来があります。また現在の橋は、中野通り南側延伸後の1936年(昭和11年)に幅の広い丈夫な橋に架け替えられたもので、近現代にかけて中野区の南北交通拡大に貢献しました。地域の文化、経済史からみて意義があり、4本の親柱だけでもどこかに保存して、中野区の文化財か認定観光資源として掲示をする価値があると思いますが、どうでしょうか」と尋ねた。
【中野区区民部 区民文化国際課 文化財係】
桃園橋の背景には、ご指摘のとおり歴史的意義がございます。
しかしながら、現物での保存については移設費、保存場所の確保等、課題が多く、実現することは困難であると考えます。
歴史的意義は認めるが、保存する金も場所もない、という返事。率直というか何というか。
都下水道局"建設局と調整"
中野区公園緑地課は、都下水道局と建設局が調整中という。
そのため5月27日に下水道局のアースくんメールと建設局宛メールで問い合わせた。返事は6月9日に別々のメールで届いた。
【東京都下水道局 総務部 広報サービス課】
お問い合わせいただいた桃園橋の親柱等の保存につきましては、所有者の建設局と調整の上、対応してまいります。
都建設局"親柱など他の都有地に仮置きし保存検討"
【東京都建設局 第三建設事務所 工事第一課】
桃園橋の既存親柱、高欄等取扱いについて
桃園橋の歴史的価値につきましては、xxさまをはじめ、地元のみなさまにお考えを聞かせていただいているところであります。
ご存じのとおり下水道局による桃園橋の撤去工事が着工となりましたが、桃園橋の親柱等は、かなり古いものであり、構造上の安全性などの検証が困難なため、現地保存は難しい状況にあります。
また、現地以外での保存については、桃園橋の親柱等を他の都有地に一時仮置きし、引続き保存の可能性を検討してまいります。
桃園橋の親柱などは、現地での保存は困難だが、他の都有地に一時仮置きされる。その上で保存の可能性を検討する。
親柱などについては、撤去即廃棄ではないという、少しいいお知らせ。
6/9追記: 桃園橋が区報やイベントに
余談ながら、撤去工事が2021年4月に始まった後の5月と6月、桃園橋が俄かに相次いでなかの区報で言及されたり、区のイベントが告知されたりした。
親柱と欄干撤去
6/18追記: 撤去予告
親柱と欄干を6月21-25日に撤去することが、現場の掲示により告知された。「撤去・移設し、都有地にて保管」するという。
6/27追記: 根元から切り取り撤去
中野通りに85年前からあった桃園橋の親柱と欄干は、6月下旬に根元から切られ撤去された。下の1枚目は2021/6/25、2枚目は撤去前の3/29。
下は6/25友人撮影の親柱と欄干の切り口と作業予定。親柱は白御影石と思われる。石の切口のサイズは50x50cm、メートル法で作られた。欄干はコンクリートだったようだ。
つづきの記事
紙の冊子を作ったよ
PR:『桃園橋の歴史』猫人研究所雑誌 創刊号(2021年8月)
— 中野非公式通信(アカウント名) (@nakanocitizens) August 7, 2021
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(中野非公式通信)& (く)