東京・中野区の区長車、今年度末で実質廃止(付: 区長車使用状況の開示資料。2024年12月)

東京・中野区の酒井直人区長の区長車が2024年度末を以て実質廃止される。2025年度からは、年900万円かかっていた区内自動車業者への委託をやめ、「区長等が使用できる庁有車」に代える。この記事では、酒井区長が2019年度に区長車を復活させて以降の簡単な経緯と、区民からの情報公開請求に応じて開示された区長車の使用状況も併せてお伝えします。2024/12/11記

区長車実質廃止

2024年12月上旬、中野区は「令和7年度予算の主な取り組み(案)」を公表し、区民からの意見募集を始めた。取り組み(案)の中に「現行の区長車の運用方法を変更し、区長等が使用できる庁有車を導入する」という文言があった。

中野区「令和7年度予算の主な取り組み(案)」より

「杉並区の事例を参考に」

これより前、2024年9月25日中野区議会決算特別委員会で、むとう有子区議(無所属)が区長車の必要性が乏しいとして廃止を求め、区側から廃止を検討すると取れる答弁を得ていた。この時のやり取りによると、2023年度の区長車雇い上げ執行額は900万5735円だった。

むとう区議: 杉並区では、区長の公約どおり区長車を廃止して、移動に車が必要なときには、区長は一般職員と同様に庁有車を使用しているそうです。杉並区を参考にし、中野区でも区長車を廃止して庁有車を使用することを検討してはいかがでしょうか
矢澤秘書担当課長: 今後の区長公用車の在り方につきましては、杉並区の事例を参考にしながら検討してまいりたい
(2024年9月25日中野区議会決算特別委員会)

2024年9月25日中野区議会決算特別委員会会議録より(下線は筆者)

酒井区長の区長車これまでの経緯

2019-2020年度16年ぶり区長車復活

2018年6月に初当選した酒井区長は、2019年度、前任者が廃止した区長車を16年ぶりに復活させた。委託先は区内の宮園自動車、車種はトヨタクラウン。

中野区の区長車(中央)。中野区立平和の森公園で2020/9/20撮影

東京電子自治体共同運営 電子調達サービス 入札情報 ウェブサイトより

この期間に、新井区民活動センターで開かれた平和の森公園工事説明会に区長車が到着するのを私たちの仲間が目撃している。一方通行の道路を走って来た、一見してそれとわかる黒塗りの区長車は、あろうことかの路側帯に余地を残さずに入り停車した。そして左のドアが開くと区長が悠々と降りてきた。たしかに区民活動センターの入口は道路の右側にあたる。宮園自動車は、区長が歩く距離は1mmでも短くせよとでも命じられていたのだろうか。停車するために入るなら左の路側帯で、しかも歩行者のために0.75m以上の余地を残して停めるというのが、教習所で習う正しいやり方だと思うんだが。

新井区民活動センター(東京都中野区)に横付けされた区長車から降り、「平和の森公園再整備工事説明会」の会場へ向かう酒井直人区長(右)。2019/8/30 19:33撮影

2021-2022年度いったん中止

区長車は2019と2020の両年度運用された後、新型コロナ感染拡大で歳出抑制を図る必要から2021年度にいったん中止された。

むとう区議: 昨年9月の決算総括質疑で、前区長が4期16年間、区長車を廃止したことで、想定約1億3,600万円削減したことを指摘し、酒井区長も必要に応じてタクシーやハイヤーを使用し、区長車を廃止してはいかがかと質疑したところ、区長車は機能的で合理的であるので活用するとの区長答弁でした。2020年度予算では、区長車運行経費1,241万円が計上されていましたが、2021年度予算には見当たらず、予算説明書補助資料110ページに、タクシー及びハイヤー使用料87万1,000円が計上されています。これは財政難の中、議会車の予算化を見送ったことに触発され、区長自らの努力で歳出抑制を図る決断をなされ、1,153万9,000円の削減額を生み出されたという理解でよろしいでしょうか。
酒井区長: 通常時でございましたら、区長が公務のため移動する際には、より時間を効率的に使って、移動に伴うリスクを回避するため、区長車を活用することが合理的であるという考え方に変わりはございません。しかし、今般の厳しい財政状況を考慮し、令和3年度の区長車の運用を取りやめることは、私が自ら判断したことでございます。
(2021/3/2中野区議会予算特別委員会)

2023-2024年度再度復活、2025年度実質廃止

区長車は2023年度再度復活。2024年度まで運用。この間「区長公用車の廃止を求める陳情」が中野区議会に提出されたが、2024年3月、区議会の全主要会派の反対で不採択となった。

中野区議会ウェブサイトより(赤線は筆者)

2024/4/26『なかの区議会だより』より(赤線は筆者)

2024年12月、上に記載した通り2024年度を以て実質廃止の方針が公表された。

区長車使用状況

酒井区長の区長車の使用状況を中野区に情報公開請求して、開示された文書を以下に示す。中野区がウェブサイトで公表している「区長の動き」とも照合し、わかったことを記す。

2019年8月

2019-2020年度の区長車使用状況のうち、私たちの仲間が情報公開請求したのは2019年8月分。中野区がウェブサイトで公表している「区長の動き」に、前月まであった区長車に関する記載がその月に関しては無くなっていたことを受けて開示請求した。ちなみにこの件に関しては、請求者のところに中野区総務部秘書課から架電があり、「情報公開請求が出たため、8月分の区長車の動きがウェブから消滅しているというミスに気がついた」とのことで、その後は記載された 注1)

2019年8月中野区の区長車使用状況→ Dropbox - 区長車.pdf - Simplify your life

公開された2019年8月の「運転日誌報告書」によると、この時期の区長車の主要な用途は区長宅から区役所までの移動、つまり登庁だった。他にはあまり使っていないうえ、徒歩5分の距離を区長車で移動したりしていて、区長車を用いる必要性があるとは思えなかった。中野区は狭く、交通の便も極めていい。

1) このあたりのことは下記ブログ参照👇

2023−2024年度

2023年度に再度復活して以降、私たちの仲間が、区長車の使用状況が分かる文書を次の文言で毎月、情報公開請求した。

xxxx年y月分の区長車運転日誌、運転日誌報告書。ただし条例8条1項2号にあたる印影の部分を除く

開示された運行日誌報告書はここにまとめてある。👇

運行日誌を一瞥して目についたのは、一旦中止前との違いとして、区長車が登庁に使われなくなったことだ。区議会での区の答弁によると、時間外の割増料がかかるためという。

2024/3/12中野区議会総務委員会会議録より

また、あまり使ってないとの批判を受けてか、区長と副区長、教育長の他に区の部長も区長車を利用するようになった。途中からはそれに課長も加わって、区長以外の乗車が増え、稼働率を上げる努力がなされた。

区民としてはそこまでして区長車を維持する意味が全然わからなかった。実質廃止の方針は喜ばしい限りだ。

(中野非公式通信) & (く)