中野区の平和の森公園の青壁/モミの木/影絵/時計などの話(2020年12月)

2020/12/15記

青壁

中野区立平和の森公園(東京都中野区新井三丁目)。

かつて住民のオアシスだった草地広場、現在は300メートル陸上トラックに変貌した場所の南側にある建物の外壁は、一部が青く塗られている。

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中野区立平和の森公園。2020/10/18撮影

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青壁には水鳥の絵が描いてある。2020/12/20(く)撮影

 

幻の壁泉

この建物は東京都下水道局中野水再生センターの機械棟だ。青壁になっている理由は、中野区の平和の森公園の1980年代の当初の計画で、ここに「壁泉」が作られるはずだったから。平和の森公園は、壁泉からの水が公園を流れる「水とみどりの避難場所」になるはずだった。

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平和の森公園の基本計画図。(B)が壁泉。(i)が現在の中野水再生センター機械棟
出典: 中野刑務所跡地利用計画区民協議会報告書『中野刑務所跡地にみどりの防災公園をつくるために』1981年, 中扉

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基本計画の断面図にカラー部分を加筆。青が壁泉
出典: 中野刑務所跡地利用計画区民協議会報告書『中野刑務所跡地にみどりの防災公園をつくるために』1981年, p.21

東京都下水道局は、中野区が計画通り壁泉を作れるよう、建物の外壁を防水塗料で青く塗り、水鳥の絵を描き、壁泉の土台を設置してくれていた。 水は下水道局で処理した「中水」を使うことになっていた。この建物は1995年完成。草地広場は長い工事を経て2002年9月3日にオープンした。

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中野区立平和の森公園「壁泉」部分。2019/3/10(く)撮影

しかし壁泉は作られなかった。中野区は2018-2020年の平和の森公園の大規模な「再整備」工事の一環で、壁泉の土台をはつってブロック舗装し階段とベンチを置いた。

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中野区立平和の森公園「壁泉」部分。2020/4/7(く)撮影

壁の落書きは丁寧に、まず灰色ペンキで、次に白ペンキで、最後に青色ペンキで塗り潰された。

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左: 2020/2/14(く)撮影。右: 2/18(く)撮影

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左: 2/20(く)撮影。右: 2/22(く)撮影

 

流れの場所には体育館が

中野区は、壁泉からの水が流れるはずだった公園東側のエリアに巨大な体育館を作った。2020年7月竣工。

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平和の森公園。左奥が中野区立総合体育館(キリンレモンスポーツセンター)。2020/12/10撮影

 

ラジオ体操の見本台?

壁泉になるはずだった場所を、この工事で、中野区は「見晴らしステージ」として「ラジオ体操の見本台など」に作り変えようとしたらしい。

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平和の森公園再整備工事実施設計報告書より

ただし工事が終わって再開園後、ラジオ体操の時間に行ってみたが、別に「見本台」に使われている様子はなかった。

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2020/5/29午前6時37分撮影。見づらいが、右側のあずまや付近にラジオ体操をする人たちの姿。壁泉の上でラジオ体操をしている人はいなかった

 

 幻の壁泉参考資料

平和の森公園の幻の壁泉については、@orangkucing さんの下記記事に詳しいので参照されたい。

広域避難場所である平和の森公園(中野区)に大量の可燃物が埋められます! Part 2(by @orangkucing 初版: 2018年12月29日。最終更新日: 2019年8月20日) · GitHub

 

どの面下げて

なお、公明党の高倉良生都議によると、中野区選出の都議3人が10月「東京都下水道局の中野水再生センターの壁面が景観にそぐわないため、下水道局長に対応を求め」たらしい。あとの2人は立憲西沢けいたと都ファ荒木ちはる。(ツイート参照)

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高倉都議は草地広場がオープンした2002年には中野区議だった。都下水道局が壁泉を作れるようにしておいてくれたのを中野区が無にしたことを示すのが、あの青壁であるのを知っているはずだ。中野区選出都議3人、中野区の関係者がどの面下げて都下水道局に「景観にそぐわない」とか言えると思うのだろうか。

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水再生センター前庭

上に掲げた1980年代の当初計画の図面をよく見ると、現在、中野水再生センター前庭の駐車場になっているあたりが公園の一部として描かれている。

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赤枠: 中野水再生センター前庭が公園と同じ彩色で描かれている
出典: 中野刑務所跡地利用計画区民協議会報告書『中野刑務所跡地にみどりの防災公園をつくるために』1981年, 中扉

現在のこの付近は、プランターが置かれた道路脇の無駄に広いスペースに古い看板が立っており、もしかすると、都下水道局は中野区にここまで平和の森公園として使っていいよ、というつもりだったのかもしれない。

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中野水再生センター前庭付近に現存する色褪せた「平和の森公園」の看板。2020/12/20(く)撮影

 

モミの木

平和の森公園再整備工事終盤の2020年2月12日、体育館の前にモミの木が植えられた。

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画面右側に植えられたモミの木。2020/2/13(く)撮影

見積もりによると、平和の森公園再整備施工JV代表会社である住友林業緑化が納入、高さ5メートル、税抜き価格6万円。

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ちなみにこれ↓は某ホームセンターにあったモミの木価格表。4メートルで税抜5万4800円。

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この木について、平和の森公園再整備実施設計報告書に「クリスマスの際にイルミネーションができるようにモミノキを植える」との記載がある。(電源に関しては、本稿末尾の注2参照)

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そのため心配で12月に入って見に行った。

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平和の森公園のモミの木。画面奥は中野区立総合体育館。
左: 2020/08/09(く)撮影。右: 2020/12/10撮影

よかった。イルミネーションはつけられてない。

どうやら酷暑は生き延びたようだが、葉が下の方から茶色っぽくなってきたりして元気がないので、電飾されたら枯れないか心配だ。

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平和の森公園のモミの木。2020/12/10(く)撮影

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冬を越した平和の森公園のモミの木。2021/3/24(く)撮影
シダレザクラ

元気がないといえば、モミの木の近くのこのシダレザクラ。モミの木の翌日の2020年2月13日に植えられてから一度も葉が出てない。残念ながら枯れていると思われる。

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左: シダレザクラと記載された図面。右: 2020/2/14(く)撮影
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左: 2020/4/29撮影。右: 2020/8/9撮影

工事請負契約書に「枯死または形姿不良となった場合は植替えなければならない」とある。いつ植え替えられるのだろうか。

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影絵

平和の森公園の南半分は、地下に東京都下水道局の処理施設があり、その排気塔が公園内にいくつかある。体育館の前にもある。

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地下下水道処理施設排気塔の壁面。平和の森公園、2020/8/9(く)撮影

壁面の前に照明が並べてある。

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左: 2020/8/21撮影。右: 2020/8/9(く)撮影
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パナソニックLED照明器具。品番NND27270

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影絵用の設備だそうだ。

稼働したところはこんな感じらしい。↓

中野区と、平和の森公園再整備実施設計をした日本設計との打ち合わせの結果、影絵照明の設置は公園側ではなく体育館側の工事として行われた。 

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2017/4/21打合せ記録簿より
NT: 中野区都市基盤部。NK: 中野区経営室。NS: 日本設計

 

時計

中野区と日本設計の打合せ記録簿には、こんなやり取りも記録されている。

日本設計「既存の時計はさまざまなデザインがある。新設仕様は統一したものではどうか」
中野区「近年の公園整備において区で統一して選定している製品がある。それを選定すること」

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2017/4/17打合せ記録簿より
NT: 中野区都市基盤部。NS: 日本設計

平和の森公園のかつての草地広場には、住民に親しまれた時計塔があった。

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平和の森公園草地広場にあった時計塔。2019/3/10撮影

この写真に写っている時計塔もあずまやも樹木も、全て再整備工事で撤去され300メートル陸上トラックが作られた。

平和の森公園に再整備で新しく設置された時計。これが「区で統一して選定している」ものなのだろう。

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左: 2020/7/31撮影。右: 2020/6/20撮影

他の中野区立公園も、新しく作られたところはどこへ行ってもこの「統一して選定」されたセイコーの時計しかない。時計いろいろあるのに、なぜこれにしたんだろうか。

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左: 広町みらい公園、2019/9/23撮影。右: 本二東郷やすらぎ公園、2019/8/17撮影

 

注: 資料入手と公園の電源について

1) 平和の森公園再整備工事の実施設計報告書や工事請負契約書、打合せ記録簿は区民が情報公開請求により入手した。

平和の森公園と中野区立総合体育館の記事やまとめ、写真、工事の記録、情報開示資料などは下記リンク参照。

2) 公園内には、おそらくホームレスに使わせないため、コンセントというものが一つも設置されていない。そのため、クリスマスイルミネーションに使う電源は体育館から引っ張ってくるか、近くのハンドホール(電線のメンテナンスのために設けられた穴。下図参照)の中で電気工事してコンセントを設置することになる。そういうわけで、設計者がクリスマスイルミネーションを本当にやると考えていたとは思えない。

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モミの木に一番近いハンドホール

 

(中野非公式通信) & (く)