2020/12/15記
青壁
中野区立平和の森公園(東京都中野区新井三丁目)。
かつて住民のオアシスだった草地広場、現在は300メートル陸上トラックに変貌した場所の南側にある建物の外壁は、一部が青く塗られている。
幻の壁泉
この建物は東京都下水道局中野水再生センターの機械棟だ。青壁になっている理由は、中野区の平和の森公園の1980年代の当初の計画で、ここに「壁泉」が作られるはずだったから。平和の森公園は、壁泉からの水が公園を流れる「水とみどりの避難場所」になるはずだった。
東京都下水道局は、中野区が計画通り壁泉を作れるよう、建物の外壁を防水塗料で青く塗り、水鳥の絵を描き、壁泉の土台を設置してくれていた。 水は下水道局で処理した「中水」を使うことになっていた。この建物は1995年完成。草地広場は長い工事を経て2002年9月3日にオープンした。
しかし壁泉は作られなかった。中野区は2018-2020年の平和の森公園の大規模な「再整備」工事の一環で、壁泉の土台を斫ってブロック舗装し階段とベンチを置いた。
壁の落書きは丁寧に、まず灰色ペンキで、次に白ペンキで、最後に青色ペンキで塗り潰された。
流れの場所には体育館が
中野区は、壁泉からの水が流れるはずだった公園東側のエリアに巨大な体育館を作った。2020年7月竣工。
ラジオ体操の見本台?
壁泉になるはずだった場所を、この工事で、中野区は「見晴らしステージ」として「ラジオ体操の見本台など」に作り変えようとしたらしい。
ただし工事が終わって再開園後、ラジオ体操の時間に行ってみたが、別に「見本台」に使われている様子はなかった。
幻の壁泉参考資料
平和の森公園の幻の壁泉については、@orangkucing さんの下記記事に詳しいので参照されたい。
どの面下げて
なお、公明党の高倉良生都議によると、中野区選出の都議3人が10月「東京都下水道局の中野水再生センターの壁面が景観にそぐわないため、下水道局長に対応を求め」たらしい。あとの2人は立憲西沢けいたと都ファ荒木ちはる。(ツイート参照)
高倉都議は草地広場がオープンした2002年には中野区議だった。都下水道局が壁泉を作れるようにしておいてくれたのを中野区が無にしたことを示すのが、あの青壁であるのを知っているはずだ。中野区選出都議3人、中野区の関係者がどの面下げて都下水道局に「景観にそぐわない」とか言えると思うのだろうか。
水再生センター前庭
上に掲げた1980年代の当初計画の図面をよく見ると、現在、中野水再生センター前庭の駐車場になっているあたりが公園の一部として描かれている。
現在のこの付近は、プランターが置かれた道路脇の無駄に広いスペースに古い看板が立っており、もしかすると、都下水道局は中野区にここまで平和の森公園として使っていいよ、というつもりだったのかもしれない。
モミの木
平和の森公園再整備工事終盤の2020年2月12日、体育館の前にモミの木が植えられた。
見積もりによると、平和の森公園再整備施工JV代表会社である住友林業緑化が納入、高さ5メートル、税抜き価格6万円。
ちなみにこれ↓は某ホームセンターにあったモミの木価格表。4メートルで税抜5万4800円。
この木について、平和の森公園再整備実施設計報告書に「クリスマスの際にイルミネーションができるようにモミノキを植える」との記載がある。(電源に関しては、本稿末尾の注2参照)
そのため心配で12月に入って見に行った。
よかった。イルミネーションはつけられてない。
どうやら酷暑は生き延びたようだが、葉が下の方から茶色っぽくなってきたりして元気がないので、電飾されたら枯れないか心配だ。
シダレザクラ
元気がないといえば、モミの木の近くのこのシダレザクラ。モミの木の翌日の2020年2月13日に植えられてから一度も葉が出てない。残念ながら枯れていると思われる。
工事請負契約書に「枯死または形姿不良となった場合は植替えなければならない」とある。いつ植え替えられるのだろうか。
影絵
平和の森公園の南半分は、地下に東京都下水道局の処理施設があり、その排気塔が公園内にいくつかある。体育館の前にもある。
壁面の前に照明が並べてある。
影絵用の設備だそうだ。
稼働したところはこんな感じらしい。↓
中野区立平和の森公園の、この、あまり意味の無いライトアップはいったいなに? pic.twitter.com/cfQJ5Uj4Xu
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) October 28, 2020
影遊び用だと判明しましたが、壁に相当近づかないと影がクッキリせず、影遊び用としてはイマイチな感じが…。
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) October 28, 2020
中野区と、平和の森公園再整備実施設計をした日本設計との打ち合わせの結果、影絵照明の設置は公園側ではなく体育館側の工事として行われた。
時計
中野区と日本設計の打合せ記録簿には、こんなやり取りも記録されている。
日本設計「既存の時計はさまざまなデザインがある。新設仕様は統一したものではどうか」
中野区「近年の公園整備において区で統一して選定している製品がある。それを選定すること」
平和の森公園のかつての草地広場には、住民に親しまれた時計塔があった。
この写真に写っている時計塔もあずまやも樹木も、全て再整備工事で撤去され300メートル陸上トラックが作られた。
平和の森公園に再整備で新しく設置された時計。これが「区で統一して選定している」ものなのだろう。
他の中野区立公園も、新しく作られたところはどこへ行ってもこの「統一して選定」されたセイコーの時計しかない。時計いろいろあるのに、なぜこれにしたんだろうか。
注: 資料入手と公園の電源について
1) 平和の森公園再整備工事の実施設計報告書や工事請負契約書、打合せ記録簿は区民が情報公開請求により入手した。
平和の森公園と中野区立総合体育館の記事やまとめ、写真、工事の記録、情報開示資料などは下記リンク参照。
2) 公園内には、おそらくホームレスに使わせないため、コンセントというものが一つも設置されていない。そのため、クリスマスイルミネーションに使う電源は体育館から引っ張ってくるか、近くのハンドホール(電線のメンテナンスのために設けられた穴。下図参照)の中で電気工事してコンセントを設置することになる。そういうわけで、設計者がクリスマスイルミネーションを本当にやると考えていたとは思えない。
(中野非公式通信) & (く)