概要
中野区が新たに「広報アドバイザー」を採用したので、情報公開請求した。採用後に仕事した様子が分かる文書に関しては開示されなかった。仕事してないのだろうか。2020/8/5記
これは妙ですね…。情報公開請求に感謝いたします。#中野区 https://t.co/uFUOW2vH8E
— 岸原さや🌿 (@sayasaya777) August 7, 2020
こちらこそ読んでくださってありがとうございます🙏
— 中野非公式通信 (@nakanocitizens) August 7, 2020
(1)広報アドバイザーは仕事をしてない(2)仕事したけど仕事した記録が中野区にない(3)記録はあるけど中野区が情報公開請求に対し開示しなかった—のいずれであっても問題だと思います
情報公開請求
東京都中野区が2020年度新たに採用する「広報アドバイザー」の募集広告を出したのは知っていた。しかし実際に採用したのか、したとしたらどんな仕事をしているのか、一般区民には分からない。そんなおり、酒井直人・中野区長が区議会で広報アドバイザーに言及した。
広報アドバイザーがいる広聴・広報課を核として、研修なども行いながら、区民目線に立った情報発信ができるよう、職員の広報マインドを醸成していく考えでございます。
2020/6/2中野区議会本会議(議事録は7/7区議会ホームページで公開)
ということは、採用したらしい。7月8日、情報公開請求した。
2020年6月2日の中野区議会本会議で、区長が答弁の中で「広報アドバイザーがいる広聴・広報課」と発言したことに関連し、
(1)当該広報アドバイザー選定および決定の過程が分かる文書の一切、および、
(2)当該広報アドバイザーが就任してから現在までの勤務状況および業務内容が分かる文書の一切。(例えば、庁内外で参加した会議や打ち合わせなどの記録その他)
CDによる交付を希望します。
7/22付区政情報一部公開決定通知書が、7/24に郵送されてきた。
週明け7/27に中野区役所に取りにいった。一部開示ということで、個人情報部分が黒塗りになっている。
開示文書(1)選定
(1)「当該広報アドバイザー選定および決定の過程が分かる文書の一切」として、次の各文書が公開された。
選考関連
内容は、
[1]企画部広聴・広報課「中野区広報アドバイザー選考の実施について」2020/1/30起案、1/31決定。「申込者全員に対し、2020年2月14日(金)に面接を実施する」という記載あり
[2]「中野区広報アドバイザー設置要綱」([1]の関連文書)
[3]「中野区広報アドバイザー(会計年度任用職員)募集要綱」2020年2月。「面接日時 2月14日(金曜日)午前中」という記載あり
[4]「中野区広報アドバイザー(会計年度任用職員)採用選考申込書」(=履歴書用紙。[3]の別紙)
[5]「広報アドバイザー(会計年度任用職員)審査評定票」
面接関連
内容は、
[1]「中野区広報アドバイザー採用選考面接の実施について」企画部広聴・広報課。2020/2/12起案、2/12決定。面接時間と場所が書いてあるのに面接日が書いてない。4人から応募があったと記載されている
[2]「採用選考申込書」(=履歴書)。4人分(整理番号1~4)。個人情報としてほぼ黒塗り。小論文「中野区区政情報の発信について、課題と具体的な改善策(1000字程度)」を、他の人の2倍のスペースを使って書いてきた人(整理番号3)がいるが、この人は採用されてない。ところで上で貼った開示文書の「採用選考申込書」では、小論文が「中野区ホームページの改善すべき点と具体的な改善策について(800字以内)」となっており実際に使われたものと異なっている。
結果関連
内容は、
[1]「中野区広報アドバイザー採用選考の実施結果について」企画部広聴・広報課。2020/2/27起案、3/6決定。採用は佐久間智之氏(整理番号1)。2人不採用(整理番号2、3)、残り1人は選考辞退(整理番号4)。採用通知と不採用通知3/6発送
[2]応募してきたうちの1人から届いた「選考辞退のご連絡/■■■■」メール。2/29受信。「2月14日に広報アドバイザーの面接を受けさせていただいた■■■■です。その節は、誠にありがとうございました」とある
[3]「広報アドバイザー採用選考 評定結果一覧」辞退した整理番号4の人も面接を受けているのにその評定は一覧から削除されている
[4]佐久間氏宛採用通知「中野区広報アドバイザー採用選考の結果について」3/6付
[5]不採用者2人宛不採用通知「中野区広報アドバイザー採用選考の結果について」3/6付
[6]「会計年度任用職員用 提出書類一覧」
開示文書(2)勤務状況/業務内容
つぎに、(2)「当該広報アドバイザーが就任してから現在までの勤務状況および業務内容が分かる文書の一切。(例えば、庁内外で参加した会議や打ち合わせなどの記録その他)」として開示された文書。1件だけだった。
「発令通知書」4/1付。勤務内容や勤務条件を記したA4の1枚紙。採用時に佐久間氏に渡したものと思われる。
え? 「(例えば、庁内外で参加した会議や打ち合わせなどの記録その他)」は? 採用されてから情報公開請求まで3カ月以上の間に、1枚もないの? もしかして仕事してないの?
ふつう情報公開文書を渡すとき、担当職員が説明してくれるのだが、今回は説明ひとこともなく渡された。また情報公開請求すると数日後に担当職員から「こういう文書ならあるけどそれでいい?」みたいな電話がかかってくることが多いが、それもなかった。
まあ、もし本当に仕事していないということだとしたら、そりゃ説明しづらいだろうと思うが。
私たちが情報公開請求した2日後(7/10)に区議会ホームページにUPされた議事録には、酒井区長の次のような答弁が掲載された。
新型コロナウイルス感染症の関連情報を分かりやすく伝えるために、広報アドバイザーの助言に基づいて、4月24日にトップページを画像バナーがスライドするように変更するとともに、相談チャットを導入いたしました。
2020/6/4中野区議会本会議
その記録はなぜないのだろうか。
なお、区議会ホームページで現在(8/5)までに公開された議事録を検索すると、広報アドバイザーが採用された4/1以降に広報アドバイザーの語が中野区議会で言及されたのは3回(6/2本会議で1回、6/4本会議で2回)。3回とも別に広報アドバイザーについて議員が質問をしてないのに、酒井区長が広報アドバイザーに勝手に言及して広報アドバイザーの仕事をアピールしている。
佐久間智之氏
採用された佐久間智之氏は、ツイッターのプロフィールに「地方公務員18年(三芳町)→2020年退職」「中野区&北本市&四万十町のアドバイザー」とある。2020年退職ということは埼玉県三芳町職員を辞めたのは最近のようだ。ウィキペディアに”2018年6月から1年間、フォントメーカー「株式会社モリサワ」に民間出向”との記載。
中野区広報アドバイザーの応募資格は「地方自治体における広報事務の経験を有し、地方自治体における業務及び広報事務に精通していること」「民間企業等において広報に係る職務経験を有すること」の両方を満たさなければならず、そんな人いるんだろうかと思っていたが、モリサワ出向により要件は満たしているようだ。
選考を経て4月1日に中野区広報アドバイザーに就任した佐久間氏のツイートを検索すると、8月5日現在「中野区」は0件。下のツイートはもしかしたら中野区のことを言ってるのかもしれない。
とある自治体では会計年度任用職員(パートタイム)扱い。つまりよく考えたらまだ地方公務員で19 年目突入してた。起業して社長になり公務員に戻る。行政と経営の両面を知り、地域に還元する新しい働き方として「社長公務員」の時代がやってきた感。
— 佐久間智之@公務員社長#いいね三芳町 (@sakuma_tomoyuki) July 25, 2020
「とある自治体=中野区」?
「中野」で検索するとこれ1件だけヒット。
ハロコン再開が中野サンプラザからスタートということでハロプロメンバー全員のサインをご厚意によりいただきました。中野駅のガード下に掲示しています。密を避け通行の邪魔にならないようにご覧いただければと思います。 pic.twitter.com/KHNnomoGyB
— 佐久間智之@公務員社長#いいね三芳町 (@sakuma_tomoyuki) July 12, 2020
広報アドバイザー採用までの経緯
2020/1/28
中野区の庁議で報告
「区政情報の発信力強化の取組について」(企画部)
広報アドバイザーの導入
広報媒体の高度なIT化やサービスの多様化なども捉え、区の情報収集力・発信力・訴求力を向上するため、民間・自治体双方の広報経験と高いスキルを有する外部人材を登用する。上記の取組をはじめ、区の広報活動全般について専門的支援及び助言を行うほか、職員の広報マインドの醸成やデザイン力向上のための研修等の企画・実施に参画する。
2020/1/31
中野区議会総務委員会で報告
「区政情報の発信力強化の取組について」
https://kugikai-nakano.jp/shiryou/2027135610.pdf
広報アドバイザーの導入(庁議と同内容)
2020/1/31
企画部広聴・広報課が広報アドバイザー選考実施を決定(今回の公開文書の情報)
2020/2/2
中野区ホームページで募集開始(ページは既に削除されているためインターネットアーカイブのリンクを貼る)
広報アドバイザーの募集(会計年度任用職員)
職務内容 区報、区公式ホームページ及びSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)等による情報発信に関すること 、広報・デザイン研修の企画・実施に関すること、その他広報活動に関すること
任用期間 2020年4月1日から2021年3月31日まで
応募資格 以下の全ての要件を満たす方
地方自治体における広報事務の経験を有し、地方自治体における業務及び広報事務に精通していること
民間企業等において広報に係る職務経験を有すること
区の広報活動の実効性を向上させる技術及び意欲を有すること
勤務日数 月5日以内
勤務時間 1日7時間45分
報酬 日額23,500円
選考方法等小論文 「中野区の区政情報の発信について、課題と具体的な改善策」(1000字程度)
面接日時 2月14日(金曜日)午前中(応募状況によっては、別の日を設定する場合があります。)
2020/2/5
なかの区報に募集掲載
2020/2/14
応募があった4人を面接(今回の公開文書の情報)
2020/2/19
中野区が広報アドバイザー導入を含む2020年度一般会計予算案を区議会に上程
2020/2/27
企画部・広聴広報課係長が「中野区広報アドバイザー採用選考の実施結果について」を起案(今回の公開文書の情報)
2020/2/28
中野区議会野党の自民党と公明党が、2020年度一般会計予算案の修正案を区議会に提出(注*)。修正案には広報アドバイザー予算約150万円の全額削除が含まれていた
中野区議会予算特別委員会、4日間の総括質疑が終わりました。その後、自民党・公明党(議長/副議長を除く)15名の議員から、予算修正案が提出されました。3枚目にある事業について、一部又は全てを削るという内容です。3月2日からの各分科会で予算原案とともに修正案について審査することになります。 pic.twitter.com/0BiTyrwI1u
— 浦野さとみ・中野区議会議員(日本共産党) (@urano_satomi) February 28, 2020
2020/2/29
1人が選考辞退(今回の公開文書の情報)。「選考についてのご連絡をいただきましたが、一身上の都合により、選考を辞退させていただきたく、ご連絡差し上げました。」
2020/3/6
自公が予算案修正案取り下げ、予算案可決
予算特別委員会全体会、自民党・公明党から提出されていた修正案は、「分科会での質疑を鑑みて」という理由で、提案会派から取り下げの申し出があり、予算原案のみの採決となりました。一般会計は、無所属2名(むとう区議・石坂区議)のみの反対となり、賛成多数で可決されました。 https://t.co/tnfWyEB3XD
— 浦野さとみ・中野区議会議員(日本共産党) (@urano_satomi) March 6, 2020
この日、2/27に係長が起案した文書を企画部長が決定し、佐久間智之氏採用。採用通知と不採用通知発送(今回の公開文書の情報)
2020/4/1
佐久間氏、中野区広報アドバイザーに就任
*この時の予算案修正案の顛末は下記記事参照。
予算通過の顛末は下記記事参照。
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