中野区シティプロモーションは効果があったのか。博報堂の報告書が情報公開(2020年8月)

概要

「中野区シティプロモーション」の推進支援業務を2018-2019年度に委託されていた大手広告代理店・博報堂の報告書が、このほど区により開示された。以前この件の報告書抜粋は黒塗りで開示されていたが、今回の開示で、中野区シティプロモーションの効果を博報堂がどのように区に報告したかが明らかとなった。具体的には、キャラクター人形「ナカノさん」がテレビや新聞雑誌、ウェブでどの程度紹介されたか、及びそれらのメディア露出を広告に換算した金額。(2020/8/23記)

 

経緯

博報堂が中野区シティプロモーションの広告換算による効果算定を中野区に報告したことが分かったので、区民が情報公開請求したのだが、2020年3月に開示された文書は「中野区シティプロモーション推進支援業務委託報告書」の「抜粋」、しかも黒塗り(のり弁)だった。詳細は下記記事参照。

 

その後、別の区民が「中野区シティプロモーション推進支援業務委託報告書」の抜粋ではなく「現物」を情報公開請求し、このほど開示された。最初の開示請求は2018年度分のみだったが、今回は2018-2019年度の両方を対象とした。

 

2020年7月31日付区政情報一部公開決定通知書。個人情報と、「各個別媒体における露出単価及び広告換算額の算定方法に係る部分」は非公開ということだ。


中野区シティプロモーションの効果(広告換算)

博報堂は「中野区シティプロモーション推進支援業務委託報告書」の中で、キャラクター人形ナカノさんが発表された2019年2月から、博報堂との契約が終了した2020年3月までの間にナカノさんや中野区シティプロモーションが紹介されたテレビ、新聞雑誌、ウェブを報告した。この件の報告は2019/2/1-7/17と2019/7/18-2020/3/31の2つの期間に分割されている。

 

中野区シティプロモーションメディアプロモート結果・広告換算(円)

  2019/2/1-7/17 2019/7/18-2020/3/31
テレビ 17,896,088 26,640,437 44,536,525
新聞・雑誌 12,316,209 2,494,272 14,810,481
ウェブ 67,543,102 92,927,943 160,471,045
97,755,399 122,062,652 207,501,842

 (中野区シティプロモーション推進支援業務委託報告書のデータより)

広告換算の合計は2億750万1842円。2年間に支出された税金1億円の約2倍の効果があったという自己評価だろうか。

 

テレビ

ナカノさんなど中野区シティプロモーションを紹介したテレビ番組は、2019/2/1-7/17は2件、広告換算1789万6088円。2019/7/18-2020/3/31は4件、広告換算2664万437円。合計6件、広告換算で4453万6525円分の効果があったと報告されている。6件の内訳はMXテレビ4件、J:COM2件。単純計算で1件あたり約742万円。おそらく、この枠を広告として買い切ったら幾らか、という計算がされていると思われる。

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新聞と雑誌

新聞と雑誌は、2019/2/1-7/17は19件、広告換算1231万6209円。2019/7/18-2020/3/31は3件、広告換算249万4272円。合計22件、広告換算1481万481円。単純計算で1件あたり約67万円。『読売新聞』や『週刊新潮』のネガティブ記事が「広告換算」評価に算定されているのが興味深いが、後に続く報道はなく炎上には至らなかった。

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ウェブ

ウェブは、2019/2/1-7/17は73件、広告換算6754万3102円。2019/7/18-2020/3/31は112件、広告換算9292万7943円。合計185件、広告換算1億6047万1045円。単純計算で1件あたり約86万7000円。『中野経済新聞』の記事や『PR TIMES』のニュースリリースを複数のサイトが掲載しているのもそれぞれ1件にカウントされていることを考えると、1件あたりの算定金額が高すぎるような気がしないでもない。

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ウェブについての上に挙げた画像は各期間1枚目のみで残りは省略した。この項の全体は下に貼った「本編2」のファイルに収録されている。

 

中野区シティプロモーション推進支援業務委託報告書

今回情報公開されたこの報告書は、博報堂が「中野区シティプロモーション」として行った仕事を中野区に報告しているのだが、「中野区シティプロモーション」名目で2018-2019年度の2年間に支出された税金1億円がどのように使われたかの記録でもある。具体的な金額は書かれていないものの、どういう企業や人たちに分配されたかを垣間見ることができる。かなり大部だが興味ある人は全体を読んでみるといいと思う。

2年間で1億円を使ってプロモーションしようとしていたのは、中野区そのものなのかキャラクター人形「ナカノさん」なのか。報告書の全体からは費用対効果の点から見た委託の効率悪さ、行政の意図の委託先への伝わりにくさが感じ取れる。そもそも実際の施策に依らずして、金をかけてイベントや広告を行うことで、自治体を実際の姿よりもよく見せることはできるのか。

博報堂は中野区シティプロモーション最初のイベントとして2018年度に区民を公募せず企業と大学関係者だけ集めてワークショップを実施し、区議会(2018/11/8中野区議会建設委員会)では「4回のワークショップになんで2000万円も」という趣旨のやり取りがあった。報告書の中ではワークショップにかなりのボリュームが割かれており、もしかしたらセミナービジネスの類いを会費無料にして税金でやった感じでお金がかかったのかもしれない。

 

中野区議会は9月からの定例会で決算特別委員会を開き、2019年度の中野区シティプロモーションも検証の対象となる。区議会が区予算の一部として中野区シティプロモーションの2年間で1億円の支出に賛同した結果を、せめてちゃんと検証して、無駄な支出を繰り返さないよう監視してほしいと思っている。

 

開示された「報告書」(計約1900枚)

【本編1】

335枚。中野区シティプロモーションの広告やワークショップ、イベントなどについての報告。

 

【本編2】

279枚。イベントなどの報告つづき。

p463からSNS(ツイッターフェイスブック、インスタグラム)について。投稿時の留意点、投稿写真撮影スケジュール、投稿マニュアル(アカウント引き継ぎ資料)など。

p552から「マスメディア」を介した情報発信(メディアプロモート結果・広告換算)について。内容は上記「中野区シティプロモーションの効果(広告換算)」の項を参照。

 

【資料編1】

331枚。SNS年間投稿計画管理表と投稿詳細。

 

【資料編2】

75枚。SNSとウェブサイトの月次運用レポート。SNSフォロワー数、フォロワー分析、各投稿のインプレッションやエンゲージメント数など。

 

【資料編3-1】

318枚。SNS運用レポートつづき。「Twitterユーザーのナカノさんツイート事例」として、キャラクター人形に対する好意的なツイートが月ごとに紹介されている。中野非公式通信ツイッター相互フォローの人の投稿も幾つか載っていて味わい深い。このファイルだと2019年7月とか。

 

【資料編3-2】

300枚。運用レポートつづき。 このファイルでは2020年2月あたりに中野非公式通信の相互フォローの人のツイートが貼ってある。

 

【資料編4】

271枚。広告換算のもう少し詳細と、ナカノさんを紹介したテレビ番組やウェブ記事のスクリーンショットや新聞雑誌記事切り抜きなど。エゴサお疲れさまでしたという感じ。

 

 

博報堂」後の中野区シティプロモーション

中野区は区議会での批判を受けて、2020年度の博報堂への委託を取りやめた。新型コロナウイルス感染拡大を受けた財政逼迫による支出抑制もあり、2020年度の中野区シティプロモーション予算は約300万円となった。

ちなみこれは中野区が今年度採用した広報アドバイザー(予算年間150万円)の助言の成果かなと思ったんだが、情報公開請求したところ、広報アドバイザーが採用後に仕事をしたことを示す文書は公開されなかった。下記記事参照。

 

(中野非公式通信)  & (く)

 

中野区シティプロモーションこれまでの記事。

 

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