旧中野刑務所正門がある小学校移転用地の価格積算根拠。あと、埋蔵文化財調査しないの?(2021年3月)

概要

東京都中野区が小学校移転用地として購入した法務省矯正研修所跡地の価格の積算根拠について、区が情報開示した約1500ページの資料の概略を示す。この土地には、これまで保存問題を巡り区の対応が二転三転してきた旧中野刑務所正門がある。2021/3/23

土地価格

上限価格

中野区は、法務省矯正研修所跡地(東京都中野区新井三丁目)を「平和の森小学校移転用地及び道路用地」として財務省から購入するに当たり、上限価格を113億6112万3000円とし、2020年12月に区議会の了承を得た。

(第89号議案 平和の森小学校移転用地及び道路用地の買入れについて - 2020/12/10可決)

購入価格

2021年2月18日に契約し、3月8日に代金101億7358万円を支払った。面積15,584.53m²、1平米当たり約65万2800円。

(2021/3/12 中野区議会総務委員会資料 財産の取得について )

開示資料

上限価格の積算根拠を区民が中野区に情報公開請求し、2021年2月に開示された。約1500ページの開示資料は @orangkucing さんが下記の通りウェブ公開した。

 

各資料の概略

開示された各資料の概略を以下で示す。

過去の記録

▽ 矯正研修所工事仕様書 1984/12 国

中野刑務所が1983年に解体されたあと、跡地の一部に建てられた法務省矯正研修所の工事仕様書。貴重な資料なのだが、不鮮明で文字が解読困難。

▽ アスベスト調査記録票 2010/8/18 国

敷地内の矯正研修所と公務員宿舎の測定地点全てで、アスベスト濃度が大気汚染防止法の敷地境界基準を下回ったという。

▽ 矯正研修所東京支所敷地検討業務 2012/10/19 国

隣接する土地に建設されている矯正会館が関係法令に適合するために必要な敷地の範囲についての検討と矯正会館の確認書。

▽ 分析結果報告書(焼却炉ダイオキシン類調査) 2016/9/23 国

矯正研修所の焼却炉の焼却残渣と土壌のダイオキシン調査。

▽ 土地履歴(詳細)調査票 2016/10/5 国

当該の土地を明治42(1909)年に当時の司法省が購入して以来の土地履歴。これも貴重(部分的に手書き文字が判読困難)。

▽ 国有財産有償貸付契約書 2018/3/20 国

東京電力パワーグリッドに支線1条のため土地1.7㎡を貸付した際の契約書と、敷地内の矯正研修所や公務員宿舎や旧中野刑務所正門などについて平面図を含む詳細が記載。「吹き付け材料等の飛散性のアスベストの使用が確認されている。また、非飛散性のアスベストを含有する建材の使用の可能性がある」と書かれている。

土地売却前の調査

ボーリング調査

▽ 埋設物調査工事報告書(ボーリング調査) 2019/7/11 国

当該土地を売却する準備として、国が2019年6月に敷地内488カ所(!)で実施したボーリング調査の報告書。「全調査地点の約16%に当たる76点において、土地利用等における阻害要因となるおそれのある埋設物が確認された」という。埋設物は「主にコンクリートガラであり、他にがれき類その他が確認された」。

総量102.9㎥の埋設物が、地表から50センチまでの深さを中心に埋まっていると推計されている。「土地面積15,584.53㎡の内約8%を占める1,180.0㎡において、埋設物の存在が推定される」。最大深度は2.5メートル。

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調査に用いられたボーリングマシン。2019/6/18撮影

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ボーリング調査箇所からくり抜いた大量のコンクリート円筒が地面の上に置かれていた。2019/6/18撮影

また埋蔵文化財について、この土地は「平和の森公園遺跡」に相当する場所の一角にあるが、「中野区教育委員会との協議により立会は省略」された。「施工中、土器等が発見された場合は作業を中止し、速やかに区の教育委員会に報告すること」とある。全地点のボーリング調査結果が写真つきで掲載されている中に「土器等」が見つかったとの報告はない。

なおボーリング調査は「地山」(人為が及んでいない地層)あるいは3メートルの深さまで行ったが、全地点の調査結果をみるとコンクリートなどの支障物に阻まれ、より浅くまでしか掘れなかった場所が多い。

掘削調査

▽ 埋設物調査工事報告書(掘削調査) 326MB 2020/1/27 国

上記の「ボーリング調査の内、支障物により地山まで調査し得なかった範囲における地下埋設物(廃棄物等)の有無」の国の調査。2019年11月。「全掘削調査地点の約81%に当たる161点において、土地利用等における阻害要因となるおそれのある埋設物が確認された」。また、コンクリート構造物など「複数の大型埋設物」やライフラインが確認された。土壌汚染調査の必要性が考えられる埋設物は確認されていない。

コンクリート構造物などの大型埋設物の深さは主に地表から50センチまで、総量は330.1㎥と推計される。

「土地面積15,584.53㎡の内約17%を占める2,571.5㎡において、埋設物の存在が推定される」。

この調査の際は、埋蔵文化財包蔵地に関する立会として、2019年11月11、12、13、15、19、21日の6日間、「中野区区民部 文化・国際交流課 文化財係 比田井様、栩木様」が立ち会った。

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掘削調査。2019/11/20撮影

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掘削調査。2020/11/15(く)撮影

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掘削調査。2019/11/20撮影

▽ 見積書(埋設物ボーリング調査及び掘削調査に係る埋設物撤去工事) 2020/1/27 国

埋設物撤去工事費の見積もりは税込5764万円。

▽ 第三者チェック意見書(土地調査段階) 2020/3/16 国

地下埋設物調査は「概ね合理的」と評価。

不動産鑑定

▽ 不動産鑑定評価の依頼について(新井三丁目 旧法務省矯正研修所) 2020/7/27 区

中野区総務部経理課が、当該土地の不動産鑑定を2社に依頼することを決定。「飛散性及び非飛散性のアスベストを含有する建材の使用が確認されており、その後、宿舎を除く庁舎並びに研修寮の飛散性アスベストは除去工事が実施されている」とされている。

土地価格がマンション建設を前提に算定されている

▽ 不動産鑑定評価書(谷) 2020/9/10 区

評価額「112億9566万5790円」。

埋蔵文化財については、本件土地の所在する新井三丁目38番(住居表示)全域が、埋蔵文化財包蔵地に指定されているが、現所有者において埋設物調査が実施済なので考慮しないものとする」(p23)と記載。おい。

上記に挙げた過去の記録が鑑定のために参照されている。敷地内の建物は(旧中野刑務所正門を含み)「取り壊しを前提に」(p25)評価が行われている。

「建物マンション一体利用が最有効使用」(p30)「対象不動産上に最有効使用の建物を建築し、これを新規に賃貸する場合を想定した」(p31)「分譲マンションを建築することを想定し」(p34)とか書いてあり、マンション建築を前提に評価額が算定されている。学校用地なのに何のつもりだろうか。想定されるマンションの平面図まで載っている。ちなみにその図⬇️ では西側「区画道路第2号」の上にまでマンション建物が建っている。これは現実的な算定なんだろうか。

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中野区の旧中野刑務所正門「曳家」の図。左側(西側)の「道路予定地」が区画道路第2号

▽ 不動産鑑定評価書(新宿) 2020/9/10 区

評価額「108億4890万830円」(更地価格110億8060万830円から建物等除去費用2億3170万円を引く)。

こちらもマンション開発を想定して平面図がついている。建物と樹木などは全て撤去することとして算定されている。

価格決定。埋蔵文化財調査しないつもりらしい

▽ 令和2年度第1回中野区財産価格審議会の結果(評定)について 2020/10/27 区

2020年10月に財産価格審議会が開かれ、審議会会長の白土副区長が提案した土地の購入価格として「予定総額115億8000万円」が、ほぼ質疑らしい質疑もなく決定された。

ここでも「周知の埋蔵文化財包蔵地区には指定されているが、現所有者において調査済みである」とされている。2019年11月の国の埋設物掘削調査で「埋蔵文化財包蔵地に関する立会」として「中野区区民部 文化・国際交流課 文化財係 比田井様、栩木様」が6日間立ち会ったことを理由に、埋蔵文化財調査が済んだことにするつもりらしい。それは埋蔵文化財調査じゃなくないか?

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▽ 教育委員会の意見聴取について【平和の森小学校移転用地及び道路用地の買入れ】 2020/10/27 区

当該の学校用地購入について中野区総務部経理課が教育委員会の意見を聞くことを決定。ここで初めて「限度額113億6112万3000円」が提案された。

▽ 議会の議決に付すべき契約について【平和の森小学校移転用地及び道路用地の買入れ】 2020/11/9 区

総務部経理課が「限度額113億6112万3000円」での当該土地購入を議会の議決に付すことを決定。 教育委員会の買い入れ同意書が付いている。

▽ 鑑定評価条件 2020/12/1 国

地下埋設物(コンクリートガラ332.0㎥やがれき65.7㎥など)の全量撤去費用を税抜き約5300万円とする見積もりが伝えられている。

▽ 区政情報一部公開決定通知書 2021/1/7 区

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(中野非公式通信)& (く)

 

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