中野区基本計画と区有施設整備計画の意見交換会(2021年4月)

概要

東京都中野区は、区政の最上位の基本理念である「基本構想」を改定したのに続き、それに基づく新しい「基本計画」や「区有施設整備計画」を策定する手続きを始め、2021年4月に一連の意見交換会を開いた。その初回に参加したので備忘的に記録しておく。2021/4/6記

最上位の基本構想は1票差可決

基本計画などの意見交換会に先立って、中野区議会2021年第1回定例会は基本構想を審議したが紛糾した。基本構想は最終日3月23日の夜9時に至りギリギリ1票差で可決された。この定例会で基本構想が可決されなかった場合、それを基にしている基本計画などについて、中野区はいったい意見交換会その他の段取りをどうするつもりだったんだろうか。定例会での経緯は下記まとめ参照。

中野区基本構想を改定しました | 中野区公式ホームページ

なお基本構想に関しては、意見交換会が新型コロナによる中断を挟んで2020年2月から11月にかけ行われた。私は11月の最終回に行った。その時の記事は下記。

意見交換会とは

区民参加の仕組み

中野区は、自治基本条例(2005年)に基づく区民の行政運営への参加の仕組みとして、ある種の重要な政策決定に際し、次のような手続きを取っている。

「素案」⇨ 意見交換会と意見募集 「案」 パブリックコメント  政策決定

つまり区民は「素案」の段階における意見交換会とメールなどによる意見募集と、「案」(=最終案)の段階におけるパブリックコメントにより、意見を行政に伝えることができる。なおパブコメも意見募集である。

ただし、素案にしろ案にしろ、区側からすれば基本的に出来上がったものだから、区民は意見を提出する機会があるというだけで、意見交換会パブコメを受け、細かい手直しがされる可能性はあるものの、最終的に決定される政策がそれによって変わるわけではない。少なくとも実際の運用はそんな感じになっている。

中野区自治基本条例

廃止された住区協議会制度の代わり

中野区北部の鷺宮地域の情報サイト「さぎのみや.net」によると、中野区は2005年に「中野区自治基本条例を策定し、意見交換会パブリック・コメント手続を中心とした新たな住民自治と区政参加の仕組みを構築」した。「これにより、住区協議会を地域合意形成の場としてきた区の仕組みが改められ」たという。

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さぎのみや.net よりキャプチャ。2005年の自治基本条例公布と2011年の区民活動センター開設の間に書かれた文章と思われる

さぎのみや.net〜住区協議会とは

1980年前後から中野区には「住区協議会」という住民の区政参加の仕組みがあったが、田中大輔前区長が協議会メンバーが固定化しているなどとして2000年代にこの制度を廃止した。そのあたりの事情を下記の論文は簡潔に論じている。

三浦哲司「大都市の地域自治組織廃止事例の検討 : 東京都中野区の地・住構想廃止を事例にして」, 『同志社政策科学研究』13巻1号, 2011年9月. - 同志社大学学術リポジトリ 

今回の意見交換会

基本計画(素案)と区有施設整備計画(素案)

意見交換会と意見募集の対象となる基本計画(素案)と区有施設整備計画(素案)は、区議会第1回定例会に3月中旬に報告されたあと、区ホームページで公開された。

中野区基本計画(素案) - 324ページ

中野区区有施設整備計画(素案) - 77ページ

基本計画は基本構想に基づき今後5年間の区政運営をどうするか、区有施設整備計画は今後10年間の庁舎や学校、児童館など諸々を含む区有設備をどうするかの方針が記されている。

4月に6回の意見交換会

6回の意見交換会が設定され、意見募集も始まった。

4/3(土)14:30野方区民活動センター
4/5(月)10:30南中野区民活動センター
4/7(水)14:30江古田区民活動センター
4/9(金)18:30鷺宮区民活動センター
4/11(日)10:30東部区民活動センター
4/13(火)18:30中野区役所

意見交換会の様子

私が参加したのは、4月3日(土)野方区民活動センター(東京都中野区野方五丁目)の回だ。

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野方区民活動センターが入っている建物。2021/4/3撮影

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野方区民活動センター。2021/4/3撮影
区長ら7人の幹部が出席

自治基本条例に基づく意見交換会は、ふつう担当の区職員が説明し、区長は出席しない。しかし2020年の基本構想の意見交換会もそうだったが、今回の基本計画の意見交換会も酒井区長が出席し、質問に答えている。

基本構想の時もそうしたので、今回も区側出席者の顔ぶれを書いておく。なお意見交換会の撮影と録音は禁止のため絵はお届けできない。

前列は右(舞台でいうと上手)から次のように並んでいた。

(1) 高橋昭彦・企画部長
(2) 酒井直人・中野区長
(3) 石井大輔・企画部構造改革担当部長
(4) 永見英光・企画部基本構想担当課長

後列は同じく右から次の通り。

(5) 小田史子・子ども教育部子ども家庭支援担当部長
(6) 堀越恵美子・企画部企画課長
(7) 森克久・企画部財政課長

計7人。その他に北部すこやか福祉センターのアウトリーチ担当職員が司会をした。基本構想の時は(1)高橋から(4)永見までの4人だけだったので、それより多い。おまけに基本構想の時は石井は企画課長で、役割は司会だった(昇進しましたね)。

この日は永見課長が基本計画を、石井部長が区有施設整備計画を説明し、参加者からの質問はほぼ酒井区長が答え、その他の職員はあまり発言しなかった。

基本構想の時は、子ども・教育関係の質問が多く出るのに教育委員会/子ども教育部からの出席者がいなくて気になった。今回の意見交換会は小田部長がいたので良かったが、発言はやはり少なかった。

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A4サイズ厚さ3センチ、重さ1キロ近い資料が配布された
基本構想より盛況

基本構想は9回の意見交換会を開いたが、参加者は毎回定員を満たさず、計107人に過ぎなかった。新型コロナウイルス感染防止のため、今回も予約制で25人から50人の定員が設けられている。野方区民活動センターの回は30人で、見たところほぼ席は埋まっていた。他の回も概ね盛況らしい。

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これは基本構想がふわっとしたイメージ的な理念だったのに対し、基本計画はより具体的で、さらに区有施設整備計画には自分の地域の児童館などの施設がどうなるかがかかっているためと思われる。身近な問題として関心が高い。基本構想の時の参加者の意見や質問も、多くは理念ではなく具体的な施設や施策に関するものだった。

質疑応答

この日の意見交換会は14時半開始、基本計画と区有施設整備計画の素案を永見課長と石井部長が説明し終わったのが15時8分頃。16時終了予定のところ、参加者の発言と区側(主に区長)との質疑応答は16時15分ごろに終わり閉会した。16人くらいの参加者が発言した。

内容はやはり施設関係、特に児童館や幼稚園、保育園などの子ども施設に関する発言が多かった。近くに児童館がなくなる地域から存続を訴える声が相次いだ。JR中野駅周辺に駐輪場を作らない方針のため放置自転車がひどくなるとの問題提起や、区議会議事録の公表が遅いという苦情、現在の区民参加の手続きで区民の大きな意見は反映されないとの指摘もあった。また美鳩小学校新校舎は一足制のため床に先生の革靴のあとがついて取れないそうだ。文化財保護審議会の公開を求める声に対し酒井区長は「よほどの理由がない限り公開すべき」と発言した。

雰囲気は穏やかだった

野方区民活動センターの意見交換会の雰囲気は、私が参加した酒井区長出席の区民との会合としては、近来になく穏やかだった。

参加者は、区有施設整備計画(素案)に、酒井区長の努力を認めたのかもしれない。田中前区長は区立幼稚園を民営化しようとしていたが、素案では2園とも当分の間区立幼稚園として存続、同じく田中前区長が全廃しようとしていた児童館を、酒井区長は全廃ではなく半減して9館にするとしていたが、素案には11館が残っている、などの点で。

もっとも他の回がどうだったかは知らない。

また、もしかしたら酒井区長に期待して投票し、その後の失望から会合などで語気荒く発言していた人たちの幾分かは、もはやこのような機会に足を運ぶのすらやめてしまったのかもしれない。そういうこともあるのかもしれない。

歩いた方がいいと思う

酒井区長は2019年度に16年ぶりに運転手付きの区長車を復活、年1000万円かかることから批判されていた。時には区役所から徒歩5分の明治大学まで区長車で行くなどもしていた。新型コロナによる財政難が予想されるため支出抑制の一環として2021年度は区長車を取りやめた。

2021年度になり区長車がなくなって間もないこの日、私が意見交換会開始時刻の少し前、区長は何に乗ってくるのだろう、区職員が移動に使う普通の乗用車だろうかとか思いながら野方区民活動センターの前にいたら、区長は歩いてきた。自宅が近いのでということだった。

帰りも徒歩で、建物を出たところで、意見交換会参加者かあるいは住民に話しかけられていた。

運転手つきの黒塗りクラウンに乗っていては住民が話しかけることもできない。歩いた方がいいと私は思った。

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野方区民活動センター前で住民に話しかけられる酒井区長(中央)。2021/4/3撮影

今後の予定

「素案」に対する意見交換会と意見募集が終わったあと、6月に「案」(最終案)を公表してパブリックコメントを実施、8月に基本計画と区有施設整備計画策定、という予定になっている。

中野区基本計画の策定に向けた検討について | 中野区公式ホームページ

 

(中野非公式通信)

 

 

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