旧中野刑務所正門(旧豊多摩監獄表門、通称 平和の門)の一般見学会の様子を紹介するとともに、門に使われた煉瓦の製造場所を示す刻印について記す。2021/11/6記
旧中野刑務所正門見学会
現状で最後の公開
2021年11月5(金)6(土)の両日、東京都中野区新井3丁目の旧中野刑務所正門で一般見学会が開かれた。
2021年6月に「旧豊多摩監獄表門」として中野区文化財に指定された。門以外の刑務所の残りの建物は1983年の廃庁とともに解体され、跡地の大部分は平和の森公園や東京都下水処理施設などになっている。
門のある法務省矯正研修所跡地は隣接する平和の森小学校の移転予定地で、門は2024年度ごろから曳家により西へ100メートル移築される予定。今回は一般の人が現状の門を見学できる最後の機会とあって、見学会は盛況で、特に2日目の土曜日は開始前から長い列ができ開始時刻が15分繰り上げられた。中野区長は見学会参加者を初日約800人、2日目2000人超とツイートした。のちに共産党の羽鳥区議は自身のニュースに「5000人以上」という数字を掲載した。
特徴的な煉瓦積み
今日は知人から教えてもらった「旧中野刑務所正門(旧豊多摩監獄表門)公開見学会」があったので行ってみた。今後、平和の森小学校新校舎建設で現在の場所から移設予定(いろいろ迷走もした)だが、たぶん、これが最後の機会になるであろう建設当時の場所で見学ができて良かった。見学会は明日も開催。 pic.twitter.com/JtEEWs8CSj
— Galbraithian (@galbraithian999) November 5, 2021
レンズの収差テスト写真みたいでアレだけど、レンガの積み方は、長面(長手)と短面(小口)の段を相互に重ねる「イギリス式」(フランス式は同じ段で長面と短面を相互に積む)。3、4枚目は「役物レンガ」というらしい。あと、目地が膨らんだ感じなのは「覆輪目地」というらしい(知らなかった)。 pic.twitter.com/ZxP949Sh43
— Galbraithian (@galbraithian999) November 5, 2021
中野区の平和の門(旧中野刑務所正門)レンガとレンガの隙間を埋めるセメントをなまこ壁のように丸く盛り上げる処理は覆輪目地と言い、東京駅と同じ処理です。近くの新井区民活動センターの2階には、刑務所や門の歴史や保存活動に関する展示コーナーもあります。人が多くて写真は撮りにくいですw pic.twitter.com/RWQbUqA1qj
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) November 5, 2021
中野区の平和の門(旧中野刑務所正門)レンガの隙間を埋めるセメントを丸く盛り上げる覆輪目地の技法は、現代では途絶えていたもの。それを東京駅修復の際に鹿島建設が復活させたそうです。「何人もの職人が『難しすぎる。割に合わない』と現場を去った」https://t.co/KpkbS4vt5A pic.twitter.com/EoCKc3GDgi
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) November 5, 2021
正面扉、シャンデリア、守衛室、記章など


門の正面上部に白くエンブレムの跡が残っている。見学者への説明のため現地に配置されていた中野区の学芸員によると、エンブレムは風で落ちて破損したため修理中とのことだ。 また、東側守衛室の受付用の半丸窓は豊多摩監獄時代にはなかったので、門の保存運動に取り組んできた「平和の門を考える会」によると保存されるかどうか未定らしい。1枚目、門扉とシャンデリア。2、3枚目、門の左右に造られた守衛室。門の入口から見て右側の部屋(3枚目)には半円形の受付窓も設置。外から見ると(4枚目)受付らしい意匠になっていることがわかる。 pic.twitter.com/W0GVnEkmNR
— Galbraithian (@galbraithian999) November 5, 2021


刑務所の塀と矯正研修所建物
小学校の校舎建設前に矯正研修所の建物は解体撤去される。敷地内のコンクリート塀は刑務所時代の塀の一部だが、それも撤去される。法務省の矯正研修所東京支所は、現在、昭島市の国際法務総合センター(立川基地跡地)に統合され、中野区の敷地内には建物が解体されずに残っていて、廃墟感が漂う。こちらに興味がある方も見学するといいかもしれない。 pic.twitter.com/VHtS9D6vDX
— Galbraithian (@galbraithian999) November 5, 2021



東京 旧中野刑務所の正門が一般公開 作家らを思想犯として収監 #nhk_news https://t.co/dQep1gyefd
— NHKニュース (@nhk_news) November 5, 2021
中野区のチラシと資料


刻印煉瓦
上掲のチラシに刻印のある煉瓦についての説明がある。
「上敷免製」の刻印
下の写真の青丸が、煉瓦の刻印の場所だ。煉瓦が装飾のため斜めに削られて積まれている箇所のため、刻印は一部分だけになっている。
れきみん所蔵煉瓦は「製免敷上」
2カ所で製造された煉瓦を使用
「中野区文化財指定調書」(リンク)は、株式会社間組の『旧豊多摩監獄解体調査報告』(1985)を参照し、旧中野刑務所正門の煉瓦について次のように記している。
使用された煉瓦は2カ所で製造されたものであり、桜の刻印(一重と二重の2種)のあるものが小菅監獄の囚人による製作品で、「上敷免製」(「製免敷上」もあり)の刻印が日本煉瓦製造株式会社のものである。
矯正図書館に桜の刻印煉瓦
旧中野刑務所正門のすぐそばの矯正図書館に、小菅監獄でつくられた桜の刻印(二重)の煉瓦が展示されている。
旧中野刑務所正門のオンライン資料
中野区HP
www.city.tokyo-nakano.lg.jp
www.city.tokyo-nakano.lg.jp
www.city.tokyo-nakano.lg.jp
中野区立図書館デジタルアーカイブ
中野区立図書館デジタルアーカイブで中野刑務所や旧中野刑務所正門についての資料が公開されている。主なものは次の通り。中野区『中野のまちと刑務所 中野刑務所発祥から水と森の公園まで』中野区, 1984年. archive.nakano-library.jp
中野区立中央図書館『収監の作家・文化人 -中野刑務所1910~1983- 地域の著作者紹介シリーズ No.7』中野区立中央図書館, 2011年. archive.nakano-library.jp
建文『旧中野刑務所正門学術調査報告書 令和元年10月』中野区区民部文化・国際交流課, 2019年. archive.nakano-library.jp (中野非公式通信)& (く)
過去記事など
旧中野刑務所正門についてこれまで書いた記事やまとめ
nakanocitizens.hatenablog.com nakanocitizens.hatenablog.com
刑務所見学は人気
S6.6.7の豐多摩刑務所(震災復旧)落成式S6.6.7の豐多摩刑務所(震災復旧)落成式は「初夏の快晴に附近町民近鄕より來衆する者無慮二萬餘人にして、内入場を許したる者八千九百九十三名(同伴入場者を加算せば一萬人を超過す)にして雜踏を極むる盛況」です。先日の正門見学会の人数2800はこの記録に遠く及ばずでした。 https://t.co/CIYkjfrqLd pic.twitter.com/To0zZAdSqI
— くろねこ (@orangkucing) November 10, 2021
どこかのお偉いさんが、旧中野刑務所正門見学会の参加者が初日800人、2日目2000人超を威張っていたという話を聞いて。刑務所は(自分が入るのでなければ)みんな大好きなんですよ(即売会とか)
— くろねこ (@orangkucing) November 10, 2021
