中野区、9月議会に本町図書館と東中野図書館廃止議案提出。地域開放型学校図書館は開始先送り。附: 幹部発言の住民監査請求(2020年6月)

概要

・東京都中野区は住民からの存続要望にかかわらず、本町図書館と東中野図書館を廃止する方針を変更せず、廃止の議案を2020年9月議会に提出する。2021年10月31日廃止予定。
・今年度開始予定だった地域開放型学校図書館は来年度に先送り。今年度の地域開放型学校図書館予算は「幻の見直し案」のまま、コロナによる財政逼迫を理由にこの件に関する補正予算提出を見送った。
・現在の契約が終了した後の新たな区立図書館指定管理者との契約には、2図書館廃止と地域開放型学校図書館3カ所、及び新図書館開館を盛り込む。
(以上は2020年6月9日の中野区議会子ども文教委員会での報告)
・区幹部発言を巡る住民監査請求は門前払い。
2020/6/11記

 

本町図書館と東中野図書館廃止方針

背景

中野区には中央図書館を始め8館の区立図書館がある。現在建設中の新図書館開館に伴い、本町図書館と東中野図書館を廃止するとしており、地元から存続が要望されている。配置は下図参照。(中野区HP掲載のに、新図書館の位置及び本町図書館と東中野図書館の下線を私が加筆した)

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最新状況

2020年6月9日の中野区議会子ども文教委員会で、区は本町図書館と東中野図書館廃止と、地域開放型学校図書館3校分新設、及び新図書館開館を盛り込んだ図書館条例改正案を2020年9月議会に提出する方針を明らかにした。
この日の報告によると、2図書館は2021年10月31日廃止予定。
新図書館は中野区立中野東中学校新校舎(中野区中央一丁目で建設中)に併設。建設遅延により開館予定がずれ込んでいたが、この日の説明によると2022年2月オープン。

区はこれまで、具体的な今後の図書館の配置について中野区の次の「基本計画」と区有施設整備計画で決定するとしてきた。しかし両計画(いずれも2021-2015年度)は2021年3月策定予定で、現状影も形もない。区民からの意見聴取すら始まっていないし告知もされていない。どういうことだろうか。おまけに2021年10月廃止予定なのに、なぜ慌てて今年のうちに廃止の条例を通そうとしているのか。既成事実化を急いでいるとしか思えない。

区が意見を参考にするとしていた2019年の「今後の図書館サービスのあり方検討会」では、2図書館廃止に反対の声が相次いでいた。参考⬇️⬇️

 

中野区立本町図書館。東京都中野区本町、2019年8月17日撮影。

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地域開放型学校図書館は来年度に先送り、今年度補正予算見送り

背景

中野区は区立小学校20カ所に、一般利用できる区立図書館分館としての「地域開放型学校図書館」を併設する計画。外部の利用者が学校内に立ち入ることになるため、防犯面などから懸念が出ている。また地域開放型学校図書館の存在が校舎の設計に制約を加えることも、学校関係者などからマイナス点として指摘されている。学校図書館よりも蔵書が増え利用できる時間も増えることが学校にとっての長所として挙げられているが、普通に学校図書館の蔵書と人の配置を増やせばよくないか。なお、中野区が地域開放型学校図書館を推進するのは区立図書館を減らすのが目的ではないかとの指摘は、区幹部が従前の議論で否定している。
「今後の図書館サービスのあり方検討会」で上記のような消極的意見が多かったことを受け、区は地域開放型学校図書館を区立図書館分館ではなく学校図書館のままとし、外部利用者を乳幼児などに限定、蔵書は一般書含む5000冊から児童書中心の2000冊に減らす、などとする「見直し案」を2020年1月に区議会子ども文教委員会と教育委員会定例会に報告したが、子文教での自民党などの反発を受け、見直し案はわずか1週間で不可解な経緯を辿り撤回された。参考⬇️

2020年3月、区議会で2020年度予算可決。しかし、変更が間に合わなかったとして、地域開放型学校図書館の予算は撤回されたはずの「見直し案」のままだった。撤回後(見直し前)の内容を実行するための予算は今後補正予算を提出するとした。参考⬇️

 

最新状況

2020年6月9日の子文教で、区は新型コロナウイルス感染拡大による財政逼迫を理由に、今年度、地域開放型学校図書館のための補正予算の提出をやめたことを報告した。
2020年9月に第一弾の地域開放型学校図書館を、みなみの小学校と美鳩小学校の新築校舎内に開設する予定だったが、これを受け、2021年度に延期。中野第一小学校を合わせた3校に2021年4月に開設するとした。区立図書館分館として指定管理者による運営を見込む。
9月議会に提出予定の図書館条例改正案には、本町図書館と東中野図書館の廃止とともに、地域開放型学校図書館3校分、及び新図書館開館を盛り込む。
今回の説明では、地域開放型学校図書館は、朝令暮改の「見直し案撤回」時から開館日、開館時間とも削減、蔵書5000冊から2000冊に縮小。まさに二転三転。

 

区立図書館の新たな指定管理者を募集

背景

中野区は区立図書館8館を一括で2013年から指定管理としている。

していかんりしゃせいど【指定管理者制度
地方公共団体が設置した公共施設を、民間企業や団体を指定して管理・運営を委託する制度。利用者の利便性の向上、地方公共団体の負担の削減などを目的として導入された。
大辞林 第三版

日本図書館協会は指定管理は公立図書館に「なじまない」としている。

【参考】日本図書館協会「公立図書館の指定管理者制度について—2016」(パンフレット)(見解)

にもかかわらず東京都内などでは公立図書館の指定管理は多い。ただし各館個別の指定管理が主流で、中野区のような一括指定管理は珍しい。
中野区立図書館の指定管理者は2013年度から3年間ヴィアックス・紀伊國屋書店共同事業体、2016年度から2020年度まで5年間同じ事業者と再契約。現在の契約は2021年3月に切れる。

 

最新状況

2020年6月9日の子文教で区は2021年度からの区立図書館指定管理者を募集する方針を報告した。本町図書館と東中野図書館の廃止と、地域開放型学校図書館3カ所、新図書館開館を契約に盛り込む方針。従って指定管理対象は全部で12館(区立図書館8、地域開放型学校図書館3、新図書館1)。ちょっと! ただでさえ公立図書館に珍しい一括指定管理なのに、まだ規模を拡大するの?
区によると、今年7月にプロポーザル(提案型)による指定管理者公募、10月図書館条例改正、11月選定、12月議決、その後基本協定締結、2021年4月業務開始予定。期間はまたしても5年間。
中野区立図書館の指定管理は、直営時と比べ情報公開の後退などの問題が指摘されている。直営に戻す検討をする気がないのであれば、指定管理者募集と選定はせいぜい注視しなければならない。参考⬇️

なお、2018年秋に酒井直人中野区長が「憧れていた」と言って佐賀県武雄市立図書館を視察。次回指定管理者にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)、いわゆるツタヤ図書館を検討しているのではないかと区民を震撼させている。参考⬇️

ちなみCCCが公立図書館の指定管理に食い込む際は、下の記事のようにエージェントを通じて首長にアプローチするようだ。

 

区議会やり取り

2020年6月9日の子文教で、傍聴した区民によると地域開放型学校図書館について大意次のようなやり取りがあった。
むとう有子区議(無所属)「今回3300万円歳出抑制ということですが、今後も財政難が続くと思われる中、このまま続けるのかそれとも財政がよくなったら元に戻すのですか」
永田課長「運営の中で検証して一定の期間、1年となるか2年となるか、検証してまいりたい」
むとう「縮小して中途半端な状況で検証しても。全体を延期すれば6900万円浮いたわけですが」
永田「3つの学校は新校舎整備を進めているので計画通り進めます」

むとう区議はまた、指定管理者募集にあたり、利用者懇談会や図書選定委員会(後者は現在やってない)を基本協定に入れるべきと指摘。むとう議員は指定管理者に選定を任せきりにすると図書館の水準が下がるとの懸念を伝え、基本協定について「骨格こそ大事」と話したが、永田課長は図書選定委員会を否定、基本協定はこれまでと基本的に変えないと答えた。

あと今回、永田課長の担当業務が増えていた。4月から学校再編担当が加わり、肩書が「子ども教育部子ども・教育政策課長、教育委員会事務局子ども・ 教育政策課長、教育委員会事務局学校再編・地域連携担当課長」となった。長いね。いま中野区の次の「基本計画」と区有施設整備計画の策定時期ですから、学校と図書館、つまり子ども教育部所管の区有施設のリストラ担当ってことなのかもしれない。

 

資料

2020年6月8日中野区議会子ども文教委員会

「地域開放型学校図書館整備・運用の考え方について」(リンク)

「区立図書館指定管理者候補者の募集について」(リンク)

 

住民監査請求

地域開放型学校図書館の不可解な「見直し案撤回」に関連して、戸辺眞・教育委員会事務局次長(子ども教育部長)が2020年1月31日の教育委員会定例会で事実と異なる発言をした可能性が指摘されていた。

 

そのため区民が戸辺氏に当日分の給与返還を求める住民監査請求を申し立てていたが、4人の中野区監査委員は、例によって発言の妥当性など内容の検討をすることなく、2020年3月11日に門前払いした。

通知書(請求人の名前は私が白塗り)

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図書館配置問題の経過

【2016年4月】田中大輔前区長が「新しい中野をつくる10か年計画(第3次)」(基本計画)発表。その中で本町図書館と東中野図書館を廃止して新図書館に統合、および地域開放型学校図書館を設置する方針が示された。

https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/101500/d022641_d/fil/AllText.pdf

【2016年5月】区が中野区議会に「区立図書館等の整備について」報告。

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/16518142616.pdf

【2018年6月】酒井直人区長初当選、就任。7月、区民との集会で、2図書館廃止問題について新図書館計画との関連も見ながら「地域の中で図書館が果たす役割を検討する」「図書館が地域に果たす役割は大きい」と発言。

https://nakanocitizens.hatenablog.jp/entry/2018/07/20/083627

【2019年8-11月】区が図書館配置についても意見を聞くとしていた「今後の図書館サービスのあり方検討会」で、本町図書館と東中野図書館存続の希望と、地域開放型学校図書館への防犯面などからの消極的意見が相次ぐ。

https://togetter.com/li/1396949

https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/651500/d027586.html

【2020年1-2月】「検討会」の意見を反映し地域開放型学校図書館の機能を縮小した「見直し案」を区議会子ども文教委員会と教育委員会に報告するが、子文教で自民党などから反発を受けわずか1週間で撤回。

https://togetter.com/li/1462689

【2020年3月】区議会で2020の内容年度予算可決。変更が間に合わなかったとして、地域開放型学校図書館分は撤回されたはずの「見直し案」のまま。撤回後(見直し前)の内容を実行するため補正予算を提案するとした。

https://nakanocitizens.hatenablog.jp/entry/2020/03/10/194500

【2020年6月(今回)】区がコロナによる財政逼迫を理由に地域開放型学校図書館のための補正予算提出を見送り。地域開放型学校図書館開始は2020年度から2021年度に延期。同時に、2020年9月議会に本町図書館と東中野図書館を廃止する議案を提出する方針を公表。具体的な図書館配置についてその中で定めるとしていた2021-2015年度中野区「基本計画」は、この時点で影も形もなく区民の意見聴取すら始まってもいなかった。

https://nakanocitizens.hatenablog.jp/entry/2020/06/11/070000

 

 

つづきの記事

 

(中野非公式)