概要
中野区議会野党の自公が2020年2月、中野区シティプロモーション費など広報費や一部文教費などを削る、2020年度予算修正案を区議会に提出した。同3月、審議される。
また、博報堂との中野区シティプロモーション推進支援業務委託の契約書を区から情報開示で入手したので公開する。2020/3/2記
注) 中野区のシティプロモーションは、おおむね、自治体イメージのマーケティングである。
予算修正案
2020年2月28日、中野区議会の野党である自民党と公明党が、2020年度一般予算案の修正案を提出した。
区議会は2020年度予算を審議する第1回定例会の最中で、修正案は3月2日から始まる区議会予算特別委員会分科会で予算原案とともに審査されたのち、予算特別委員会と本会議で採決される。
中野区議会予算特別委員会、4日間の総括質疑が終わりました。その後、自民党・公明党(議長/副議長を除く)15名の議員から、予算修正案が提出されました。3枚目にある事業について、一部又は全てを削るという内容です。3月2日からの各分科会で予算原案とともに修正案について審査することになります。 pic.twitter.com/0BiTyrwI1u
— 浦野さとみ・中野区議会議員(日本共産党) (@urano_satomi) February 28, 2020
修正案は、中野区シティプロモーション事業の博報堂への委託費など2020年度分の1763万円を全額削除するほか、児童館への木製おもちゃや、子育て/教育関係の広報費、ユニバーサルデザインフォント導入など、広報、文教費を中心に削減を要求する内容となっている。
↓自公からの予算修正。障害者や高齢者への合理的配慮であるユニバーサルデザインフォントの導入や、児童館への木製おもちゃ購入などがバッサリと削られてます。#中野区 #中野区議会 https://t.co/2OANqomm0W
— いさ哲郎 JCP中野区議会議員 (@isatetsurou) February 29, 2020
予算特別委員会子ども文教分科会2日目。学校現場にユニバーサルデザインフォントを。児童館に木製おもちゃを。この予算を通したい私たち。山場です。長年与党だった会派の先輩議員から「予算は相対的に考えるもの」という発言がありました。うーん(^◇^;)勉強になる。#中野区議員
— 斉藤ゆり 中野区 立憲民主党(りっけん) (@saitoyurilis) March 3, 2020
シティプロモーションはなくていいけど、児童館の木製おもちゃはあってもいいのではないか。UDフォントは無料だと思うが、ウェブデザイン屋さんとかに払うお金だろうか。中野区の莫大な再開発費や樹木伐採費も削ったらいいのに。
予算修正案とは
現在、区議会では区長が提出した来年度予算案の内容について、総務、建設、厚生、建設、区民、子ども文教とそれぞれの分科会で細かく審議しています。前区政ではこの予算案に対し、共産党から毎年組み替え動議が提出されてきましたが、今回は自民公明両党から修正案が提出されました。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) March 2, 2020
組み替え動議とは、具体的な修正内容を提案した上で、その通りに予算案を作り直し再提出することを区長側に求めるものであり、修正とは、提案会派が個別の事業費の減額、あるいは増額を盛り込んだ新たな修正予算案を提出するもので、それぞれ採決にかけられます。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) March 2, 2020
誤解を招く書き方をしてしまいました。それぞれ採決にかけられるというのは、組み替え動議も予算修正案も議決事項である、という意味です。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) March 2, 2020
「広報アドバイザー」も槍玉に
今回、自民公明両党が問題あり、事業費を削減すべきとした内容はシティプロモーションや広報アドバイザー、UD(ユニバーサルデザイン)フォント導入、児童館への木製おもちゃ配置など。一見するとなぜこれが問題なの?と思われる内容ばかりのようですが、調べてみると確かに???と思われる部分も。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) March 2, 2020
広報アドバイザーというのは、この件ですね⬇️。
こういう風に随分と限定された応募要件が付されてるのは、誰か心当たりがあって公募してる場合がある(これがそうだと言ってるわけじゃないが) | 広報アドバイザーの募集(会計年度任用職員) | 中野区公式ホームページ https://t.co/nKCoR9lzKd pic.twitter.com/fVVWZU6vdF
— 中野非公式 (@nakanocitizens) February 2, 2020
あと、木製おもちゃにはこんな事情が⬇️
今回のは、森林環境譲与税が国から配分されるため、その使い道として、山林が無い中野区では木材利用促進以外の選択肢が無く無理矢理木材利用するものです。公園ベンチ、校舎等への木材利用、とりあえず積立、などの選択肢も上がっていましたが木のおもちゃとなりました。https://t.co/KOUACxXtTh pic.twitter.com/oUhMWFVYjj
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) March 20, 2020
可否の見通し
中野区議会は定数42。
与党15(立憲会派9=無所属1を含む=、共産6)、野党17(自民9、公明8)議長が自民のため議決参加は通常16。与野党とも過半数に足らず、議案の可否は少数会派と無所属にかかっている。詳細は下記記事参照。
そのためどうやら多数派工作が行われている模様だ。
普段は無所属議員を蚊帳の外に置いておきながら、都合のよい時だけ「賛成してくださいお願いします」って言われてもね。そうじゃない役人も区議もいるけれど。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) February 27, 2020
特に多様性が大事とか一人一人に寄り添う区政の実現と仰っている方々は、是非無所属議員の声や要望にもお耳を傾けていただければと。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) February 27, 2020
自公の意図?
酒井直人区長は、田中大輔前区長の「グローバル都市戦略」推進からの方針転換は「私が決めた」と言っている。しかし中野区のシティプロモーション推進委託公募は田中前区長在任中であったことを下記記事⬇️で伝えた。プロポーザル方式による募集告知は2018年4月18日。区担当者によるとプレゼンは6月。酒井区長就任は6月15日。博報堂との契約は6月26日。
田中前区長の与党だった自公は、中野区が2018年8月30日に区議会建設委員会でグローバル都市戦略からシティプロモーションへの方針転換を報告して以来、中野区シティプロモーションを批判している。今回2020年度のシティプロモーション予算全額削減を提案した。中野区シティプロモーション自体は田中案件なのに、どういうことだろうか。
【追記】
3/6修正案取り下げ
予算特別委員会全体会、自民党・公明党から提出されていた修正案は、「分科会での質疑を鑑みて」という理由で、提案会派から取り下げの申し出があり、予算原案のみの採決となりました。一般会計は、無所属2名(むとう区議・石坂区議)のみの反対となり、賛成多数で可決されました。 https://t.co/tnfWyEB3XD
— 浦野さとみ・中野区議会議員(日本共産党) (@urano_satomi) March 6, 2020
結局2020年度300万円に減額
中野区シティプロモーションの予算は、新型コロナウイルス感染拡大による財政逼迫を理由に、結局2020年度約1700万円の大部分を削られた。残りは約300万円。なお自公がそれ以外に削減要求し取り下げていた児童館木製おもちゃ、UDフォント、便利帳、教育大綱パンフレットなども削減された。6月8日、区議会に報告された。
中野区で2020年2-3月に自公が予算修正を提案した後撤回した減額項目、今回の新型コロナによる財政逼迫で結局多くが削減された。児童館の木製おもちゃ、UDフォント、便利帳、教育大綱パンフ、シティプロモーション費の大部分など。6/8区議会に報告https://t.co/mWLfkC6aX6
— 中野非公式通信 (@nakanocitizens) June 16, 2020
(追記ここまで)
博報堂との契約書
中野区に情報開示請求していた、博報堂との2018年度(初年度)と2019年度当初の中野区シティプロモーション推進支援業務委託契約書が開示されたので公開する。
2018年度
(1) 2018年6月26日 (2160万円)
・最初の契約書。内容は中野区シティプロモーションの具体的な内容や実施方法など事業計画の作成や、PRイベント、ホームページやSNS、ロゴやキャッチフレーズ、コピーなどの作成。
(2) 2018年9月27日 (契約額変わらず)
・納期を一部変更。
(3) 2018年12月11日 (879万1200円追加)
・「キャラクターによるシティプロモーション業務委託」。
中野区シティプロモーションに対する批判は、金額の大きさもさることながら、キャンペーンを担う球体関節人形「ナカノさん」のデザインに関するものが多い。
プロポーザル方式公募の博報堂の提案書には「キャラ(ロゴ)」の例として「くまモン」が記載されているが、この契約で、キャラクターは球体関節人形と決まった。
なお、下のPR記事によると、中野区と博報堂は、ワークショップ(区民を公募せず博報堂が業者と大学関係だけ集めて開催した)を通じてナカノさんが作られたようなことを言っている⬇️。
しかし、このワークショップが開かれたのは2018年10月-2019年3月(第1回2018/10/23-24中野区らしさを整理; 第2回12/19-20中野区でやってみたいことを考える; 第3回2019/1/22-23中野区でやってみたいことを実現する; 第4回3/18発表会)。
球体関節人形を使うとする契約は、はやばやと2018年12月11日に結ばれている。同年6月のプロポーザルプレゼンと選定から、この間、何があって「くまモンを参考にしたキャラ」が人形に変わったのだろう。ナカノさんは唐突に2019年2月1日発表された。唐突に発表したのは話題作りとかそういう感じの戦略だったらしい。
2019年度
(4) 2019年4月1日 (7447万円)
中野区シティプロモーションは2019年度予算の「主な取り組み」の一つとなっており、大幅に増額された。2019年度予算は区議会で全会一致で可決された。
中野区の2019年度予算案が本日可決・成立。国民健康保険や介護保険会計については賛否が分かれたものの、一般会計予算と用地特別会計は、自民・公明・立憲民主・共産・都民ファーストの会・無所属の全会派が賛成。予算案が全会一致で可決されるのは10年以上の議会活動の中で初めての経験。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) March 5, 2019
区議会議事録によると、2019年度はこの後もう1通契約書があるようだ。
自公が予算全額削減を要求している2020年度は、3年間のプロジェクトの最終年度とされている。
経緯など
経緯などは中野区シティプロモーションに関するこれまでの記事をご参照ください。
2018年10月中野区シティプロモーション始動。
2020年度減額予定。
中野区シティプロモーションは田中前区長案件。
つづきの記事
これまでの記事⬇️
(2020年2月27日、東京都中野区)
写真右上の「ナカノさん」って…
— falter.Frunus mume.j (@mume_j) March 1, 2020
のんきな #中野区
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