中野区シェアサイクルをめぐる幾つかの問題(2020年7月)

  2020/7/24記

 

問題

 税金投入

2020年7月20日、東京都中野区は「区内南北交通の課題解消と公共交通の補完」などを目的に「中野区シェアサイクル」を始めた。株式会社ドコモ・バイクシェア委託では都内で11区め、今年度から3年間の予定。

 

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2020/7/21中野区立すみれ公園

 

2020年度の中野区シェアサイクル予算は4300万円弱。うち半分の2100万円余りが東京都の補助金という。(2020/3/17中野区議会交通対策調査特別委員会での区の説明)

 

中野区は、新型コロナウイルス感染拡大を受けた財政逼迫を理由に、2020年度予算の歳出抑制をしている。2020年6月に区議会に提出された歳出抑制の資料。⬇️

https://kugikai-nakano.jp/shiryou/20615173936.pdf

約120億円の歳出抑制のうち、100億円以上が文教関係である。桃園第二小学校と本郷小学校の建替え延期などが含まれる。
そんな厳しい財政事情の時に、貸自転車屋に税金を支出するアンバランス。

 

貸自転車用の電動アシスト付き自転車など、機材は全て中野区が買って、委託先のドコモ・バイクシェアに「所有権も移転」するそうだ。

初期投資、実証実験の機材は全て区が用意しますけれども、全て事業者のほうに所有権も移転します。(安田都市基盤部交通政策課長、2020/3/17中野区議会交通対策調査特別委員会)

 

おまけに貸自転車の置き場所は公園など公有地をタダで占有利用させる。至れり尽くせり。だが税金でおんぶに抱っこにも関わらず、料金は結構高い。

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シェアサイクルは、税金投入がなければビジネスとして成り立たないのか、もしや。

 

ウーバーイーツ

中野区シェアサイクル、誰が使うのかと思ってたら、ウーバーイーツ配達員や、住宅事情により自転車を持てない子育て世代のニーズがあるようだ。詳細は下記まとめ参照。⬇️

 

配達員のブログを読むと、ウーバーイーツは配達員登録時にドコモ・バイクシェア利用をオプションで提案してくるらしい。

中野区シェアサイクルは、ドコモ・バイクシェアに税金で自転車を買ってやったわけだが、同時に、ウーバーに税金でインフラを提供してやったことにもなる。

 

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2020/4/16ウーバーイーツ配達員と中野サンプラザ

 

公園占有

シェアリングエコノミーと喧伝される商売は、少なくとも日本においては、本来の意味の、参加者の財の利用をシェアしその結果の富が参加者に分配されるよりは、むしろ、プラットフォーマーや周辺業者が参加者の富をシェアする形になりがち。さらに公共インフラに寄生しがちだ。

 

公園も公共インフラだが、中野区は1人あたり公園面積が、相変わらず東京23区中22位である。データはここ。⬇️

https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/content/000045670.pdf

その狭い公園に雑多なものを詰め込むのは、ちょっとわけが分からない。2018年区長選と2019年区議選の争点になった中野区立平和の森公園では、300メートル陸上トラックだのバーベキュー場だの地元住民の反対する迷惑施設が結局作られた。


中野区シェアサイクルでは、中野四季の森公園、すみれ公園、青桐公園、本四公園、栄町公園、みなみの広場の一部が貸自転車屋に占有されてしまった。

狭くなるだけではなく、貸自転車が乱雑に置かれ公園の美観が損なわれる。公園内にゴミ箱がないため公園利用者や通行人が貸自転車のカゴの中に捨てたゴミを、自転車を借りた人は公園内に投げ捨てるだろう。

多数の貸自転車が公然と乗り入れられるため、幼児など公園利用者と接触事故を起こす可能性もある。

 

公園の一部を私企業の貸自転車置場にしていいのなら、いっそ、公園の一部に近所や一般の人が使える自転車置場を作った方が、「公共交通の補完」政策として整合性が取れる気がする、むしろ。

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2020/7/18中野区立すみれ公園

 

中野区内の他の公園もこんなありさま。

公園でない場所も乱雑。

 

広告

中野区がドコモに新しく買ってやった赤い電動アシスト付き自転車には広告がついてない。

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2020/7/18中野区立すみれ公園

しかし、他の場所からきたドコモ貸自転車は後輪付近に広告が付いている。ドコモ自社広告だけならまだしも、MIZUHO やNOMURA 、ほけんの窓口といった、明らかな有料広告が付いている。

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2020/7/24中野区立すみれ公園


広告を掲示する空間は、都会では高い値段で取引されている。中野区シェアサイクルは、公共の公園で私企業にただで広告を掲示させてやっていることにもなっている。

 

さらにいうと、すみれ公園には、はっきりと「広告」禁止が掲示されている。ドコモ貸自転車の広告は中野区立公園条例(第3条第4号「広告宣伝をすること」の禁止)に違反の可能性。

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2020/7/24中野区立すみれ公園

 

広告屋が赤チャリにつられ公園内に捨て看板を放置。

  

データ収集

税金で私企業に貸自転車をただ買ってやることはできない。名目は、自治体間の広域連携制度を活用したシェアサイクルの導入実験である。東京都(公益財団法人東京都環境公社)の1/2補助事業。実験の内容は、貸自転車に搭載されたGPSのデータ収集とビッグデータ解析ということだ。

自治体間の広域連携による実証実験は、まさにそこが肝でございまして、ICT技術を活用した自転車シェアリングの連携システムで、こういったことから、ICTあるいはGPSつきの自転車でございますので、さらに、これらをデータとして管理するビッグデータ、そういったものを活用しながら、都心部における広域連携をいかに進めていくかという点で、区としては、公共交通の課題でこういったデータを使うことで、どういった効果があるかということも検証できるかと思います。(安田課長、2020/3/17中野区議会交通対策調査特別委員会)

 

中野区がホームページのお知らせなどで、実験であることとその内容を説明しないのは不誠実だと思う。

 

おまけ1: 中野区シェアサイクルはどこ案件?

中野区シェアサイクルは、自民党(中野区議会では野党)案件ではないのかもしれない。区議会議事録を検索すると、自民党議員が主に追及している。
とはいえ区議会自民党の区政批判は口だけなら信用できない。なぜなら本気であれば彼等は区の方針を変えさせることができるのだから。最近では3年間の予定だった中野区シティプロモーションの博報堂委託を2年で打ち切らせた。

それから折角の地域開放型学校図書館見直しをわずか1週間で撤回させ、田中前区長の案に戻させた。

区議会野党の自民党にどうしてそんな力があるのか知らないが、もしかしたら、こういう⬇️感じの中野区職員との力関係とかかわりがあるのかもしれない。

 

荒木ちはる都議がブログで「昨年予算要望で東京商工会議所中野支部活性化委員会の皆さんより、都民ファーストの会中野区議団で要望を受け」と書いてるから、都ファ案件なのかもしれない。都ファは都議会与党なので、都の施策を推進するのは理にかなっている。

公明党(区議会では野党)区議も「中野区議会定例会で私が一般質問で要望し」とツイートしてるから、公明党案件でもあるのかもしれない。

というか公明党も都議会与党だからか。 

 

蛇足ながら、貸自転車があれば便利なのは、まあ当然で、自転車が環境に優しいのも、別に議論の要はないだろう。そんな当たり前の側面を称賛して事足れりとしている一部区議会議員に関しては、今さら腹は立たないが、ずいぶん気楽なお仕事ねと私は思っている。

 

と思ったら、お気楽どころか立憲も推進派だった。

 

聞いてみた。

 

つまり都民ファースト(区議会野党)、公明党(区議会野党)、立憲民主党(区議会与党)が中野区シェアサイクル推進派というわけだ。

 

おまけ2: 区長が公園で走行禁止の自転車乗り宣伝

11月になって気づいたのだが「なかのEYE」ウェブサイトに区の「お詫び」が載っていた。

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中野区公式フェイスブックを確認したら、酒井区長が中野区シェアサイクルの宣伝のため、中野区立中野四季の森公園でドコモ赤チャリを乗り回していた。

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区HPの区長動静によると、中野区シェアサイクル初日の2020年7月20日だ。

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四季の森公園は自転車走行禁止である。区が明文で定めているルールを区長自ら破っていいのだろうか。というか、そもそも駐輪も禁止なのに、なぜドコモは貸自転車を置いていいのかっていう。

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結果、「自転車走行禁止」の注意書き増える

7月26日、すみれ公園のサイクルポートに「公園内においては自転車の走行は禁止」という注意書きが増えていた。この掲示が、なかのEYEの「お詫び」に記された対応と思われる。

 

つづきの記事

 

(中野非公式通信)

 

中野区シェアサイクル業務委託の入札情報。

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中野区シェアサイクルの記事

  

 

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