小中学生のオリパラ観戦、中野区教委は定例会で中止決定することを避け、都教委の中止見通しを関係各所に告知、その後発表した(2021年7月)

コロナ禍で懸念が高まっていた小中学生のオリパラ観戦について、中野区教育委員会は定例会で中止を議論したり決定したりすることを避けた。定例会直後、都教委が中止する見通しであることを関係各方面に告知し、その後中止をホームページで公表した。2021/7/9記

中野区は学校の夏休み明け態勢も教委定例会で詳細を報告せずしたがって議論せず定例会後に発表した。オリパラ観戦中止と同パターン。8/29追記

2021/7/6共産党が中野区に中止要請 

7月6日の共産党区議団による中野区長と教育長に対する観戦中止申し入れのあとの浦野議員(共産)のこのツイートは、東京都から5日に各自治体に参加意向の照会があり、これを受け中野区は各校長の意見を聞いて近く方針決定する、という区側の発言を伝えている。私はこれを読んで、現場の校長先生は児童生徒の安全重視だから、各校長に聞くってことは中止だな、と思った。

下のNHKの記事には「都の教育委員会は、オリンピック・パラリンピックの競技会場での児童・生徒の観戦について、間隔を確保するため座席数を当初の計画からおよそ半分に変更し5日、学校ごとの参加人数の割り当てを示しました。これに伴って、区市町村教育委員会に対し、観戦を希望する学校や人数のほか、中止する学校があるかを把握する調査を始めました」とある。

7/7都の過半数自治体が中止

都教委の決定を待たず中止決定する自治体が相次ぎ、7日までに都内62区市町村の半数を超えた。

7月7日午後、東京都などに4度目の緊急事態宣言が発令される見通しが報道された。

7/8区議がフライング告知

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いながき議員(無所属)は、区の情報や情勢などを区の発表がなくてもツイートしてお知らせしてくれる数少ない中野区議のひとりだ。このスクリーンショットの8日午後4時ごろのツイートはフライングだったようで、その後削除された。

7月8日夜、国が12日からの緊急事態宣言を発表した。下は、その段階でまだ五輪観戦を中止していなかった都自治体。

7/9教委定例会では議論も決定もせず

前日いながき区議のフライングツイートがあったので、7月9日午前10時からの中野区教育委員会定例会で中止が決定されると思っていたが、そうではなかった。

この教委定例会では、中野区の教委事務局が、小中学生のオリパラ学校連携観戦、移動教室、海での体験教室、図書館での事業などについて「中止決定を含め必要な対応をする」、結果は区ホームページで報告する、と口頭で報告しただけだった。

中野区教育委員はたった5人しかいないのに医師と歯科医の両方が含まれている。しかしこの区職員の口頭報告について発言した委員は誰ひとりとしていなかった。

この日の定例会は、村杉委員(医師)が学校健診について発言、岡本委員(『教職研修』編集長)は、中1の子のカバンが重く「子どもの健康が最優先ではないか」と、また田中委員(歯科医)は、子どもの権利擁護条例は「子どもたちの健康的課題も検討してほしい」と述べた。

しかしいずれもオリパラ動員に関しては発言しなかった。何なら中野区教育委員は、オリパラ動員に関しこれまで定例会で、子どもたちの安全や健康への懸念を含め、誰もひとことたりとも言及したことはない。

入野教育長は6月1日の中野区議会本会議で、共産党の長沢議員の質問に対し次のように答弁していた。

東京オリンピックパラリンピック競技大会において、世界のトップアスリートの競技を直接観戦すること、そういう体験については、子どもたちにとってかけがえのないレガシー になると考えております。現時点で東京都教育委員会において、子どもたちの観戦の規模や実施の有無について、正式な決定はなされておりません。新型コロナウイルス感染症熱中症等のリスクの下で、子どもたちの観戦が安全に実施できるかについては、競技会場を視察するなど、検討しているところでございます。

今後、東京都教育委員会において、学校連携観戦が正式に実施されるとなった場合は、様々な状況を総合的に判断し、区立小・中学校における実施の可否について各学校と協議し、教育委員会として決定してまいります。

(入野中野区教育長、2021/6/1中野区議会本会議)

都が正式に実施決定したら区教委も実施の可否を各学校と協議して決定する、という答弁である。

入野教育長は、7月9日の教育委員会定例会の報告では他の委員と同様にこの件に関し一切発言しなかった。

定例会直後、中止の見通しを告知

教委定例会終了後間もなく区議が観戦中止のお知らせツイートをした。

7月9日昼過ぎに小宮山議員(無所属)がツイートしたこの告知には、オリパラ観戦を中野区が中止したとは書いていない。

緊急事態宣言が改めて発出され、首都圏での観戦が無観客になることが発表されています。東京都教育委員会からの本事業に関する正式な通知はまだ届いておりませんが、中野区立小・中学校の「学校連携観戦」は中止になります。

緊急事態宣言で五輪が無観客となり、都教委からの正式な中止連絡はまだだが中野区のオリパラ観戦は中止になる見通しである、ということを関係各所に伝達したに過ぎない。

中野区教委は中止を自らの判断で決定することを避けたようだ。区内の子どもの健康と安全について区教委が自ら判断しないなら、委員は一体何のためにいるのか。特に医師と歯科医。

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午後、HPで中止を発表

中野区は7月9日午後、中止の告知を区ホームページに掲載した。

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東京オリンピックパラリンピック競技大会における学校連携観戦の中止について
中野区では、東京オリンピックパラリンピック競技大会における学校連携観戦につきまして、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、学校連携観戦を実施した場合の対応等について検討を重ねてまいりました。
しかし、公共交通機関での移動や熱中症のリスク等について検討した結果、子どもたちの安全を第一に考え、中野区立小・中学校は「学校連携観戦」への参加を中止する決定をいたしました。
中野区教育委員会及び小・中学校は、引き続き、オリンピック・パラリンピック教育における学習が有意義なものとなるように努めてまいります。

2021年7月9日 中野区教育委員会

「公共交通機関での移動や熱中症のリスク等について検討した結果、子どもたちの安全を第一に考え」と書いてあるが、中野区教委がそういうことを少なくともおもての会議において一切検討していないことは、傍聴の区民らが見て知っている。いい加減なことを言ってはいけない

都の中止決定を受けた発表?

中野区のこの発表は、タイミング的に都の中止決定を受けたものと思われる。都の中止決定を伝える下の朝日新聞の記事は9日14時46分。

中野区が中止のお知らせをホームページに掲載したのはそのすぐ後の15時だ。

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都の通知は同日夜、浦野区議がツイッターで公表した。

通知を読むと都の中止決定は五輪観戦だけで、パラについては後日決定なのに対し、中野区はオリパラとも中止なので、都より踏み込んではいる。

「非常事態宣言で五輪が無観客になったので→オリパラ観戦中止」という中野区教委のロジックは矢印部分が繋がっていない。だからホームページの一般向けのお知らせでは中止の理由を「子どもたちの安全を第一に考え」に変えてきたのかもしれない。だがその理由だったら都の決定を待たず中止できたはずだ。

中野区は「自ら中止した自治体」にはギリ入れてもらえたようだ。

パブリックビューイング聖火リレーも都に追随

オリパラパブリックビューイングについて、6月11日のNHKの調査で「実施する」と回答したのは千代田区、港区、中野区、大田区、北区の5区だった。

このあと都がパブリックビューイング中止に舵を切ったことから、6月23日のNHKの調査には中野区は他のほとんどの区とともに「中止する」と回答した。

中野区は、聖火リレーについても長沢議員の質問に対し実施を言明していた。

現時点で、区として中止を求める考えはございません。

(酒井区長、2021/6/1中野区議会本会議)

7月6日に都が公道での聖火リレー中止を決め、同日、中野区もホームページで中止をお知らせ。

それまで中野区聖火リレーボランティア募集で「沿道周辺の観衆・雑踏」が前提になっているなど、正気と思えなかった。

いくら特別区といえ、住民の健康と安全に関わることを、自分の頭で考えてはいけないのだろうか。中野区は魂を都庁に置き忘れているのではないか。

追記: 8/27学校夏休み明け態勢も教委で議論せず決定

教委定例会には口頭報告

2021年8月27日、中野区教育委員会は8月6日以来3週間ぶりの定例会を開いたが、7月9日に五輪観戦とともに中止していたパラリンピック観戦に関しては、報告も委員発言もなかった。

この日、新型コロナウイルス感染症が拡大していることから区内保護者の関心を集めていた夏休み後の態勢について、教委事務局(中野区職員)の齊藤指導室長が口頭で簡単に教委に報告した。その内容は次の通りだ。

・夏休みは延長せず9月1日から学校スタートする
・各学校の状況を見て安全対策を工夫しながら学校活動を行う
・移動教室、修学旅行は延期

これに対し、医師と歯科医師を含む教育委員からいずれも異論は出なかった。

田中委員(歯科医): 学びを止めないこと大事。9/1予定通りスタートは子どもたちにとってもいい。学校に集まって一緒に学ぶことでいろんな学びがある
伊藤委員(大学教授): 意見同じ。ハイブリッド授業など準備必要
岡本委員(『教職研修』編集長): 難しい問題

村杉委員(医師)は「9月1日学校スタート」の報告の前、前日の8月26日に日本小児科学会が出した「それぞれの地域の感染状況に合わせて、やむを得ない場合には休校や学級閉鎖や分散登校」とする提言↓を紹介した。
現在の新型コロナウイルス感染流行下での学校活動について|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
しかし、中野区の9月1日学校スタート報告について意見は言わなかった。

定例会後に詳細を発表

中野区は教委定例会で報告しなかった夏休み明け後の詳細を、定例会後に発表した。

このブログに上記したオリパラ観戦中止時と同様、教委定例会では方針を報告せず議論せず定例会後に発表するパターンだった。なぜ。

 

(中野非公式通信)