中野区立総合体育館
(仮称) 中野区立総合体育館。中野区新井3丁目の平和の森公園「未開園区域」に建設中。2020年3月竣工予定。東京五輪・パラリンピック卓球公式練習場。
建設地から六価クロム
2019/1/24中野区は区議会厚生委員会で、(仮称) 中野区立総合体育館の工事契約変更案を報告しました。(厚生委資料 議事録)
建設地から出た多量のれんがやがれき、基準値を超える六価クロム、および湧き続ける地下水の処理のため、
(1) 竣工を従来の2019/12/27から2020/3/12に遅らせる。
(2) 工事の契約額を91億円から4億円増額し95億円に。
ろっかクロム【六価クロム】
酸化数が六のクロムを含む化合物・イオン。三酸化クロム・クロム酸塩など。酸化力・毒性が強い。皮膚に触れると潰瘍を起こし、体内に入れば肝臓障害・肺癌などを起こす。鍍金工場、クロム化合物製造工場などの廃液による水質汚染が社会問題となった。
大辞林 第三版
3/5に区は変更議案を議会に提出しました。3/15可決。
差額の4億円は土地を所有する東京都が払うようです。
平和の森公園に建設中の(仮称)中野区立総合体育館。工事中に土壌汚染や湧水や大量のガラクタが発見され、それらへの対応で工事期間が延びるということで、91億円の建設費が95億円に増額。約4億円の増額分は東京都が負担するとのこと。今後の予定では2020年3月竣工、4月オープン。
— 中野区議会議員 いながきじゅん子 (@i_junko) March 7, 2019
④(仮称)中野区立総合体育館整備に伴う地中障害物撤去等に係る費用の負担について。建設予定地地下から毒物や大量の湧水が出た件は既に報告されましたが、この費用負担については東京都下水道局に瑕疵担保責任があるとことで全額負担してくれることになりました。
— いさ哲郎 JCP中野区議会議員 (@isatetsurou) March 8, 2019
1/24厚生委資料によると六価クロムは12月に処理済みという。
2018年6月の土質試験において、六価クロムの含有量が基準値以上であることが判明した。その後、同年12月に掘削が完了している。
-- 中野区
議事録を見ると六価クロムがどこから来たか区も東京都も分からないと言っています。
東京都も、区も、当初想定していなかったということもございまして、由来については把握してございません。
-- 平田祐子・中野区健康福祉部副参事 (文化・スポーツ担当)
情報公開文書の中の六価クロム
基準値を超える六価クロムが見つかった場所は体育館建設現場の「西工区」。同じ資料に載っている下図の緑色に塗られた部分で、西隣は平和の森公園の草地広場 (現在ここも工事中) です。
中野区がこれまで別件で情報開示した文書に、今回公表された六価クロムに関係する資料が幾つか含まれていました。
まず下の図は、中野区が公開した体育館工事の残土処理業者リストなどの文書の中にあった、基準値を超える六価クロムを含む土を処理した範囲の平面図と断面図です。平面図で赤で囲われた範囲は、厚生委員会に報告した図の緑の部分と一致しているようです。
平面図と断面図を見ると、基準値を超える六価クロムを含む土が見つかったのは、以前の東京都下水道施設の工事によって土がもともと地表から10メートルほどえぐれていた場所の下です。つまり汚染土は、地表より10メートル以上深いところにありました。
ボーリング柱状図
別の中野区公開文書に、体育館工事地質調査のボーリング柱状図があります。日本設計が作成した平和の森公園再整備実施設計報告書 (1) のP329です。
柱状図によると、地下11メートル付近まで、柔らかい関東ローム層の下に柔らかい粘土層。その下は硬い粘土質砂岩。
平和の森公園は1983年まで中野刑務所だったところです。地中から出てきて工事遅れの一因となったれんがやがれきは、国が土地を東京都に売却する際に解体された刑務所の残骸です。ボーリング柱状図で見ても、地表近くの土にれんがやがれきが多く含まれています。
この六価クロムがどこから来たかは不明ということです。ですがもし刑務所の建物の土台を安定させるため、柔らかい粘土質の底に六価クロム鉱さいを埋めていた (昔はそういうことが行われていたらしい) のだとしたら、中野刑務所の建物があった場所 (平和の森公園とその周辺) では、他でももしかすると10メートル以上深く掘れば、基準値を上回る六価クロムを含む土が見つかる可能性があるのでしょうか。
平和の森公園の未開園部分で見つかった六価クロム汚染土について調査依頼がありました。土は検査しないと廃棄できない。土処理事業者の検査により汚染が発覚。土の量が大量なので、成友興業・アイテック・サンビック・JEF等、複数の事業者に廃棄を依頼。汚染度の処理は事業者がおこなった。とのこと。
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) March 22, 2019
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ところで、平和の森公園工事の公開文書になぜ体育館工事のボーリング調査が入っていたのか不思議に思ってたんですが、よく読むと平和の森公園第1工区 (2018年秋竣工) で多目的広場 (少年野球などに使う) を照らす投光器を設置するためのボーリング調査を独自に行わず、体育館工事の調査を流用したみたいです。
第1工区多目的広場の投光器は、この背の高い照明です (2019/3/14撮影)。
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汚染土と場所が近い草地広場の安全性に区民から懸念の声があり、調べてくれた小宮山たかし区議 (無所属)によると、2月に草地広場で調査がされ、六価クロムなど有害物質は基準値以下ということでした。
中野区立平和の森公園の未開園部分(体育館予定地)から六価クロムが見つかった件について。草地広場も心配との声があり、区に聞いてみました。草地広場の土質検査を2月の試掘時に実施、特に問題はなかったそうです。 pic.twitter.com/uGZBZeJJim
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) March 11, 2019
ご希望のようなので区の書類を確認してきました。草地広場の5カ所で土を採取。六価クロムやカドミウムなど9種の物質に関して検査して、基準値以上のものは検出されなかったという報告書類や写真を目視確認しました。公開を前提とした資料そのものの提供は、情報公開請求を経てほしいとのことでした。
— 中野区議会議員 小宮山たかし (@komiyamatakashi) March 13, 2019
客土とパーライト
平和の森公園再整備実施設計報告書 (1) のp24に草地広場の「既存仕様」として「客土」「パーライト」の混合である旨の記載があります。
きゃくど【客土】
土壌を改良するために、性質の違う土を他の場所から大量に運び入れ、在来の土壌に混入すること。また、その土。かくど。
大辞林 第三版
パーライト〖pearlite; perlite〗
③真珠岩・黒曜石などを粉砕し、摂氏1000度前後で焼成し、多孔質としたもの。軽量で断熱・吸音効果に優れ、建築骨材として使用される。
大辞林 第三版
地下に東京都下水道施設ができたあと、他から持ってきた土とパーライトとを混ぜて敷いたようです。地下に下水道施設があるため草地広場は荷重制限が厳しく、軽いパーライトを混ぜています。
元々の掘り出した土の汚染が調査されたかは、昔のことで分からないかもしれません。少なくとも現在の草地広場は基準値以下とのツイートでした。
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(参考) 建設中の体育館の写真など
(参考) 体育館が建設されている平和の森公園について
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2019/3/15 ( r )