大正時代の図書館女性専用室(中野区立哲学堂公園の古建築物内部公開)(2020年10月)

概要

中野区立哲学堂公園の古建築物内部公開に行った。井上円了が作った大正時代の図書館女性専用室を見た。2020/10/22記

 

哲学堂公園

中野区立哲学堂公園(東京都中野区松が丘)は、哲学をテーマにした公園。もともとは哲学館(東洋大学の前身)創設者の井上円了(1858-1919)が、1904(明治37)年に哲学館の移転先として作った。移転は実現しなかった。

1944年に東京都に移管、1975年に中野区立公園になった。2020年3月、国指定名勝(国指定文化財の一種)に。

東洋大学哲学堂公園のページ。↓
https://www.toyo.ac.jp/about/founder/tetsugakudou/

哲学堂公園指定管理者のウェブサイト。↓https://www.tetsugakudo.jp/

 

古建築物内部公開

哲学堂公園では春秋などに古建築物の中を見学できるイベントが開かれる。

今年(2020年)は私たちは10月18日に行った。

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絶対城(図書館)

古建築物のひとつ、絶対城(図書館)。1915(大正4)年築。

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絶対城前の碑文の説明。

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入口。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、入場人数に制限が。

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1階書棚。かつての雰囲気を味わうために本を入れてある。配架されているのは由来のものではなく普通の本。手に取って読むことができる。

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もともとの蔵書は現在、東洋大学図書館にあるという説明。

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絶対城保存修理の説明。

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2階からみた1階からの吹き抜け部分。

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畳敷きの2階閲覧スペース。

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婦人閲覧室

2階閲覧スペースの端に設けられた婦人閲覧室。

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3畳敷き。数年前の古建築物内部公開の時は部屋の中に入れたが、この日は施錠されていた。

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大正期に女性が自由に勉強できる場が少ない中、井上円了が女性が利用できる勉学の場として女性専用の部屋を作ったとみられるとの説明。

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井上円了と女性の教育

下記資料によると、井上円了は民間教育構想を抱いて教員養成に重点を置き、その構想には「欠如している女子教育にも力を入れる」ことが含まれていたという。
井上円了研究センター『井上円了の教育理念』東洋大学, 1987年初版, 2020年改訂第23版.

https://www.toyo.ac.jp/-/media/Images/Toyo/research/labo-center/Western-Translation-update-2019/publication/_23.ashx?la=Global&hash=BDD8636DC8B6C3FA8E5DF1BB4BF01F9D25CF4024

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その他の古建築物

絶対城のほか宇宙館(1913=大正2=年築)や四聖堂(1904=明治37=年築)などの内部も公開された。

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哲学堂公園というとすぐ思い浮かぶ、この赤い六賢台(1909=明治42=年築)は、コロナの影響で今回は内部公開されなかった。数年前に入ったが内部見学は急階段を上がってまた下りる感じだ。

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哲学堂公園の古建築物については下記参照。↓

さらに詳しくは下記参照。↓

中野区が2020年に作成した哲学堂公園を紹介する動画。↓

 

哲学堂公園再整備見直しの現状

哲学堂公園については、田中大輔前区長が観光拠点整備整備計画を打ち出していた。
https://kugikai-nakano.jp/shiryou/171011155752.pdf

児童遊園を縮小し多くの樹木を伐採して学習展示施設を作る、批判の強かったこの計画は、2018年6月に就任した酒井直人区長が一旦棚上げして見直しを進めているところだ。酒井区長は2018年10月、哲学堂公園について2019年度に新たな整備基本計画案策定と区民説明会開催、2020年度に基本設計、2021年度以降に実施設計、着工との予定を発表した。
https://kugikai-nakano.jp/shiryou/18101211564.pdf

哲学堂公園再整備基本計画再検討業務委託は2019年9月3日、希望制指名競争入札が行われパシコン技術管理株式会社が225万円で落札した(納期2020年3月末)。しかし2020年10月現在、まだ新たな整備基本計画は発表されておらず区民説明会も行われていない。再検討は遅れている模様。

追記1: 国名勝指定されたから検討やり直すみたい

工事の再検討が遅れているのは新型コロナウイルスが理由かと思っていたが、国名勝指定されたから検討をやり直すようだ。酒井区長が議会で答弁した。

哲学堂公園保存活用計画の策定についてでございます。哲学堂公園が令和2年3月に国の名勝に指定されたことに伴って、その文化財的価値を後世へ継承し、適切に保存、復原、活用することを目的として今後哲学堂公園保存活用計画を策定する予定でございます。計画を策定するに当たって、現地調査や現況把握、資料の再収集、整備や活用の在り方など広範囲で専門的な検討を要することから、学識経験者 、行政関係者で構成された検討委員会を発足する予定でございますが、区民の参加手法についても併せて検討してまいりたいと考えております。

(酒井区長の答弁。2020/9/10中野区議会本会議。11/6議事録公開) 

追記2: 2021年度哲学堂公園の予算ない

2021/2/18中野区議会本会議一般質問で酒井区長は、2021年度予算に哲学堂保存活用のための予算が含まれないことについて「財政難で哲学堂公園の予算がない」と答弁した。

  

(中野非公式通信)